🏁 はじめに
相続や贈与というと「お金持ちの話」「税金の難しい話」と思われがちですが、
実は、誰にでも関係する“家族の引き継ぎ”の話です。
このシリーズでは、税理士・FPとして学んだ最新の制度改正や注意点をもとに、
専門用語をなるべく使わずに「一般の方でも読めるやさしい解説」を目指しました。
🏠 第1回 小規模宅地等の特例ってなに?
──自宅や事業用地の“相続税を大幅に減らせる”制度
- 相続財産のうち、住まいの土地などについては最大80%評価減できる特例。
- 適用には「同居」「家なき子」など条件あり。
- 「誰が」「いつまでに」「どんな土地を」引き継ぐかがカギ。
📎 詳しくは… 同居親族・申告期限・面積上限330㎡のルールを解説
🏡 第2回 家なき子特例と二世帯住宅・老人ホーム入所の扱い
──同居していなくても特例を使えるケースとは?
- 「家なき子特例」は、自分や配偶者が家を持っていない相続人に認められる。
- 二世帯住宅は、「玄関・台所を共有」しているかで判断が分かれる。
- 老人ホーム入所中でも「やむを得ない理由」であれば特例適用可能。
📎 家を貸したり事業用にした場合は適用外なので注意!
👩❤️👨 第3回 配偶者が安心して住み続けるための税のしくみ
──「配偶者居住権」と小規模宅地特例の関係
- 民法改正で導入された「配偶者居住権」により、
残された配偶者は自宅に住み続けられる。 - 相続税でもこの居住権を特例対象として評価減可能。
- 「土地の権利」と「住む権利」を分けて考えるのがポイント。
📎 住宅の所有者と居住者が別でも、権利関係が明確なら適用可能。
🏘 第4回 相続空き家を売ったら税金はどうなる?
──“3,000万円控除”で安心して売却できる特例
- 被相続人が1人で住んでいた家を相続後に売るとき、
条件を満たせば最大3,000万円を譲渡益から控除。 - 対象は旧耐震住宅(昭和56年5月以前建築)。
- 相続から3年以内の年末までに売却することが必要。
📎 「貸していた」「事業用に使っていた」場合はNG。
⚖️ 第5回 小規模宅地特例の“落とし穴”と見落とし事例
──うっかりミスで損をしないために
- 分割協議がまとまらないと「未分割」で特例が使えない。
- 老人ホーム入所・家なき子・二世帯住宅など“適用の分かれ目”に注意。
- 申告書類(明細書)の添付忘れも多い。
📎 形式だけでなく、実際の居住実態が重視される点がポイント。
💰 第6回 相続前“3年ルール”が“7年ルール”へ!
──生前贈与は長期計画の時代に
- 2024年から、相続前7年以内の贈与が相続財産に加算される新ルール。
- 3年→7年に延びることで、短期的な節税効果は薄くなる。
- 7年のうち3年を超える4年分には「100万円の控除」あり。
📎 2031年以降の相続から完全適用。今後の贈与は“長期設計”がカギ。
👨👩👧👦 第7回 教育・住宅・子育ての3つの非課税贈与
──“贈って応援”できる社会へ
| 制度 | 対象 | 上限額 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 教育資金 | 学費・塾代など | 1,500万円 | 令和8年3月末 |
| 住宅資金 | 家購入・リフォーム | 1,000万円 | 令和8年12月末 |
| 結婚・子育て資金 | 結婚・出産・保育等 | 1,000万円 | 令和9年3月末 |
- いずれも「専用口座で使途を確認」「期限内に使い切る」ことが条件。
- 贈与契約書・領収書の保管を忘れずに。
📎 節税よりも「人生支援」の視点で活用するのがおすすめ。
🪙 第8回 相続時精算課税制度と暦年贈与の違い
──“まとめて贈る”か“毎年贈る”か、どう選ぶ?
| 比較項目 | 暦年課税制度 | 相続時精算課税制度 |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 年110万円 | 通算2,500万円 |
| 税の扱い | 贈与のたびに完結 | 相続時に清算 |
| 改正後の特徴 | 7年ルール適用 | 110万円非課税枠が追加(令和6年〜) |
💬 贈与は「節税」ではなく「想いの継承」。
相続も贈与も、“家族を支えるための仕組み”として使いこなすことが大切です。
🌸 おわりに
これまで8回にわたり、
「小規模宅地等の特例」から「贈与税の改正」までを見てきました。
制度を知ることは、“お金を残す”だけでなく、“家族の未来を守る”ことにつながります。
この記事が、あなたとご家族が「いつ」「どのように」資産を引き継ぐかを考える
きっかけになれば幸いです。
📚 参考資料・出典
- 東京税理士会「令和7年度第5回会員研修会資料 小規模宅地等の課税特例(特定居住用宅地等)の基礎と実践に向けて」講師:塩野入文雄 氏(2025年5月8日)
- 財務省「令和5年度税制改正の大綱」
- 国税庁「相続税・贈与税のあらまし」
- 日本税理士会連合会 税制資料(2024年版)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
