1.“人手で集計する時代”は終わった
毎月の経営会議前、
「数字の集計に時間がかかって、分析どころじゃない」
そんな声を、いまも多くの企業で聞きます。
エクセルの更新や手入力ミスに追われ、
本来の目的である“経営判断”に時間が使えない――。
でも、AIとクラウドツールの進化が、
この悩みを根本から変えようとしています。
予実管理は、もはや「人が手でまとめるもの」ではありません。
いまや、「システムが自動でまとめ、人が考える」時代です。
2.AIが経営の“参謀”になる
最近では、ChatGPTやGeminiなどの生成AIが、
経営データの分析や報告書の作成を“サポート”してくれるようになりました。
たとえば――
- 売上データや経費データをAIに読み込ませる
- 「先月との違いを説明して」と指示する
- AIが差異要因を整理し、コメントを自動生成
これまで数時間かかっていた分析メモが、数分で完成します。
さらに、AIは単なる集計だけでなく、
「もしこの価格を5%上げたら利益はどう変わる?」
といったシミュレーション(仮説検証)もできます。
つまりAIは、経営者の“数字の相談役”として働いてくれるのです。
3.BIツールで“見える化”を加速
次に注目したいのが、BIツール(ビジネス・インテリジェンス)です。
代表的なものには「Tableau」や「Microsoft Power BI」があります。
BIツールの魅力は、
エクセルとは比べものにならないスピードと視覚化。
- 売上推移をリアルタイムでグラフ化
- 部署別・商品別にクリック一つで切替
- 前年同月比を自動算出
これにより、会議中でも最新データを見ながら議論できます。
「感覚ではなく、データで語る経営」が自然に実現します。
中小企業でも、月額数千円から使えるクラウドBIツールが増えています。
専門知識がなくても、直感的に使えるのが今のツールの強みです。
4.SaaS型の予実管理ツールで“属人化”を解消
ここ数年で一気に広まっているのが、
SaaS型の予実管理ツールです。
代表的なツールには、
- Loglass(ログラス)
- DIGGLE(ディグル)
- Manageboard(マネジボード)
などがあります。
これらは、KPIの設計から財務三表の連動、
複数シナリオの比較、実績データの自動取込みまで、
一気通貫で予実管理をクラウド化できます。
たとえば、会計ソフトとAPI連携すれば、
日々の実績が自動で更新され、
経営者は“いつでも最新の経営数値”を確認できるようになります。
エクセルのように「担当者がいないと更新できない」状況がなくなり、
属人化のリスクが劇的に減ります。
5.AIとツール導入のポイントは“段階的に”
とはいえ、いきなり全てをシステム化する必要はありません。
まずは、
- エクセル+AIチャットで分析を自動化
- 無料版BIツールでグラフ化に慣れる
- SaaSツールを一部部署で試験導入
といったように、「できるところから」始めるのが成功の秘訣です。
ポイントは、「数字を扱う人」が使いやすい環境をつくること。
IT導入が目的になってはいけません。
あくまで目的は、意思決定のスピードと精度を上げることです。
6.現場を巻き込む「デジタル予実管理文化」へ
AIやクラウドを使うと、
経営数字がリアルタイムで共有できるようになります。
このとき大切なのは、
「現場も数字を見て動く文化をつくる」こと。
経営企画や経理だけでなく、
営業、製造、人事、すべての部門が
“数字を自分ごととして扱う”組織が理想です。
そのためには――
- 月次レビューを「データで話す会議」に変える
- 各部門のKPIをダッシュボードで共有する
- 成果を出したチームを「数字で称賛」する
こうした小さな積み重ねが、
「数字で語る会社」への文化転換を生み出します。
7.まとめ:AI時代の“考える経営”へ
AIやクラウドの力で、予実管理はもはや手間ではありません。
むしろ、“人が考える時間”を取り戻すための仕組みです。
- AIが数字をまとめ、
- BIがデータを見える化し、
- 経営者が判断する。
この流れを定着させることで、
中小企業でも“戦略的な経営判断”が可能になります。
予実管理は、経営の羅針盤。
AIという強力なコンパスを手に入れた今こそ、
数字を味方につけて「考える経営」に進化するチャンスです。
📘 参考資料
『経営状態を見える化する「予実管理」の手引き』
(企業実務2025年9月号 別冊付録)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

