本シリーズでは、おひとり様の介護を甥・姪が担うケースを切り口に、
制度の限界、お金の整理、任意後見や遺言、引き受ける側のリスクについて見てきました。
浮かび上がってきたのは、
甥・姪介護は特別な事例ではなく、これからの標準的な課題になりつつある
という現実です。
最終回となる今回は、これまでの内容を踏まえ、
「結局、何をしておけばよいのか」
を、本人側・甥姪側それぞれの視点から整理します。
おひとり様本人が、元気なうちにやるべきこと
おひとり様の介護問題で最も重要なのは、
判断能力が十分にある時期の準備です。
① 一人暮らしであることを「見える化」する
まずは、地域包括支援センターに
「高齢の一人暮らしである」
という情報を伝えておくことが重要です。
介護が始まってからではなく、
「まだ元気だが一人暮らし」という段階でつながっておくことで、
いざというときの対応スピードが大きく変わります。
② 甥・姪と早めに話し合う
介護が必要になってから突然頼むのではなく、
- どこまで頼りたいのか
- 何を期待していないのか
- 施設利用も前提か
といった点を、元気なうちに共有しておくことが大切です。
「迷惑をかけたくない」という気持ちが、
結果的に準備の遅れにつながることもあります。
③ お金の流れを整理する
介護費用は、原則として本人の財産から支払われます。
そのためには、
- 口座の所在
- 不動産の状況
- 毎月の支出
といった情報を、誰かが把握できる状態にしておく必要があります。
「自分のことだから自分で管理する」という姿勢と、
「万一のときに引き継げる準備」は、矛盾しません。
甥・姪が引き受ける前に確認すべきこと
甥・姪の立場で最も重要なのは、
無理を前提にしない判断です。
① 介護は義務ではないと理解する
おじ・おばの介護は、法律上の義務ではありません。
引き受けるかどうかは、あくまで選択です。
「断れない」「やるしかない」と思い込んだ状態で始めると、
途中で撤退できなくなります。
② 自分の生活を守るラインを決める
介護を引き受ける場合でも、
- 仕事は辞めない
- 同居はしない
- 身体介護は専門職に任せる
など、あらかじめ「やらないこと」を決めておくことが重要です。
撤退ラインを決めることは、冷たい判断ではありません。
長期化しやすい甥・姪介護では、継続可能性を高めるための前提条件です。
③ 一人で抱えない
甥・姪介護で最も避けたいのは、
「自分がやらなければ回らない」という状況です。
地域包括支援センター、ケアマネジャー、専門家を早期に巻き込み、
役割を分散させることが、引き受ける側を守ります。
制度は「セット」で考える
本シリーズで繰り返し触れてきたように、
おひとり様介護では、制度を単体で考えると失敗しやすくなります。
- 財産管理等委任契約
判断能力があるうちの支援 - 任意後見契約
判断能力低下後の手続きと身上監護 - 遺言
亡くなった後の整理と感謝の明示
これらを時間軸で整理し、
必要なものを組み合わせて使うことが重要です。
専門家に相談する意味
甥・姪介護では、
- 介護
- 法律
- お金
- 税務
が複雑に絡み合います。
どれか一つだけを専門にしていても、全体像は見えません。
だからこそ、早い段階で専門家の視点を入れることが、
結果的に負担とコストを抑えることにつながります。
結論:備えとは「優しさを続ける仕組み」
おひとり様の介護問題は、
誰かの善意だけで解決できるものではありません。
本当に必要なのは、
- 気持ちを制度に落とし込むこと
- 無理を前提にしないこと
- 役割を明確にすること
です。
備えとは、不安を煽るためのものではなく、
優しさを長く続けるための仕組みです。
本人にとっても、甥・姪にとっても、
「元気なうちの一歩」が、将来の選択肢を大きく広げます。
参考
- 日本経済新聞
「〈ライフスタイル シニア〉おひとり様 甥・姪が介護 休業制度の対象外、長期化に懸念」 - 日本経済新聞
「任意後見契約を結ぶ動きも」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

