ユニコーン企業やスタートアップへの投資は、将来の大きな成長を期待できる一方で、高い不確実性を伴います。
近年は個人投資家の投資環境が整い、「成長企業に早く投資したい」という声も聞かれるようになりました。
しかし、老後資産形成の観点から見ると、スタートアップ投資は慎重に位置づける必要があります。
本稿では、スタートアップ投資と老後資産形成の適切な距離感について整理します。
老後資産形成の基本構造
老後資産形成の目的は明確です。
それは「生活費を安定的に賄い、長生きリスクに備えること」です。
この目的に対して重要なのは、
- 収益の安定性
- 資産価値の把握しやすさ
- 必要なときに換金できる流動性
といった要素です。
この点で、老後資産形成の中心となるのは、分散された株式投資や債券、年金収入などの比較的予測可能な資産です。
スタートアップ投資の性格
一方、スタートアップ投資は本質的に「成功か失敗か」に大きく分かれます。
企業価値が数倍、数十倍になる可能性がある反面、
- 上場に至らない
- 上場しても成長が止まる
- 資金調達環境の変化で評価が大きく下がる
といったリスクも常に存在します。
最近のユニコーン予備軍減少は、「期待値だけでは評価されない時代」に入ったことを示しています。
老後世代が陥りやすい誤解
老後世代がスタートアップ投資に関心を持つ場合、注意すべき誤解があります。
それは「若い人向けの成長投資=将来性が高い=老後にも有利」という短絡的な考え方です。
実際には、老後世代にとって最大のリスクは「値上がりしないこと」ではなく、「途中で資金が必要になったときに使えないこと」です。
未上場株式や流動性の低い投資は、この点で老後資金と相性が良いとはいえません。
老後資産における適切な位置づけ
では、スタートアップ投資は老後資産形成において完全に排除すべきなのでしょうか。
答えは「主軸にはならないが、限定的に考える余地はある」です。
例えば、
- 生活防衛資金
- 年金収入を補う安定資産
が十分に確保されたうえで、
「失っても生活に影響しない範囲」で行うのであれば、スタートアップ投資は趣味的・応援的な意味合いを持ちます。
この場合、リターンを前提にするのではなく、「経験や共感への対価」と割り切る視点が重要です。
スタートアップ投資が向く人・向かない人
老後世代でも、以下のような人はスタートアップ投資と一定の距離を保つべきです。
- 老後資金に余裕がない
- 近い将来、大きな支出(介護・住み替えなど)が見込まれる
- 資産価格の変動に精神的な負担を感じやすい
逆に、
- 老後資金に十分な余裕がある
- 投資経験が豊富でリスクを理解している
- 結果よりプロセスを楽しめる
といった人であれば、限定的な関与は選択肢になり得ます。
結論
スタートアップ投資は「老後資産形成の主役」ではありません。
老後に求められるのは、夢よりも持続性と現実性です。
スタートアップ投資は、老後資産の土台が完成した後に、余力の範囲で向き合うものと考えるのが現実的でしょう。
ユニコーンの話題に心が動いたときこそ、「自分の老後資産の役割分担」を冷静に見直すことが大切です。
参考
・日本経済新聞「NEXTユニコーン調査」
・日本経済新聞「ユニコーン選別進む 上場厳格化」
・日本経済新聞「成長組はグローバル視点」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
