🏫 義務教育に入った「金融教育」、でも社会人には届いていない
2022年4月から、小・中・高校で「金融教育」が正式にカリキュラムに組み込まれました。
にもかかわらず、社会人を対象とした日本経済新聞のアンケートでは、43%が「金融教育を受けたことがない」と回答しています。
大学生や社会人、さらには定年を迎える世代にとって、体系的に学ぶ機会が乏しい現実が浮き彫りになりました。
「お金の話はなんとなくタブー」「学校では習わなかった」「ネットの情報が信頼できない」――
こうした声が、世代を問わず多く聞かれます。
💡 “投資の前に” 家計を整える力こそ金融教育の第一歩
都内の会社員・滝口史也さん(33)は、高校時代の修学旅行でリーマン・ショックを目の当たりにし、金融に関心を持ちました。
社会人3年目で投資を始め、CFD取引で損をした経験から「地道に勉強するようになった」といいます。
「まずは日々の家計をしっかりやりくりできるようになること。
そのうえで資産形成や資産防衛を考えるべきだと感じた」
この言葉は、金融教育の本質を突いています。
投資は“お金の使い方を知っている人”が成果を出せる世界。
家計管理・貯蓄・保険・税金など、生活に密着した基礎知識の上に資産運用が成り立ちます。
📊 学びのタイミングと手段の違い
アンケートによると、初めて金融教育を受けた時期は以下の通りです。
- 受けたことがない … 43%
- 社会人 … 40%
- 大学生・大学院生 … 10%
- 小~高校 … 4%
- 定年後 … 2%
一方で、2022年の制度改正以降に学校で学んだ10代では、80%が「金融教育を受けた」と回答しています。
世代間で明確な差が生じています。
社会人では「会社のライフプランセミナー」「証券会社のセミナー動画」「YouTubeや書籍での独学」など、
“自己流”の学びが中心でした。
💰 金融リテラシーが「損失への耐性」を分ける
金融リテラシーの高低は、投資行動の違いとしても表れます。
たとえば「100万円の投資で、いくら損したら売るか?」という問いでは、
リテラシーの高い層の25%が「いくらでも保有を続ける」と回答。
一方で、リテラシーの低い層は14%にとどまり、
中には「1万円の損でも売る」と答えた人が10%いました。
つまり、“損失への耐性”は知識の差でもあるのです。
感情ではなく理屈で投資判断ができるか――そこに教育の力が問われます。
🔁 これからの「学び直し」は、家庭と職場から
学校教育で始まった金融教育は、まだ社会人層に浸透していません。
これからは、家庭・職場・地域での「学び直し(リスキリング)」が重要になります。
- 家庭では、子どもと一緒に“おこづかい”や“貯金”を話題にする。
- 会社では、ライフプランセミナーや退職金・年金制度を活用して学ぶ。
- 地域では、FP・税理士による市民講座を開く。
こうした日常の中での対話が、「お金の話をしてもいい社会」を作ります。
✍️ 税理士・FPの立場から見えること
税務やライフプラン相談の現場でも、
「資産形成の前に家計簿のつけ方がわからない」「ネット情報が信用できない」という声が少なくありません。
金融教育は、“正しい知識”を持って選択できる力を育てるものです。
制度や商品を覚えることよりも、「自分に必要かどうか」を判断できるかが大切です。
SNSや動画の情報に惑わされず、信頼できる専門家や公的情報源を基に学ぶ姿勢が求められます。
📘参考資料
・日本経済新聞(2025年10月16日朝刊)
「資本騒乱 さらば運用貧国 アンケートから(下)金融教育『受けたことない』43%」
・文部科学省「金融教育の充実に向けた取り組み」
・金融広報中央委員会「金融リテラシー調査」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

