住宅は多くの家庭にとって最大の資産の一つです。近年、この自宅資産を活用して資金を確保する方法として、「リースバック」と「リバースモーゲージ」が注目されています。どちらも自宅を活用して資金を得る仕組みですが、その構造やリスクは大きく異なります。
高齢期の生活資金の確保や住宅ローンの整理などを考える際には、両者の違いを理解したうえで判断することが重要です。本稿では、リースバックとリバースモーゲージの仕組みと特徴を整理します。
リースバックの仕組み
リースバックは、自宅を不動産会社などに売却したうえで、その住宅を賃貸として借りて住み続ける仕組みです。
基本的な流れは次のようになります。
- 自宅を不動産会社に売却する
- 売却代金を受け取る
- 同じ住宅を賃貸契約で借りる
- 家賃を支払いながら住み続ける
売却によってまとまった資金を得られる点が特徴です。住宅ローンの完済や借入金の整理、老後資金の確保などの目的で利用されるケースがあります。
ただし、自宅の所有権は売却時点で失われます。その後は賃貸住宅として居住することになるため、契約内容によっては将来住み続けられなくなる可能性もあります。
リバースモーゲージの仕組み
リバースモーゲージは、自宅を担保にして資金を借り入れる仕組みです。
一般的には次のような仕組みです。
- 自宅を担保として金融機関から融資を受ける
- 利息のみ支払う、または元利の支払いを据え置く
- 契約者の死亡後などに住宅を売却して返済する
最大の特徴は、自宅の所有権を維持したまま資金を得られる点です。
ただし融資であるため、借入限度額があります。多くの場合、融資可能額は不動産価格の5〜6割程度とされています。
また、契約条件として年齢制限や対象地域などの条件が設けられることもあります。
資金調達額の違い
資金調達額は両者で大きく異なります。
リースバックは不動産を売却するため、比較的大きな資金を確保できる可能性があります。ただし売却価格は市場価格より低くなることが多く、一般には市場価格の7〜8割程度とされます。
一方、リバースモーゲージは融資であるため、借入額には上限があります。多くの場合、不動産価格の5〜6割程度が上限となります。
このため、短期的に大きな資金を確保したい場合はリースバック、資産を保有しながら資金を得たい場合はリバースモーゲージという整理になることが多いといえます。
居住の安定性の違い
居住の安定性も重要なポイントです。
リバースモーゲージの場合、自宅の所有者は利用者自身です。したがって、契約条件を満たしている限りは住み続けることができます。
一方、リースバックでは売却後は賃貸住宅となります。賃貸契約の内容によっては定期借家契約となる場合があり、契約期間終了後に更新できない可能性もあります。
そのため、長期間住み続けることを前提とする場合には、契約条件を十分に確認する必要があります。
税務上の違い
税務面でも両者には違いがあります。
リースバックの場合、自宅を売却するため譲渡所得が発生します。自宅であれば居住用財産の3000万円特別控除が利用できる可能性がありますが、売却という事実自体は変わりません。
一方、リバースモーゲージは融資であるため、資金の受け取り自体には所得税は課税されません。借入金として扱われるためです。
ただし将来、担保不動産を売却して返済する際には、相続や不動産売却の問題が関係する可能性があります。
どちらが適しているか
どちらの制度が適しているかは、利用目的によって異なります。
リースバックは次のような場合に検討されることがあります。
- 住宅ローンを完済したい
- まとまった資金が必要
- 将来的に住み替えを予定している
一方、リバースモーゲージは次のようなケースで利用されることがあります。
- 自宅を手放したくない
- 老後資金を定期的に確保したい
- 相続まで自宅に住み続けたい
自宅という重要な資産に関わる判断であるため、資金計画や相続の影響も含めて慎重に検討することが重要です。
結論
リースバックとリバースモーゲージは、いずれも自宅資産を活用して資金を確保する方法ですが、仕組みは大きく異なります。
リースバックは不動産を売却する仕組みであり、まとまった資金を得られる一方で所有権は失われます。
リバースモーゲージは自宅を担保とした融資であり、所有権を維持したまま資金を得ることができます。
資金調達額、居住の安定性、税務、相続への影響などを総合的に比較し、自身の生活設計に合った方法を選択することが重要です。
参考
日本経済新聞「<ステップアップ>リースバック 売却価格に注意 利用者に不利なケースも」2026年3月7日 朝刊
国土交通省 住宅関連金融制度の解説資料
金融庁 高齢期の資産活用に関する資料
