副業を始めた人がまず迷うのが「何が経費になるのか」という問題です。
スマホ代、パソコン、交通費、書籍、外注費……副業は本業と違い、自分で必要な支出を判断し、帳簿に記録していく必要があります。
しかし、経費の判断は“感覚”ではなく、税法上の一定の考え方に基づいて行うものです。
第2回では、副業の経費計上の基本ルール、按分(あんぶん)の考え方、帳簿のつけ方、電子帳簿保存法対応まで、実務で迷わないポイントを整理します。
1. 経費の基本ルール:「副業のために使ったかどうか」
経費は 「その収入を得るために必要だった支出かどうか」 が基準です。
私生活と区別できるか、因果関係が説明できるかで判断します。
【経費にできる例】
- 副業用に購入したパソコン・タブレット
- スマホ代・通信費(按分)
- ChatGPTやCanvaなどのサブスク
- 取材・撮影に必要な交通費
- 副業に関連する書籍・教材
- 打ち合わせの飲食費(内容の記録必須)
- 外注費(デザイン・動画編集など)
【経費にできない例】
- 私的な買い物
- 家族の外食費
- 明確な業務関連性のない家具や家電
- “なんとなく”使ったもの(根拠不明)
重要なのは、「副業に必要だった合理的な根拠」を説明できるかという点です。
2. スマホ代・通信費は「按分」が必須
副業と私生活で併用している支出は、使用割合に応じて分ける“按分(あんぶん)”が必要です。
【按分の例】
- スマホ代:副業での利用が30% → 30%を経費
- 自宅家賃:仕事部屋として4畳/全体16畳 → 25%を経費
- 電気代:仕事で使う時間割合で算出
- 車:仕事利用が月50% → 50%を経費
按分は明確な公式があるわけではなく、
「客観的に説明できる」割合であればOKです。
※ ただし、家賃の按分は“使用実態が明確な場合”に限られます。
3. カフェ代は「目的」と「記録」がセットで必要
副業で作業をするためのカフェ代は、必要性があれば経費になります。
ただし、最も誤解されやすい費用のひとつです。
【経費にできるケース】
- 明確な仕事作業(執筆・編集・打ち合わせ)
- 打ち合わせ相手がいる場合(人数・目的を記録)
【経費にできないケース】
- 気分転換
- なんとなく立ち寄った
- 作業目的が不明確
- 私用と判断される支出
領収書・レシートには、
「何の作業に使ったか」をメモする習慣が重要です。
4. パソコン・機材の扱い:10万円以上は“資産”に注意
パソコン・カメラ・レンズなどは金額によって扱いが異なります。
【10万円未満】
→ その年の経費に全額計上OK
【10万円以上】
→ 原則は“減価償却”(数年に分けて経費)
【青色申告の場合】
→ 30万円未満は「少額減価償却資産」として全額経費にできる(年300万円まで)
副業が軌道に乗ってきたら、青色申告への切り替えは節税効果の面で非常に有利になります。
5. 帳簿のつけ方:家計簿ではなく「事業用帳簿」
帳簿は、
- 日付
- 内容
- 支出先
- 金額
- 副業との関連
がわかるように整理する必要があります。
方法は次の3つのいずれでも構いません。
(1) エクセルや手書き帳簿
シンプルだが、手間がかかる。
(2) 会計ソフト(freee・やよい・マネーフォワード)
- レシートの自動読み取り
- 銀行口座・カード明細の自動連携
- 仕訳の自動提案
など、副業者との相性が非常に良い。
(3) スマホアプリで簡易帳簿
外出が多い副業の人向け。
帳簿は「毎月まとめる」のがストレスが少なく、おすすめです。
6. レシート管理と電子帳簿保存法の“最低限ライン”
副業でレシート・領収書を保管する際は、
電子データ保存(スキャン)が認められており、紙の保管義務はありません。
ただし、
- 改ざん防止
- 日付・金額の正確性
の確保が必要なため、スマホアプリや会計ソフトの「レシート読み取り機能」を使うのが便利です。
電子帳簿保存法は全体的に複雑ですが、副業レベルで最低限押さえるべき点は次の2つです。
【副業者が押さえるべき最低限のポイント】
- 電子データでも紙でもどちらで保存しても良い
- スクショ・写真を撮って保存し、紐づけしておけば十分対応可能
副業の規模であれば、特別なシステム導入は不要です。
7. 経費は“節税の武器”ではなく“正しい利益計算”のためのもの
よくある誤解ですが、経費は「節税のために使う」ものではありません。
本来は 利益を正確に把握するため のものです。
- 使った分だけ利益が減る
- 利益が減れば税金も減る
- しかし、無駄遣いすると“手取り”は増えない
重要なのは、
「必要なものだけに絞ること」
です。
副業が軌道に乗るほど、経費の付き合い方で手取りが大きく変わります。
結論
副業の経費で押さえるべきポイントは次の5つです。
- 「副業のために必要だったか」が判断基準
- スマホ代・家賃などは按分が必須
- カフェ代は目的と記録をセットで残す
- 10万円以上の備品は減価償却(青色申告なら30万円特例)
- 帳簿は会計ソフトを使うと圧倒的に楽
経費の判断に慣れてくると、確定申告の難易度が一気に下がり、副業の健全な運営にもつながります。
次回の第3回では、
「副業の確定申告と住民税の選択(副業バレ対策)」
をさらに詳しく解説します。
出典
・国税庁「必要経費の解説」
・国税庁「減価償却の基本」
・総務省「電子帳簿保存法」
・主要クラウド会計ソフトの公開資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
