■ AIが「売れる仕組み」を作る時代へ
いま、広告や販促の世界ではAIの活用が急速に広がっています。
とくにオンライン販売(EC)を中心に、「AIマーケティング」という言葉を耳にする機会が増えました。
第1回で紹介した美容家電メーカーのAiロボティクスは、その代表例です。
自社開発したAIシステム「SELL(セル)」を使い、広告のデザイン、記事作成、配信、効果測定、
さらにはインフルエンサーの選定までを自動化。
人がやっていたマーケティングの工程を、AIがリアルタイムで最適化しています。
その結果、1人あたり売上高は同業の10倍。
AIが「売れる仕組み」を作り、人はその戦略を磨く。
これが、いまのAIマーケティングの本質です。
■ AIマーケティングの基本構造は「3ステップ」
難しく聞こえるAIマーケティングも、構造はとてもシンプルです。
ポイントは次の3つです。
🧩 ステップ1:データを集める
まずは「どんなお客様が、何を見て、どう反応したか」というデータを集めます。
これがAIの“材料”になります。
たとえば、
- SNS広告をクリックした人の年齢層や地域
- メルマガを開封した人の時間帯
- 購入者の再訪率や離脱率
こうした情報をGoogle広告・Instagram広告・自社ECなどから統合します。
データがつながるほど、AIの分析精度は上がります。
🧮 ステップ2:AIで分析・自動化する
集めたデータをもとに、AIが「どんな広告がどの層に刺さるか」を自動で判断します。
Aiロボティクスの場合は、
一度に数百種類の広告バナーをAIが作成し、反応率を見て最適な広告を自動配信。
つまり、AIがテスト→評価→改善を人の代わりに繰り返してくれるのです。
中小企業でも、ChatGPTやCanvaのAI機能を使えば、広告文やデザインの自動生成が可能です。
💡 ステップ3:人が“戦略”を磨く
AIが得意なのは「数値から最適解を見つけること」。
しかし、ブランドの方向性やメッセージの一貫性を考えるのは人の仕事です。
AIが示すデータをもとに、
「どの顧客層を中心にするか」「次の打ち手をどうするか」
といった“経営の意思決定”を磨いていく。
AIはあくまで「ナビ」、ハンドルを握るのは人です。
■ 中小企業でもできる!AIマーケティングの始め方
「大企業の話でしょ?」と思うかもしれませんが、
実は中小企業でもすぐに取り入れられる方法があります。
以下は、私が特におすすめする3つのステップです。
① ChatGPTで「広告文」「キャッチコピー」を作る
例:「30代女性に響くヘアケア商品のキャッチコピーを10案ください」
→そのままSNS広告やチラシに活用できます。
スピードも精度も桁違いです。
② CanvaやAdobe ExpressでAIデザインを活用
Canvaの「マジックデザイン」機能では、
文章や商品名を入力するだけで、複数の広告バナー案を自動生成。
Aiロボティクスの“SELL”を小規模に実践するような体験が可能です。
③ Google広告の「自動最適化」機能をONにする
Google広告やMeta広告(Facebook・Instagram)には、
AIがクリック率を学習し、最も効果的な配信をしてくれる設定があります。
これをONにするだけで、AIが学習して勝手に精度を高めてくれます。
■ “人とAIの分担”が成果を左右する
AIマーケティングは、「AIが全部やる」わけではありません。
むしろ、成功している企業ほどAIと人の役割分担が明確です。
| 役割 | AIが得意なこと | 人が得意なこと |
|---|---|---|
| 分析 | データの整理・傾向分析 | 顧客心理の読み取り |
| 企画 | 画像生成・コピー提案 | コンセプト設計・方向性判断 |
| 改善 | テストの自動化 | 意思決定・ストーリーデザイン |
Aiロボティクスのように、
「AIが広告をまわし、人が戦略を描く」という形が理想です。
■ “売る人”より“仕組みを作る人”へ
かつては営業力が会社の成長を左右しました。
しかし今は、AIで顧客を“自動的に集める仕組み”を作れるかどうかが勝負です。
そのために経営者が意識すべきは、
「AIをどの業務に組み込み、何を人が担うのか」を決めること。
つまり、“AI活用の設計者”になることです。
■ 次回予告
第4回 人材を減らさず成果を上げる ― AI時代の組織デザイン
AIを導入すると、人は何をすればいいのか?
“人×AI”の共存組織をどう作るかを、事例とともに考えます。
出典:2025年10月9日 日本経済新聞朝刊
「販促にAI、1人10倍稼ぐ 美容家電のAiロボ」より引用・再構成
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
