「AIを使えば経理業務がなくなる」
そんな言葉を聞くようになって、もう10年。
でも実際のところ、AIを上手に使える経理担当者ほど、仕事の幅はどんどん広がっています。
今回は、はじめてChatGPTなどの生成AIを使う経理担当者が、どう質問すれば正確な答えが得られるのか――そのコツをわかりやすく紹介します。
1. まずは「会社で契約しているAI」を使う
AIサービスにはいろいろあります。
ChatGPT(OpenAI)、Claude(Anthropic)、Gemini(Google)、Copilot(Microsoft)……。
どれを選んでも基本的な使い方は似ていますが、重要なのは「会社が契約しているサービスを使うこと」です。
無料版を個人アカウントで使うと、入力したデータがAIの学習に利用される可能性があります。
たとえば、取引先名や経費データをそのまま入力してしまうと、情報漏えいのリスクが生じるのです。
✅ ポイント
- 無料版は「入力内容が学習に使われる」場合がある
- 有料版(ビジネスプラン)は「学習に使わせない設定(オプトアウト)」が可能
- 機密情報は入れない(社名や個人名は仮名に)
2. 「プロンプト(質問文)」は完璧じゃなくていい
経理にAIを使うとき、最初から完璧な質問を作ろうとしなくても大丈夫です。
むしろAIと会話しながら精度を上げていくのがコツです。
たとえばこんなやりとり:
1回目:「減価償却って何?」
2回目:「パソコン19万8,000円の減価償却はどうすればいい?」
3回目:「パソコン19万8,000円(税別)を定額法で減価償却する場合の仕訳を教えて」
段階的に情報を足していくことで、AIの回答もどんどん具体的になります。
まるで経験豊富な先輩に追加で質問していくような感覚ですね。
3. 経理で使える「汎用テンプレート」
質問に迷ったときは、次のテンプレートを使ってみましょう。
状況:[誰が][何を][いつ][金額][税別 or 税込][方法]
質問:この場合の[知りたいこと]は?
前提条件:(前提条件があれば記入)
形式:[仕訳/表形式/箇条書き]で教えて
例:
状況:従業員が立て替えた新幹線代15,000円を現金で精算
質問:この場合の仕訳は?
形式:仕訳で教えて
これだけで、AIはほぼ正確に回答を出してくれます。
汎用テンプレートをひとつ覚えておくだけで、経理業務のスピードはぐっと上がります。
4. 「質問の仕方」もAIに相談できる
実は、AIは「質問の作り方」も教えてくれます。
たとえばこんな聞き方もおすすめです。
- 「売上計上のタイミングを相談したいけど、どう質問すればいい?」
- 「経理初心者向けにAIへの質問テンプレートを5個作って」
- 「最初の質問のどこが足りなかった?完璧な質問文を教えて」
AIは「この情報を追加すると正確に答えられますよ」とヒントを出してくれるので、
まるで“AIに質問の仕方を学ぶ”ような使い方ができます。
5. 忘れちゃいけない「安全ルール」
最後にもう一度、基本ルールを確認しましょう。
- 会社で契約しているAIを使う
- 無料版や個人アカウントは避ける
- 機密情報・個人情報は入力しない
- 情報セキュリティ部門のガイドラインを必ず確認
生成AIは「経理の敵」ではなく、「頼れる相棒」です。
でも、その力を引き出すには、正しい使い方と安全管理が欠かせません。
まとめ:AIと会話しながら“成長する経理”へ
AIは、使い方ひとつで「ただの検索ツール」にも「経理アシスタント」にもなります。
はじめは少し戸惑うかもしれませんが、質問を重ねるうちに、
AIとの対話から自分の理解も深まっていくはずです。
次回は、「Excel業務にAIをどう使うか?」をテーマにお届けします。
関数づくりや集計表の作成も、AIが“お手伝い”してくれる時代です。
出典:
白井敬祐「中小企業経理の生成AI導入の基本② 成田、初めてのプロンプト 経理業務で使える質問のコツ」
(『企業実務』2025年8月号、株式会社日本実業出版社)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

