マンションの修繕積立金は、区分所有者が将来の大規模修繕などに備えて長年積み立てていく重要な資金です。一方で、その使い道については「修繕工事以外にどこまで使ってよいのか」が分かりにくく、管理組合の判断に迷いが生じやすい分野でもありました。
こうした中、国土交通省が標準管理規約を改正し、修繕積立金から支出できる費用の範囲を明確化しました。金融機関への手数料など、これまで曖昧だった支出が明示されたことは、管理組合運営にとって大きな意味を持ちます。
本記事では、今回の改正内容を整理しつつ、実務上どのような影響があるのかを考えていきます。
修繕積立金の「使える・使えない」が曖昧だった背景
修繕積立金は、本来「将来の修繕に備えるための資金」です。そのため、日常の管理費とは明確に区別され、目的外使用が問題視されることも少なくありません。
しかし実務では、
- 積立金口座の管理
- 修繕工事に伴う事務手続
- 融資や保証を利用する場面
など、「修繕と密接に関連するが、工事費そのものではない支出」が数多く存在します。
これらを管理費から支出すべきか、修繕積立金から支出してよいのかについて、明確な基準がなく、管理組合ごとに判断が分かれてきました。
今回の改正で明記された支出可能な費用
今回、国交省が示した新たな標準管理規約では、修繕積立金から支出できる費用の例が具体的に示されました。主なポイントは次のとおりです。
金融機関に関する費用
- 修繕積立金口座の残高証明書の発行手数料
- 口座管理に付随する金融機関手数料
これらは積立金を適切に管理・証明するために不可欠な費用であり、修繕積立金から支出できることが明確化されました。
融資・保証に関する費用
- 住宅金融支援機構のリフォーム融資を利用する際の保証料
大規模修繕で融資を活用するケースは増えており、その際の保証料も修繕積立金から支出可能と整理されています。
大規模修繕に付随する諸費用
- 修繕工事契約にかかる印紙税
- 工事代金の振込手数料
これまで「工事費ではない」という理由で扱いに迷いがちだった費用についても、修繕積立金からの支出が想定されると明示されました。
調査・検討段階でも修繕積立金が使える点に注目
今回の改正では、さらに踏み込んだ内容も盛り込まれています。
具体的には、
- マンション1棟丸ごとのリノベーション
- 建替えや敷地売却
といった将来の大きな意思決定に向けた事前調査費用についても、修繕積立金を充当できると示されました。
これは、「修繕をするか、別の選択肢を取るか」を判断するための調査も、広い意味で建物の維持・更新に資する行為と位置づけたものといえます。
高経年マンションが増える中、管理組合にとって現実的な選択肢を検討しやすくなる点は重要です。
共用部の喫煙ルールも管理規約で明記可能に
今回の標準管理規約では、金銭面以外の点も整理されています。
共用部での喫煙について、
- 喫煙を認める場所
- 禁止する範囲
- 違反した場合の措置
などを使用細則で定めることができると明記されました。
トラブルになりやすい生活ルールについて、あらかじめ文書化しておくことの重要性を示した改正といえます。
管理組合・区分所有者への実務的な影響
今回の改正は、「新たな支出を認めた」というよりも、「これまでグレーだった部分を整理した」意味合いが強いものです。
その結果、
- 管理組合が判断に迷いにくくなる
- 総会での説明がしやすくなる
- 区分所有者との無用な対立を避けやすくなる
といった効果が期待されます。
一方で、標準管理規約はあくまで「ひな型」です。実際に修繕積立金の使途を明確にするには、各マンションの管理規約や細則の見直しが重要になります。
結論
今回の国交省による標準管理規約の改正は、マンション修繕積立金の実務運用を現実に即した形で整理する動きといえます。
修繕積立金は「貯めること」自体が目的ではなく、「将来の適切な判断と行動につなげるための資金」です。
その使い道が明確になることで、管理組合の意思決定の質も高まっていくでしょう。
マンションを長く安心して維持していくためにも、今回の改正をきっかけに、自身のマンションの管理規約や運用状況を一度確認してみることが重要です。
参考
- 日本経済新聞「マンション修繕積立金、手数料など支出可能 国交省が明記」(2026年1月9日朝刊)
- 国土交通省 標準管理規約改正に関する公表資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

