企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人が、老後資金づくりを本格化させようとしたとき、必ず直面するのが「マッチング拠出を選ぶべきか、それともiDeCoに別途加入すべきか」という問題です。
どちらも税制優遇のある制度ですが、両立はできず、いずれか一方を選択する必要があります。2026年以降の制度拡充により、この選択はこれまで以上に重要になります。本稿では、制度の違いと判断軸を整理します。
マッチング拠出とiDeCoの基本的な違い
マッチング拠出とは、企業型DCにおいて、会社が拠出する掛金に加えて、従業員が自分の給与から掛金を上乗せする仕組みです。
一方、iDeCoは個人が自ら加入し、金融機関を選んで掛金を拠出する個人型の確定拠出年金です。
両者の最大の共通点は、拠出した掛金が所得控除の対象となり、運用益も非課税である点です。老後に受け取る際も、一定の税制優遇が設けられています。
一方で、制度の運用主体やコスト構造、商品選択の自由度には違いがあります。
税制面では基本的に互角
税制優遇の観点では、マッチング拠出とiDeCoに大きな差はありません。
どちらも掛金は全額所得控除となり、所得税・住民税が軽減されます。運用期間中の利益も非課税で、老後資金づくりにおける税制メリットは同等といえます。
したがって、「節税額が大きいからiDeCoが有利」「会社制度だからマッチング拠出が不利」といった単純な比較は成り立ちません。判断のポイントは、税制以外の部分にあります。
判断軸① 口座管理手数料とコスト
コスト面で見ると、多くの場合、マッチング拠出は有利です。
企業型DCでは、口座管理手数料を会社が負担しているケースが多く、加入者本人の負担が抑えられます。
一方、iDeCoでは、加入時・運用期間中・給付時に、金融機関や国民年金基金連合会への手数料が継続的に発生します。金額は小さく見えても、長期運用では無視できない差になります。
勤務先の企業型DCで手数料が会社負担となっている場合、コスト面ではマッチング拠出が有利になりやすいといえます。
判断軸② 商品ラインナップの自由度
商品選択の自由度では、iDeCoに分があります。
iDeCoは金融機関を自分で選べるため、低コストのインデックスファンドなど、豊富な商品から選択できます。
企業型DCの場合、投資商品は会社が選定したラインナップに限定されます。中には信託報酬が高めの商品が多く、選択肢が限られているケースもあります。
この場合、コストの高い商品で長期間運用するリスクを考慮する必要があります。
判断軸③ 運用管理のしやすさ
運用管理のしやすさという点では、企業型DCに一体化できるマッチング拠出は分かりやすい制度です。
給与天引きで自動的に拠出され、企業型DC口座内で一元管理できます。
iDeCoは別口座となるため、企業型DCと合わせて資産配分を考える必要があります。資産管理を自分で細かく行いたい人には向いていますが、手間を増やしたくない人には負担に感じられることもあります。
判断軸④ 企業型DCの制度内容の確認
最も重要なのは、自社の企業型DC制度の中身を把握することです。
口座管理手数料の負担区分、商品ラインナップ、信託報酬の水準、マッチング拠出の手続きのしやすさなどは、企業ごとに大きく異なります。
企業型DCの制度内容が充実している場合は、マッチング拠出を優先する合理性が高くなります。
逆に、商品選択の自由度が低く、コストの高い商品しか選べない場合は、iDeCoを選ぶ余地が出てきます。
2026年改正で重要性が増す選択
2026年4月以降、マッチング拠出の上限が会社拠出額に縛られなくなります。
さらに12月には、拠出上限額自体も引き上げられます。
これにより、企業型DCを最大限活用できる環境が整いますが、同時に「どの制度で拠出枠を使うか」という選択の重要性も高まります。
何となくiDeCoに加入するのではなく、制度比較をした上で判断することが求められます。
おわりに
マッチング拠出とiDeCoは、どちらが絶対に正解という制度ではありません。
重要なのは、自社の企業型DC制度の内容を把握し、コスト、商品、管理のしやすさを踏まえて選択することです。
企業型DCが整っている場合は、マッチング拠出を優先することが合理的です。一方、商品選択の自由度や運用方針を重視する場合には、iDeCoが適するケースもあります。
老後資金づくりは長期戦です。制度の特徴を理解し、自分に合った形で活用することが、結果として最大のメリットにつながります。
参考
・日本経済新聞「確定拠出年金(DC)の制度拡充 老後資金、企業型でも備え」
・厚生労働省 確定拠出年金制度に関する公表資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
