労災保険と民間の就業不能保険は、どちらか一方を選ぶ制度ではありません。重要なのは、自分の働き方や家族状況に合わせて「どう組み合わせるか」です。
ここでは、フリーランスに多い典型的なケースごとに、現実的な保険の組み合わせ方を整理します。
ケース① 現場作業・移動が多いフリーランス
(建設系一人親方、配送業、取材・撮影系など)
このタイプは、業務中の事故リスクが比較的高く、労災保険の役割が非常に大きくなります。
まず優先すべきは、労災保険への特別加入です。休業補償や後遺障害年金、死亡時の遺族補償まで、公的制度として長期的な保障が得られます。
民間保険については、業務外の病気や私生活でのケガに備えるため、最低限の就業不能保険を上乗せする形が現実的です。
考え方の軸
・業務上リスク:労災保険でカバー
・業務外リスク:民間保険で補完
ケース② デスクワーク中心・IT系フリーランス
(エンジニア、デザイナー、ライターなど)
業務中の重大事故リスクは低めですが、長時間労働や体調不良による就業不能リスクは無視できません。
この場合、労災保険は「万が一の事故に対する最低限の土台」と位置づけ、給付基礎日額は抑えめに設定する考え方もあります。
一方で、民間の就業不能保険は、病気による長期離脱に備える主力として位置づけるケースが多くなります。
考え方の軸
・事故リスク:労災で最低限
・病気リスク:民間保険を主軸
ケース③ 収入が不安定な駆け出しフリーランス
(独立直後、副業から移行期)
この段階では、保険料負担そのものが重く感じられがちです。
無理にフル装備を目指すよりも、「最低限の守り」を意識する方が現実的です。
労災保険は、給付基礎日額を低めに設定して特別加入し、民間保険は免責期間が長めで保険料を抑えた商品を選ぶという組み合わせが考えられます。
考え方の軸
・保険料負担を抑えつつ、無保険状態を避ける
・成長に応じて見直す前提で加入
ケース④ 家族を扶養しているフリーランス
(配偶者・子あり)
このケースでは、「本人が働けなくなった場合」と「死亡時」の両方を意識する必要があります。
労災保険は、業務上事故による遺族補償年金という強力な土台になります。最近の制度改正で、配偶者の性別や年齢に左右されない点も重要です。
これに加えて、民間の就業不能保険や収入保障保険で、業務外リスクや不足分を補う形が基本になります。
考え方の軸
・業務上死亡・障害:労災保険
・病気・私生活リスク:民間保険で上乗せ
ケース⑤ 老後資金をある程度確保しているベテラン層
(貯蓄多め・住宅ローン完済など)
この層では、「すべてを保険で賄う必要があるか」を再確認する視点が重要です。
労災保険は、公的制度としてコストパフォーマンスが高く、長期年金給付につながるため、維持する意義は大きいといえます。
一方、民間保険は、貯蓄で代替できる部分を整理し、保障額を縮小・整理する選択肢も現実的です。
考え方の軸
・公的制度を土台に
・民間保険は「必要最小限」に再設計
結論
労災保険と民間保険の組み合わせに、唯一の正解はありません。
重要なのは、「業務上のリスクは労災保険」「業務外や不足分は民間保険」という役割分担を理解し、自分の状況に合わせて設計することです。
フリーランスの保障設計は、一度決めて終わりではなく、収入や家族構成の変化に応じて見直していくものです。公的制度を土台に、無理のない形で民間保険を組み合わせることが、現実的なリスク管理につながります。
参考
・日本経済新聞「労災遺族年金 厚労省、支給要件の男女差解消へ」
・厚生労働省 労災保険 特別加入制度に関する公表資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
