全7回にわたり、相続税の土地評価で見落としやすいポイントを解説してきました。
土地評価は金額が大きく、評価を誤ると
・相続税を払いすぎる
・逆に過少申告となり追徴課税を受ける
という重大な結果を招きます。
本記事では、シリーズ全体の内容を踏まえつつ、
「相続税の土地評価で失敗しやすい10のパターン」
を一覧化して整理します。
実務の重要ポイントを一度に振り返る総集編です。
■失敗①:路線価=時価と思い込む
路線価はあくまでも「相続税のための基準」。
売買価格(時価)とはズレるのが通常です。
時価との乖離を意識しないと、過大・過少の両方のリスクがあります。
■失敗②:「利用価値が低い土地=すぐ評価減」と誤解
臭気・騒音・ごみ集積所など、生活環境の不快感だけでは評価減の要件を満たしません。
“周囲の宅地と比べて明確に取引価額に影響があるか”が重要です。
■失敗③:セットバック部分を評価に反映しない
道路後退部分は価値ゼロですが、面積の計算を誤る例が非常に多いです。
道路中心線・幅員・市区町村の道路台帳などの確認が必須です。
■失敗④:私道の持分を評価しない/逆に過大評価してしまう
私道・位置指定道路は評価が難しい分野。
利用状況・通行権・修繕負担などにより価値が大きく変わるため、持分の扱いを誤ると税額が狂います。
■失敗⑤:造成工事費控除を過剰に見積もる
高低差・崖地の評価は“必要工事費”が根拠。
専門業者の見積書なしに概算で評価減すると、税務署から否認されるケースが多く見られます。
■失敗⑥:無道路地は常に70%と誤解する
70%はあくまで基本的な目安であり、
通行権の有無・周囲の状況により、
それ以上にも以下にもなり得ます。
ルールを固定的に考えるのは危険です。
■失敗⑦:旗竿地の評価減を過大に期待する
旗竿地であっても、
・通路幅が十分
・車両の出入りが可能
・整形地に準じる利用価値
が認められれば、評価減は小さくなります。
形状だけで判断すると誤りにつながります。
■失敗⑧:借地権・底地の契約内容を確認しない
旧借地法/借地借家法のどちらが適用されるか、
更新料・承諾料の慣行、地代の水準など、
契約内容を見ずに評価するのは非常に危険。
専門家でも間違いやすい領域です。
■失敗⑨:実測図や現況を確認せず評価する
評価は図面ではなく“現況”が基本。
公図が古いまま/境界が不明確/測量していない
といった状態では、評価誤りが発生する可能性が高まります。
■失敗⑩:補正項目の重複適用にもれがある
不整形地・間口狭小・奥行価格補正などは複雑で、
「適用できるのにしていない」
「重複してはいけないものを重複している」
といったミスが多くあります。
補正の確認だけで評価額が数百万円単位で変わることもあります。
■まとめ:総合的に評価する姿勢が重要
相続税の土地評価で特に重要なのは、
単一の要素ではなく“複数の要素の組み合わせ”で価値が決まる
という点です。
- 接道状況
- 権利関係
- 地形
- 利用価値
- 市場価格
- 法令上の制限
これらを総合的に判断しなければ、“適正な評価額”には到達しません。
結論
土地評価は、価格の大きさと個別性の高さから、誤りが起きやすい分野です。
路線価を過信したり、形状だけで評価減を期待するのではなく、
・現地調査
・資料確認(契約書、道路台帳、測量図など)
・補正項目のチェック
を丁寧に行うことが、正しい評価につながります。
また、評価額が大きくなる土地ほど、
税理士・不動産鑑定士・土地家屋調査士など、複数専門家の意見を踏まえることが、リスク回避の観点からも有効です。
土地評価は奥が深く、落とし穴も多いですが、丁寧な確認と適切な根拠づくりにより、適正な相続税申告につながります。
出典
・国税庁「財産評価基本通達」
・国税庁「宅地の評価」関連通達
・建築基準法(道路・建築制限関連)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
