■ 「AIを導入すれば儲かる」わけではない
前回取り上げた美容家電メーカーAiロボティクス。
わずか27人の従業員で、同業の10倍の生産性を誇る。
広告・販促・データ分析をAIが担い、人は企画やブランド戦略に集中する。
驚異的な効率経営の背景には、単なる「AI導入」ではなく、経営そのものをAIに合わせて設計したことがあります。
世の中では「AIを入れたのに成果が出ない」という声も少なくありません。
では、AIで稼ぐ会社とそうでない会社の差はどこにあるのか。
今日はその要諦を「経営を変える3つのポイント」として整理します。
■ ① AIを“労働力”ではなく“経営資源”として扱う
多くの企業はAIを「業務効率化ツール」として導入します。
確かに、文書作成や経理処理などの作業を自動化すれば時間は浮きます。
しかし、Aiロボティクスのように飛躍的な成果を上げる企業は、
AIを「労働力の代替」ではなく「経営資源」として位置づけています。
たとえば、彼らが開発した広告運用AI「SELL」は、
人が広告を“作る”のではなく、“AIが作った案を経営判断で選ぶ”。
AIは手足ではなく、経営意思決定のための情報生成装置なのです。
AIの真価は、「人の仕事を奪う」ことではなく、
「人の意思決定を加速させる」ことにあります。
この発想を持てるかどうかが、最初の分岐点です。
■ ② データを“現場で閉じない”
AIを活かすには、データが流れる仕組みが不可欠です。
Aiロボティクスは、ECサイトやSNS広告、顧客行動データを統合してAIに学習させ、
「誰が、どんな広告を見て、何を買ったのか」を即時に反映しています。
その結果、広告効果をリアルタイムで最適化できるのです。
一方、多くの企業では、営業・経理・マーケティングがそれぞれ別のシステムを使い、
データが分断されています。
AIは“点”の情報ではなく、“線”でつながるデータから価値を生みます。
データを経営の血流として流せるかどうか――これが、二つ目の鍵です。
■ ③ 「人×AI」の最適バランスを探る
AIが進化するほど、「人は何をすべきか」が問われます。
Aiロボティクスの龍川社長はこう語ります。
「AIを武器に、ワンピースやドラゴンボールのような個性の集団を目指している。」
この言葉の裏には、AIが均一化した仕事を担い、人が創造性と感性を発揮するという設計思想があります。
AIを導入しても、組織が「命令待ち」のままでは成果は出ません。
AIが作った選択肢の中から“何を選ぶか”を判断できる人材が必要です。
つまり、AI時代の組織では「作業スキル」よりも「判断スキル」が重要になります。
AIをどう使いこなすか、その設計までを人が担う。
このバランス感覚が三つ目の条件です。
■ 経営にAIを入れるとは、経営を再設計すること
AIの導入は「ツールの話」ではなく、「経営の構造改革」です。
業務フロー、組織設計、意思決定の流れ――
これらをすべてAIを前提に再構築してこそ、“AIで稼ぐ会社”が生まれます。
中小企業であっても、今はChatGPTや生成AIの活用で、
広告文の作成、経理業務のチェック、顧客管理の自動化などが可能です。
重要なのは、「AIをどこに組み込み、どこを人が担うか」を見極めること。
経営者自身がその設計図を描けるかどうか。
それが、AI時代の最大の経営力です。
■ 次回予告
第3回 中小企業が学ぶべき「AIマーケティング」戦略
「広告をAIに任せる」とは、実際にどんな仕組みなのか?
Aiロボティクスの「SELL」を参考にしながら、
中小企業がすぐに実践できるAIマーケティングの手法を紹介します。
出典:2025年10月9日 日本経済新聞朝刊
「販促にAI、1人10倍稼ぐ 美容家電のAiロボ」より引用・再構成
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
