企業の経理業務は、日々多くの取引を処理しながら正確な数字を作り上げていく仕事です。仕訳入力、請求書処理、経費精算、帳簿確認など、業務の多くは一定のルールに基づいて繰り返し行われます。
近年、こうした業務を効率化する手段として注目されているのが「プログラミング的思考」です。これはエンジニアだけのものではなく、業務を整理し、手順を明確にするための考え方でもあります。
経理の仕事をプログラミングの視点で整理すると、作業の構造が見えやすくなり、業務の標準化や自動化につながる可能性が広がります。本稿では、経理業務と相性のよい「プログラミング的思考」の基本と、その実務的な意味を整理します。
プログラミング的思考とは何か
プログラミングという言葉を聞くと、複雑なコードを書く作業を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし実際には、コードを書く以前に重要なのは「物事を順序立てて整理する思考」です。
例えば料理を考えてみると、献立を決め、材料を買い、食材を切り、加熱するという一連の手順があります。そこには条件判断や同じ作業の繰り返しも含まれます。
経理業務もこれとよく似ています。
・取引内容を確認する
・勘定科目を選択する
・金額を入力する
・仕訳を確定する
このように、業務は一定の手順に沿って進みます。プログラミング的思考とは、この流れを明確にし、構造として捉える考え方です。
アルゴリズムという考え方
プログラミング的思考を具体化したものが「アルゴリズム」です。アルゴリズムとは、処理の手順や型を整理したものを指します。
代表的な処理は大きく三つに整理できます。
まず「順次処理」です。
これは決められた順序に従って処理を進める方法です。仕訳入力のように、確認→入力→確定という流れが決まっている作業がこれに該当します。
次に「条件分岐」です。
ある条件によって処理を変える方法です。
例えば
・金額が10万円以上なら固定資産として処理する
・それ以外は消耗品費として処理する
といった判断は、典型的な条件分岐です。
三つ目が「繰り返し処理」です。
同じ作業を何度も実行する処理です。
経費精算や請求書入力のように、多くの取引を同じ手順で処理する業務は、この繰り返し処理の典型といえます。
経理業務をアルゴリズムで整理するメリット
経理業務をアルゴリズムとして整理すると、いくつかの重要なメリットが生まれます。
第一に、業務の見える化です。
普段は無意識に行っている作業も、順次処理・条件分岐・繰り返し処理に分解して整理すると、どこで判断しているのか、どこが同じ作業なのかが明確になります。
第二に、業務の標準化です。
手順として整理された業務は属人化を防ぎ、引き継ぎやマニュアル作成が容易になります。
第三に、自動化への第一歩になることです。
業務の流れを整理しておけば、システム化やツール導入を検討する際にも、必要な処理を明確に説明できるようになります。
単にITスキルを高めるという話ではなく、自分の仕事を客観的に捉え、言語化する能力を高める効果もあります。
経理とプログラミング思考の親和性
経理業務は、ルールが明確で繰り返し処理が多いという特徴があります。
例えば、請求書処理、経費精算、仕訳入力、帳簿チェックなど、多くの業務が同じ手順で大量に処理されます。
このような業務は、アルゴリズムとして整理することで効率化しやすくなります。
まずは自分の仕事を
・どの順序で処理しているのか
・どこで判断をしているのか
・どこが繰り返し作業なのか
という視点で整理してみることが重要です。
この整理ができれば、業務改善や自動化の方向性が自然と見えてきます。
結論
プログラミング的思考とは、単にコードを書くための技術ではなく、仕事を整理するための思考方法です。
経理業務の多くは、順次処理、条件分岐、繰り返し処理という構造で説明することができます。
こうした視点で業務を見直すことで、作業の流れが明確になり、業務の標準化や効率化につながります。
経理の仕事は本来、数字を処理するだけでなく、企業の経営情報を支える重要な役割を担っています。
その業務をより効率的に進めるためにも、プログラミング的思考を取り入れ、仕事の構造を整理することは大きな意味を持つといえるでしょう。
参考
企業実務 2026年3月号
戸村涼子「経理実務で身に付くプログラミング的思考2 経理現場の日常業務を自動化する」
