AIが会計・経理の現場に入ってから数年。
請求書処理や経費精算だけでなく、
月次決算・経営分析・不正検出まで、
あらゆる領域で生成AIが活用されるようになりました。
けれど、本当の意味での“AI経理”とは――
「人を減らす仕組み」ではなく、「人を高める仕組み」のことです。
このシリーズ「AI経理 実践ノート」では、
中小企業や経理担当者がすぐに実践できるAI活用法を、
5つのステップで紹介してきました。
第1回 中小企業で始める生成AI経理 ― 最初の一歩
AI導入の第一歩は、「どの業務をAIに任せるか」の整理から。
AIが得意なのは、「繰り返し」「整理」「文章」業務。
| 業務例 | AIの使いどころ |
|---|---|
| 経費精算・領収書処理 | AIが自動分類・摘要整形 |
| 規定・マニュアル作成 | AIが文案を自動生成 |
| 会議資料・報告書 | AIが要約・整文を自動化 |
そして大切なのは、「AIを使う前提でルールを決める」こと。
- 個人情報は入力しない
- 出力は必ず人が確認する
- AI利用履歴を残す
AIを入れることより、AIを“安全に続ける”仕組みを作ることが成功の鍵です。
第2回 AIが変える月次業務 ― チェックリストから提案書へ
AIは月次決算を“速く正確に”するだけでなく、
報告書を「読む資料」から「語る資料」に変えます。
🔹 実践プロンプト例
【役割】あなたは経理部門の月次レビュー担当です。
【内容】試算表をもとに、前月比で異常値を抽出してください。
【形式】①科目名②増減率③要因仮説④確認アクション
AIが「異常値+理由+行動」を示すことで、
月次報告はチェック表から経営提案書へ。
AIが数字を整え、経理が意味を語る。
月次は“締める作業”から、“考える仕事”に変わります。
第3回 AIが変える会計チェック ― 不正検出とリスク分析の最前線
AIは人間が見逃す「パターンの異常」を検出します。
| 不正リスク | AIの検出ポイント | 出力例 |
|---|---|---|
| 二重支払い | 同額・同日・同取引先 | 「仕入先Aに同額振込が2件」 |
| 架空経費 | 曖昧な摘要 | 「交際費に“業務協力費”多数」 |
| 不自然な仕訳 | 勘定科目の不一致 | 「会議費が通常月比+300%」 |
ChatGPTを活用すれば、
不正兆候を自動検出+日本語で解説するレポートも即座に作成可能。
AIが数字を見張り、人が誠実さを守る。
経理の“良心”を支えるのがAIの新しい役割です。
第4回 AIと経理倫理 ― 判断を委ねないためのルール設計
AI時代の経理で最も大切なのは「使い方の倫理」。
AIがどれほど賢くなっても、最終判断は人間です。
🔹 経理倫理三原則
1️⃣ AIに判断を委ねない
2️⃣ 出力の根拠を確認する
3️⃣ 利用範囲と責任を明示する
🔹 導入時に決めておくべきルール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 責任の所在 | AI提案の最終承認者を明確に |
| 入力制限 | 個人情報・社外秘は入力禁止 |
| 記録保存 | AI出力を監査証跡として保管 |
| 精度検証 | 月次でサンプル検証 |
| 利用報告 | 使用実績を定期共有 |
AIを「誰でも使えるツール」ではなく、
「責任を持って使う技術」にすることが、経理倫理の第一歩です。
第5回 AIで経営分析を描く ― ChatGPTが示す“未来の事業計画”
AIは過去を分析するだけでなく、未来を設計するツールです。
🔹 シナリオ生成プロンプト例
【役割】あなたは経営コンサルタントです。
【内容】今後3年間の経営戦略シナリオを3通り提案してください。
【形式】①現状分析②課題③シナリオA(保守的)④B(標準)⑤C(挑戦的)
AIは複数の経営シナリオを提示し、
経理はその根拠を読み解き、経営に“未来の選択肢”を示す存在へ。
AIがデータを分析し、経理が未来を語る。
経理は“報告者”から“戦略参謀”へ進化します。
実践チェックリスト ― 明日からできるAI経理の習慣
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 🔲 AIを使う業務を1つに絞ったか | 「経費精算」「報告書作成」など小さく始める |
| 🔲 機密情報を入力していないか | 社員名・取引金額などは削除 |
| 🔲 出力を人がレビューしているか | 二重確認をルール化 |
| 🔲 AI利用記録を残しているか | Excel・Teamsで履歴管理 |
| 🔲 AIが示した提案の背景を理解したか | 「なぜそう判断したか」を確認 |
まとめ:AIが数字を支え、人が信頼を築く
AIは経理の「作業」を減らすためのものではありません。
それは、経理が「考える時間」を取り戻すための技術です。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

