投資環境の整備が進み、NISAやiDeCoを通じて多くの人が資産運用に取り組むようになりました。
その一方で、ユニコーン企業やスタートアップ投資への関心も高まり、「成長性が高いなら老後資産にも向いているのではないか」と考える人も少なくありません。
しかし、スタートアップ投資とNISA・iDeCoは、そもそも目的も性格も大きく異なります。
老後資産形成を誤らないためには、この線引きを明確にしておくことが重要です。
NISA・iDeCoの本来の役割
NISAとiDeCoは、共通して「老後を見据えた資産形成」を目的とした制度です。
その前提には、
- 長期・分散・積立を基本とすること
- 税制優遇によって運用効率を高めること
- 大きな当たりではなく、安定的な積み上げを重視すること
があります。
特にiDeCoは、原則として60歳まで引き出せない仕組みであり、「老後資金の土台」を作る制度です。
NISAも同様に、生活資金とは切り離し、長期で育てることが前提となっています。
スタートアップ投資の性格はまったく異なる
スタートアップ投資は、NISAやiDeCoとは発想が根本的に違います。
未上場企業への投資は、
- 企業価値の評価が不確実
- 流動性が極めて低い
- 回収時期や方法が読めない
という特徴を持ちます。
成功すれば大きなリターンが得られる可能性がある一方で、ゼロになる可能性も常に存在します。
この「当たるか外れるか」という性格は、老後資産の中核とは相容れません。
線引き①:目的の違い
まず最も重要な線引きは「目的」です。
- NISA・iDeCo:老後の生活を支える資金づくり
- スタートアップ投資:成長への期待、応援、経験
老後資金に求められるのは「確率の高い成功」です。
一方、スタートアップ投資は「低確率だが大きな成功」を狙う投資です。
この目的の違いを混同すると、老後資産全体のバランスを崩しかねません。
線引き②:時間軸の違い
NISA・iDeCoは、時間を味方につける制度です。
数十年かけて複利効果を積み上げることが前提であり、途中の価格変動は想定内とされています。
一方、スタートアップ投資は、
- いつ回収できるのか分からない
- 老後に入っても資金が固定されたままになる
といった時間軸の不確実性があります。
老後が近づくほど、この不確実性は大きな負担になります。
線引き③:位置づけの違い
老後資産全体を俯瞰したとき、
- NISA・iDeCoは「基礎部分」
- スタートアップ投資は「余白部分」
として位置づける必要があります。
生活費、医療・介護費、住まい関連費用を支える資金に、スタートアップ投資を組み込むべきではありません。
あくまで「なくても老後生活に影響しない資金」で行うものです。
老後世代が陥りやすい危険な混在
注意したいのは、
「NISAで成長投資をしているのだから、スタートアップ投資も同じ延長線で考えてよい」
という誤解です。
NISAの中で行う成長投資と、未上場企業への直接投資は、リスクの質がまったく異なります。
制度上の税制優遇があるからといって、リスクまで軽減されるわけではありません。
結論
スタートアップ投資とNISA・iDeCoは、同じ「投資」という言葉で語られがちですが、役割は明確に異なります。
NISA・iDeCoは老後資産形成の土台であり、スタートアップ投資は余力資金による選択肢の一つに過ぎません。
老後に安心を残すためには、
「守る資産」と「挑戦する資産」を混ぜないことが何より重要です。
制度の趣旨に沿った線引きを行うことが、結果として長い老後を支えることになります。
参考
・日本経済新聞「NEXTユニコーン調査」
・日本経済新聞「ユニコーン選別進む 上場厳格化」
・金融庁 NISA・iDeCo制度解説資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

