シリーズ:アラウンド古希の働き方 企業が取り組むべきシニア活躍の職場づくり編(第3回)“70歳まで働ける企業”は、これからの競争力になる

FP
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70歳前後の働き手が珍しくなくなったいま、企業が求められているのは「シニアが安心して働ける職場づくり」です。
2025年4月からは65歳までの雇用継続が義務となり、70歳までの就業機会確保も努力義務に。人手不足は構造的で、シニアの力は企業経営に欠かせない存在になっています。

しかし、加齢に伴う身体の変化に十分配慮できている企業は、まだ一部にとどまります。
この記事では、企業がシニア活躍を実現するために取り組むべきポイントを、法制度の流れ・現場の課題・最新の事例を踏まえて整理します。

1.企業に求められる“シニア活用力”とは

シニアを雇い続ける意義は、単なる労働力確保だけではありません。

  • 多様な顧客への理解
  • 現場を支える熟練スキル
  • 若手への教育効果
  • 組織の安定感
  • コミュニケーションの円滑化

こうした価値は、企業の競争力そのものです。
反対に、シニアが働きにくい職場は人材流出・採用難・教育コスト増などの課題が蓄積しやすくなります。

企業が重視すべきは、
「シニアが安心して働き続けられる仕組みを整えること」
その一点に尽きます。


2.加齢による変化を理解する

企業がまず取り組むべきは、“シニアが直面する変化”を正しく理解することです。

代表的な変化は次の通りです。

  • トイレが近い(過活動ぼうこうなど)
  • 視力・聴力の低下
  • 反応速度の低下
  • 転倒リスクの増加
  • 長時間の集中が続きにくい
  • 暑さ・寒さに弱くなる

これらは“個人差”ではなく“誰にでも起こる加齢変化”です。
理解が浅いままでは、シニアに必要な配慮が職場で生まれません。


3.企業ができる具体的な取り組み

(1)働き方の柔軟化

シニアが最も負担に感じるのは「時間の拘束」です。

  • 会議に必ずトイレ休憩を設ける
  • 休憩時間を短い代わりにこまめに入れる
  • 作業時間や担当業務を調整する
  • 体調に応じたシフト変更に柔軟対応する

特にトイレに関する配慮は、シニア本人の安心感が大きく変わり、パフォーマンス向上につながります。


(2)コミュニケーション環境の整備

聴力の変化に対応した環境づくりは、事故防止にもつながります。

  • 店舗内無線を聞こえやすいタイプに変更
  • 音声を文字化するシステムの導入
  • 会議では発言者の話すスピードを意識
  • 難しい説明は紙・チャットで補足
  • 上司・同僚が呼びかけルールを共有

「声が聞こえないまま作業する」状況は、ミスや事故の温床となります。


(3)安全対策の強化

現場での事故リスクはシニアだけでなく全世代に関わる問題であり、企業が明確に取り組むべき分野です。

  • 事故・ヒヤリハットの収集と共有
  • 梱包材・段ボール・コード類の整理徹底
  • 高い場所の作業は二人作業に
  • 台車・補助具の整備
  • 歩行ルートの明確化
  • 段差・滑りやすい場所の改善

特にノジマのように「ヒヤリハット収集」を全社で仕組み化することは効果が大きく、事故の芽を早期に摘むことができます。


(4)健康管理と事故予防の仕組み

企業側で健康管理を支える取り組みも重要です。

  • 定期的な産業医・保健師面談
  • 高齢者特有の症状(頻尿・聴力低下など)へのアドバイス
  • 室温・湿度の管理
  • 朝礼で安全注意ポイントを共有
  • 長時間座りっぱなしの業務を避ける
  • 熱中症・寒冷ストレスへの注意喚起

特に室温管理は心筋梗塞リスクとの関連も指摘されており、環境整備の優先度は高くなっています。


4.制度とキャリア設計のサポート

企業の制度面でも、シニア活躍を後押しする仕組みが求められます。

  • 再雇用制度の柔軟化(65歳以降の働き方)
  • 70歳までの就業機会の選択肢の明確化
  • 業務内容の段階的な調整
  • シニア向け研修(デジタル・健康・安全)
  • 若手と共に学ぶOJTの仕組み
  • 生涯キャリアの相談窓口

「やりたいけれど体力的に不安」という人の背中を、制度が支えられるかどうかが重要なポイントです。


5.マネジメント層の意識を変える

最も大切なのは、上司・管理職の認識改革です。

  • シニアは“特別な存在”ではなく“普通の労働者”
  • 加齢変化は誰にでも起こる自然なもの
  • 経験・知識は企業の財産
  • 無理をさせず、強みを活かす配置を考える

現場のマネジメントが変わると、シニア活躍は一気に進みます。


結論

70歳まで働く時代において、企業の競争力は「シニア活用力」で大きく変わります。
加齢に伴う変化を前提に、職場環境・働き方・コミュニケーション・安全対策を整備することは、企業にとっての投資であり、未来の人材戦略そのものです。

シニアが安心して働ける職場は、若手にとっても働きやすい職場です。
多様な世代が力を発揮できる環境こそが、企業の持続性を支えます。

次回の第4回では、「シニアと企業がともに行うキャリア設計(70歳以降の働き方をどう描くか)」を取り上げます。
将来を見据えた働き方の選択肢をわかりやすく整理していきます。


出典

  • 日本経済新聞「〈ライフスタイル シニア〉働く『アラ古希』悩みは…」
  • 日本経済新聞「70歳までの雇用、努力義務」
  • 厚生労働省「労働災害統計」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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