デジタル化が変える相続実務(第4回)――デジタル遺言・自筆遺言・公正証書遺言の使い分け

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ここまで、デジタル遺言の制度概要や、向いている人、起こりやすいトラブルについて整理してきました。
第4回では、実務の現場で必ず問われる 「結局、どの遺言を選ぶべきか」という問題を考えます。

遺言のデジタル化は、既存の制度を置き換えるものではありません。
むしろ、複数の遺言方式をどう使い分けるかが、これまで以上に重要になります。

遺言は「簡単さ」と「確実さ」のバランスで選ぶ

遺言方式を選ぶ際の基本軸は、
・作成のしやすさ
・内容の確実性
・争いにくさ

この3点のバランスです。
以下、それぞれの遺言方式を実務目線で整理します。

デジタル遺言の位置づけ

デジタル遺言の最大の特徴は、作成・修正のしやすさです。

全文手書きや押印の負担がなく、法務局での保管により紛失リスクも抑えられます。
ライフステージに応じて内容を見直したい人にとっては、有力な選択肢になります。

一方で、内容設計は基本的に本人任せです。
相続関係が複雑な場合や、遺留分への配慮が必要な場合には、慎重な検討が欠かせません。

自筆証書遺言の位置づけ

自筆証書遺言は、今後も一定の役割を持ち続けると考えられます。

最大の利点は、費用をかけず、すぐに作成できる点です。
形式さえ守れば、特別な手続きは不要です。

ただし、書き間違いや表現の曖昧さが、そのまま無効や争いにつながりやすい方式でもあります。
デジタル遺言の登場により、「急ぎの暫定対応」としての位置づけがより明確になる可能性があります。

公正証書遺言の位置づけ

公正証書遺言は、最も確実性の高い方式です。

公証人が関与し、内容を確認しながら作成されるため、形式不備や意思能力を巡る争いが起こりにくい点が最大の強みです。
不動産が多い場合や、相続人間の関係が微妙な場合には、依然として第一選択となります。

一方で、費用や手続きの手間がかかる点は否定できません。
そのため、「すべて公正証書でなければならない」と考える必要はありません。

実務での使い分けイメージ

実務的には、次のような整理が現実的です。

・内容が単純で、定期的に見直したい → デジタル遺言
・緊急的・暫定的に意思を残したい → 自筆証書遺言
・争いを極力避けたい、設計が複雑 → 公正証書遺言

重要なのは、一度選んだ方式に固執しないことです。
人生の段階や家族構成の変化に応じて、方式を切り替える発想が今後は必要になります。

税務・FP視点からの補足

遺言の方式が違っても、相続税の計算や申告手続きが変わるわけではありません。
しかし、遺言の内容次第で、納税資金の準備や二次相続への影響は大きく変わります。

方式選択と同時に、
・どの財産を誰に渡すか
・納税資金をどう確保するか
・次の相続まで見据えるか

といった視点を組み合わせて考えることが重要です。

結論

デジタル遺言の登場により、遺言方式は「一択」ではなくなりました。
これからの相続実務では、制度を知ったうえで、目的に応じて選ぶ力が問われます。

遺言は形式ではなく、設計が本質です。
どの方式を選ぶにしても、「なぜこの方式なのか」を説明できることが、安心につながります。

次回は、「おひとり様・認知症リスクとデジタル遺言」をテーマに、
高齢社会ならではの視点から整理していきます。

参考

・日本経済新聞「デジタル遺言要綱案、手書き負担減や押印除外」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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