シリーズ:アラウンド古希の働き方 シニアと企業がともに進めるキャリア設計編(第4回)70歳以降の働き方を「戦略的に」選ぶ時代へ

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70歳まで働くことが当たり前になった今、多くの人にとって「70歳以降の働き方」をどう描くかが新しいテーマになっています。
定年後の働き方はこれまで“余生の選択”と捉えられがちでしたが、人手不足の中でシニアの活躍は企業にとっても欠かせない戦力です。本人にとっても、働くことは経済的な安心だけでなく、健康・生きがいの面でも大きな意味を持ちます。

この記事では、70歳以降のキャリアをどう設計し、企業はどのように支援すべきかを、実践的な視点から整理します。

1.70歳以降のキャリアは「延長」ではなく「再構築」

60代後半で経験する加齢変化は、体力や集中力だけではありません。

  • 価値観
  • 家族状況
  • 健康状態
  • 生活リズム
    など、多くの要素が変わっていきます。

そのため、70歳以降の働き方は、
「若い頃の延長線」ではなく「いまの自分に合った働き方の再構築」
が重要になります。

具体的には、

  • 何を大切にしたいか
  • どんな働き方なら健康を守れるか
  • どの程度の収入が必要か
  • 企業のどの業務なら続けられるか
    を改めて整理することが必要です。

2.シニア本人が考えておきたい4つの視点

70歳以降の働き方を描く際には、次の4つの軸が有効です。


(1)健康(働ける身体か、どう整えるか)

働くための“土台”です。

  • 持病のコントロール
  • 睡眠・食事のリズム
  • 勤務時間に応じた体力維持
  • 聴力・視力のケア

健康状態に応じて、
「長時間勤務は向かない」
「重い荷物は避けたい」
など制限が生まれることは自然なことです。


(2)収入(どの程度あれば安心か)

公的年金の受給状況や家計のバランスにより、

  • どの程度の収入が必要か
  • どれくらい働きたいか
    が変わります。

70代以降の働き方は

  • 週3日
  • 短時間
  • 業務を絞り込む
    など柔軟な選択肢が増えており、必ずしもフルタイムである必要はありません。

(3)役割(自分の強みをどう活かすか)

シニアの強みは経験だけではありません。

  • 顧客対応の安心感
  • 若手への指導
  • 現場のトラブル対応
  • 正確な事務処理
  • 地域や業界の知見

定年後に評価が一度リセットされると誤解されがちですが、むしろ経験の蓄積こそ企業の価値になります。


(4)生活との両立(家族ケア・趣味・地域活動)

70代は、

  • 夫婦の健康
  • 介護
  • 趣味・ライフワーク
  • 孫との時間
    など生活面の変化が大きくなる時期です。

「週5日フルタイムで働く」のが正解ではなく、生活とのバランスを考えることが長く働くための鍵になります。


3.企業が支援すべき「キャリア対話」の仕組み

キャリア設計は本人だけで完結しません。企業との対話が欠かせません。

(1)年1回の面談では不十分

健康変化のスピードは人によって異なるため、

  • 半年に一度
  • 必要に応じて随時
    という形で、シニアと企業が対話できる仕組みが望まれます。

(2)面談で確認すべき項目

  • 健康状態の変化
  • 作業内容の負担感
  • 聞こえづらさ・見えづらさ
  • トイレなどのデリケートな悩み
  • 今後の働き方の希望
  • 生活の変化(介護・家庭事情など)

これらは、本人から言い出しにくいテーマだからこそ企業側のヒアリングが必要です。


(3)「業務の棚おろし」で強みを再発見する

シニア本人が
「私はもう戦力として役に立たないのでは」
と感じるケースは多いものです。

しかし実際には、

  • 顧客との関係維持
  • 業務の正確性
  • 若手教育
  • クレーム対応
    など、シニアだからこそできる仕事は多数あります。

業務を棚おろしすることで、適材適所の配置が可能になります。


4.70歳以降の働き方のモデル

以下は実際に増えている働き方です。


●モデル①:週3日×短時間

体力とのバランスが良い働き方。
接客・事務・軽作業など広い職種に対応できます。


●モデル②:専門スキルを活かす「ピンポイント勤務」

  • ベテランの品質管理
  • 顧客フォロー
  • 技術アドバイザー
  • 業務改善の助言
    など、限られた時間でも高い価値を発揮できます。

●モデル③:若手育成・OJT担当

経験とコミュニケーション力を活かし、
「現場の育成担当」として働くシニアも増えています。


●モデル④:在宅と出勤を組み合わせる

事務系や顧客対応など、

  • 出勤:1〜2日
  • 在宅:そのほか
    という柔軟な働き方が可能です。

5.企業とシニアがめざす「持続可能な働き方」

70歳以降の働き方は、双方の歩み寄りが欠かせません。

企業:

  • 業務内容の調整
  • 働き方の柔軟化
  • 健康配慮
  • 安全対策
  • キャリア相談の仕組み

本人:

  • 体調管理
  • 無理しない働き方の選択
  • 聞き取りや作業の負担の共有
  • キャリアの強みの見直し

両者が対話的に進めていくことで、安心して働き続けられる環境が整います。


結論

70歳以降の働き方は、「与えられたもの」ではなく「自分で選ぶもの」へと変化しています。
企業もシニアの力を必要としており、働き方はますます多様化しています。

大切なのは、

  • 健康
  • 収入
  • 強み
  • 生活
    の4つを軸に、自分らしい働き方を再設計することです。

シニアのキャリアは終わりではなく、“新しいステージの始まり”。
企業と本人が協力しながら、持続可能で安心できる働き方をつくっていくことが、これからの社会に求められています。


出典

  • 日本経済新聞「〈ライフスタイル シニア〉働く『アラ古希』悩みは…」
  • 日本経済新聞「70歳までの雇用、努力義務」
  • 総務省「労働力調査」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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