相続した土地が「道路に接していない」「細長い通路の奥にある(旗竿地)」といった形状の場合、
「使いにくい土地だから評価が下がるはず」
と考える方は多いと思います。
たしかに、無道路地(むどうろち)や旗竿地は一般的に利用価値が低く、売買価格も下がりやすい特徴があります。しかし、相続税評価となると、見た目の印象だけで評価減が認められるわけではありません。
本記事では、無道路地・旗竿地の評価で起こりやすい誤解と、正しい評価の考え方をわかりやすく解説します。
1. 無道路地とは?旗竿地とは?
まずは土地の分類を整理します。
■無道路地(むどうろち)
建築基準法上、「幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していない土地」。
建物の建築ができないため、利用価値が大きく制限されます。
特徴:
- 再建築不可となる場合が多い
- 相続の際に評価減の余地が大きい
- 隣地から通行権を得られると状況が変わる
■旗竿地(はたざおち)
道路に面した細長い“竿”の部分の奥に“旗”の部分がある土地。
特徴:
- 通路部分が長いと車両の出入りが困難
- 採光・通風が悪くなる傾向
- 一般に市場価格は整形地より割安
ただし、旗竿地=必ず評価が下がるではありません。
2. 無道路地の評価は慎重に行われる
無道路地は建築基準法上の建築要件を満たさないため、利用制限が非常に大きい土地です。
■無道路地の典型的な評価方法
財産評価基本通達では、
「近隣の宅地の価額 × 70%」
を目安とするケースが多いとされています(地域により調整あり)。
しかし、これはあくまで“実務上の目安”であり、以下の事情で評価が変わります。
✔ 通行権が設定されているか
地役権などにより建築可能になる場合は70%より高い評価になることがあります。
✔ 隣地の買い取りが困難かどうか
再建築不可のまま利用せざるを得ない場合は価格がさらに下がることもあります。
3. 旗竿地の評価で発生しやすい“勘違い”
❌ 勘違い①:旗竿地は必ず大幅に評価減できる
→ 通路幅が十分で、車の出入りもスムーズなら、整形地と同程度に評価されることもあります。
❌ 勘違い②:竿の部分は全部「価値ゼロ」
→ 通路部分も土地評価の対象です。
ただし、竿部分には「奥行価格補正」「間口狭小補正」が適用されることがあります。
❌ 勘違い③:土地が不整形なら評価減が当然
→ 補正率は細かく決まっており、
“どれだけ不利なのか”を定量的に判断する必要があります。
4. 実務で使われる補正項目
旗竿地や不整形地の評価では、財産評価基本通達に基づき以下の補正が適用されることがあります。
■① 奥行価格補正
奥行が長すぎたり短すぎる土地に適用。
旗竿地の竿部分はこの補正の対象になりやすい。
■② 間口狭小補正
道路に接する幅が2メートルに近い土地など、間口が狭い場合に適用。
■③ 不整形地補正
地型が三角、L字、旗竿など「整形でない」場合に適用。
■④ 無道路地補正
建築不可の土地に適用される最も大きな補正。
注意:
補正が重複適用できる場合とできない場合があります。
5. 評価を誤らないために必要な資料
無道路地・旗竿地の評価には次の資料が不可欠です。
- 公図
- 測量図(できれば現況測量)
- 道路判定(建築基準法の確認)
- 地役権の設定状況
- 現地写真
- 不動産業者の評価意見
土地の形状・接道状況・通行権の有無は、現地確認なしで正確に評価することは困難です。
6. 無道路地・旗竿地評価が相続税に与える影響
評価額は以下のように大きく変わる可能性があります。
例:周辺宅地の評価額 → 3,000万円
・旗竿地補正 90% → 2,700万円
・不整形地補正 80% → 2,160万円
・無道路地補正 70% → 1,512万円
条件によっては 1,500万円以上の差 になることもあります。
結論
無道路地や旗竿地は形状だけを見ると「価値が低い土地」と思いがちですが、相続税評価では細かい補正項目や法令上の条件に基づいて評価されます。
・旗竿地=必ず評価減
・無道路地=必ず70%
という単純な評価は誤りであり、
接道状況・通行権・通路幅・造成の可能性など、個別事情の確認が不可欠です。
相続税評価額は大きな金額になり、誤ると過大申告または過少申告につながります。
疑問がある場合は、税理士や不動産鑑定士、土地家屋調査士などの専門家に相談しながら、正確な評価を目指すことが大切です。
出典
・国税庁「財産評価基本通達」
・国税庁「宅地の評価」関連通達
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
