マンションは“負動産”になるのか――再生時代の資産観を問い直す

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これまでマンションは、多くの人にとって「資産」でした。
立地が良ければ値上がりし、少なくとも大きく値崩れはしない。そうした前提が長く共有されてきました。

しかし現在、その前提は揺らいでいます。

老朽化、管理不全、合意形成の停滞。
さらに建て替えや売却の困難さが顕在化し、「持っていること自体が負担になる」ケースも増えています。

本シリーズでは、制度改正、相続税、管理不全といった論点から、マンションを取り巻く環境の変化を見てきました。
本稿ではそれらを踏まえ、「マンションは負動産になるのか」という問いに向き合います。


なぜマンションは“資産”でいられたのか

まず、これまでの前提を整理します。

マンションが資産として成立していた理由は以下です。

  • 都市部での安定した需要
  • 建物の新しさによる価値維持
  • 管理体制の一定の機能
  • 流動性の高さ

つまり

「売れる」ことが前提でした。

この“出口の存在”が、資産性を支えていました。


何が変わったのか

現在起きている変化は、大きく3つです。

① 建物の老朽化の加速

  • 築40年以上のマンションが急増
  • 修繕・建て替えの必要性が顕在化

② 居住者の高齢化

  • 負担能力の低下
  • 意思決定の停滞

③ 再生コストの上昇

  • 建築費の高騰
  • 建て替え負担の増大

この3つが重なることで

「再生できないマンション」

が増えています。


負動産化のメカニズム

マンションが負動産化するプロセスは明確です。

  1. 修繕が遅れる
  2. 建物の劣化が進む
  3. 資産価値が低下
  4. 買い手が減少
  5. 空室が増加
  6. 管理費収入が減少
  7. さらに管理が悪化

いわゆる負のスパイラルです。

この段階に入ると

  • 売れない
  • 貸せない
  • しかし維持費はかかる

という状態になります。

これが「負動産」です。


すべてのマンションがそうなるわけではない

ここで重要な点があります。

マンションは一律に負動産化するわけではありません。

今後は明確に分かれます。

① 再生可能マンション

  • 好立地
  • 管理良好
  • 合意形成が機能

② 延命型マンション

  • 最低限の修繕
  • 徐々に価値低下

③ 負動産化マンション

  • 管理不全
  • 流動性喪失

つまり

「二極化ではなく三極化」

です。


税制・制度との関係

これまで見てきたように

  • 相続税評価の歪み
  • 建て替え制度の限界
  • 行政関与の制約

これらはすべて

「現実の変化に制度が追いついていない」

ことを示しています。

今後は

  • 評価の見直し
  • 再生制度の強化

が進む可能性がありますが、それでも

「すべてを救う制度」

は存在しません。


個人にとっての意味

この問題は、個人の資産戦略に直結します。

重要なのは以下の転換です。

① 保有前提から出口前提へ

  • 買う前に売れるかを考える

② 節税から処理可能性へ

  • 相続対策よりも処分可能性

③ 価格から構造へ

  • 価格ではなく管理・構成を見る

マンションは

「持つこと」ではなく
「処理できること」

が重要な資産になります。


それでもマンションは必要である

ここで誤解してはいけない点があります。

マンションは依然として重要な居住インフラです。

  • 都市部の住宅供給
  • 高齢期の生活利便性
  • セキュリティ

これらの価値は変わりません。

問題は

「資産としてどう扱うか」

です。


結論

マンションは今後、すべてが負動産になるわけではありません。
しかし、負動産になる可能性を内包した資産に変わったことは間違いありません。

これからの時代は

  • 管理
  • 合意形成
  • 立地
  • 資金

によって、結果が大きく分かれます。

マンションは「買えば安心」の資産ではなく
「選別が必要な資産」です。

そしてその本質は

「不動産」ではなく「共同体」

にあります。

この認識を持つことが、これからの資産判断の出発点になります。


参考

日本経済新聞(2026年3月22日 朝刊)
国土交通省 マンション政策関連資料

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