未婚、離婚、死別などにより、子や配偶者を持たない高齢者、いわゆる「おひとり様」は年々増えています。
元気なうちは問題が表面化しにくいものの、介護が必要になった瞬間に「誰が支えるのか」という課題が一気に現実のものとなります。
近年目立つのが、甥や姪が介護の担い手になるケースです。
恩返しの気持ちや親からの要請で支える例も多い一方、制度面では想定されていない関係であるがゆえに、負担が長期化・深刻化しやすいという問題を抱えています。
本稿では、甥・姪介護が増えている背景と制度の限界、そして「おひとり様」が元気なうちに備えるべき現実的な選択肢について整理します。
甥・姪による介護は、すでに「例外」ではない
子や配偶者がいない高齢者の数は今後も増加すると見込まれています。
中でも注目すべきは、「子も配偶者もいないが、甥・姪はいる高齢者」の増加です。将来的には、この層の要支援・要介護者が倍増するとの試算もあります。
実際の現場では、次のような形で甥・姪が関わるケースが少なくありません。
- 日常的な見守りや通院付き添い
- 入退院や施設入所時の手続き
- 住居の片付けや売却対応
- 財産管理や支払いの代行
当初は「できる範囲で」の関与だったものが、転倒や病気をきっかけに急速に負担が拡大することも多く、結果として介護の主担当になってしまう例も見られます。
育児・介護休業法は甥・姪を想定していない
働きながら介護をする人を支える制度として、育児・介護休業法があります。
しかし、介護休業や介護休暇の対象となるのは、原則として以下の親族です。
- 親
- 配偶者
- 子
- きょうだい
おじ・おばは対象外であり、結果として甥・姪は制度の谷間に置かれています。
会社の就業規則に独自の配慮がなければ、有給休暇を使い切った後は、欠勤や退職を選ばざるを得ないケースもあります。
さらに、甥・姪世代は50〜60代であることが多く、
・自分の親の介護
・自分自身の健康問題
と重なれば、「三重介護」状態に陥るリスクもあります。
制度が追いついていない現実を前提に、「無理を前提にしない介護設計」が不可欠です。
扶養義務はない、それでも引き受けてしまう理由
法律上、おじ・おばに対する甥・姪の扶養義務は原則としてありません。
介護の労務提供を含め、断ることは可能です。
それでも実際には、
- 子どもの頃に世話になった
- 親から頼まれた
- 他に引き受ける人がいない
といった理由から、引き受けてしまう人が多いのが現実です。
問題は、「気持ち」で始まった支援が、長期・重度の介護に変わったときに、
金銭的にも精神的にも、説明のつかない負担を一人で抱え込んでしまうことです。
早期に地域包括支援センターとつながる重要性
甥・姪介護で最も重要なのは、早い段階で公的制度につなぐことです。
特に有効なのが、地域包括支援センターへの相談です。
- 要介護認定の申請
- ケアマネジャーの選定
- 介護保険サービスの導入
- 福祉用具や住宅改修の相談
これらを早期に進めることで、「家族が全部抱え込む介護」から脱却できます。
おひとり様の場合、周囲が異変に気づきにくいため、
元気なうちから「一人暮らしであること」をセンターに伝えておくことも重要です。
任意後見契約という現実的な選択肢
近年増えているのが、おじ・おばと甥・姪の間で任意後見契約を結ぶ動きです。
任意後見契約では、将来判断能力が低下した際に、
- 医療・介護契約の手続き
- 施設入所の契約
- 財産管理や支払い
などを、あらかじめ定めた受任者が行います。
ポイントは次の通りです。
- 法的根拠が明確になる
- 他の親族への説明がしやすい
- 報酬や費用負担を事前に整理できる
さらに、判断能力があるうちから支援するために、
財産管理等委任契約とセットで結ぶケースも見られます。
これは「善意」に依存した介護から、「役割と責任を整理した支援」へ移行する動きと言えます。
結論:おひとり様介護は「気持ち」だけでは続かない
甥・姪による介護は、今後ますます増えていくと考えられます。
しかし、制度は追いついておらず、個人の善意に頼る構造のままでは限界があります。
だからこそ重要なのは、
- 公的介護保険を早期に使う
- 地域包括支援センターとつながる
- 任意後見契約など法的な枠組みを活用する
といった、「無理を前提にしない仕組みづくり」です。
おひとり様自身も、甥・姪の側も、
「元気なうちに話し合うこと」が最大のリスク対策になります。
参考
- 日本経済新聞
「〈ライフスタイル シニア〉おひとり様 甥・姪が介護 休業制度の対象外、長期化に懸念」 - 日本経済新聞
「任意後見契約を結ぶ動きも」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

