「解散水準」が3社に1社という現実──PBR1倍割れが示す日本企業の課題

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日本株は日経平均株価・TOPIXともに歴史的な高値圏で推移しています。一見すると日本企業全体の評価が大きく高まっているようにも見えますが、企業価値の中身に目を向けると、必ずしも楽観できない現実が浮かび上がります。
その象徴が、PBR1倍割れ企業の多さです。現在でもTOPIX構成銘柄の約3分の1がPBR1倍未満、いわゆる「解散水準」にあるとされています。この比率は欧米市場と比べて際立って高く、日本企業が抱える構造的課題を映し出しています。

PBR1倍割れとは何を意味するのか

PBRは株価を1株あたり純資産で割った指標で、企業が保有する資産に対して市場がどれだけの価値を認めているかを示します。
PBRが1倍を下回るということは、理論上、会社を清算して資産を分配した方が株主価値が高いと市場が判断している状態です。企業活動を継続して利益を生み出すよりも、解散した方が合理的とみなされている点に、この指標の重みがあります。

日本でPBR1倍割れが多い理由

日本企業にPBR1倍割れが多い背景として、いくつかの共通項が指摘されています。

第一に、過剰な現預金保有です。収益力に対して手元資金が多すぎる場合、資本が十分に活用されていないと評価されます。安全志向の経営が、結果として資本効率の低さにつながっているケースは少なくありません。

第二に、業界構造そのものの問題です。化学、紙・パルプなどの分野では、製品差別化が難しく、過当競争によって収益性が抑えられがちです。加えて、中国をはじめとする海外の供給過剰も、長期的な利益成長への期待を低下させています。

第三に、事業の広げすぎです。複数事業を抱えるコングロマリット企業では、個々の事業の収益性が見えにくく、経営資源が分散していると評価されやすくなります。

欧米企業との決定的な違い

米国や欧州では、PBR2倍以上の企業が多数を占めています。これは単なる株価水準の違いではなく、資本の使い方に対する考え方の差とも言えます。
欧米では、成長投資、M&A、自社株買いなどを通じて、余剰資本を積極的に株主価値向上へ振り向ける姿勢が一般的です。一方、日本では内部留保を重視する経営慣行が根強く、結果として市場からの評価が伸び悩む構造が続いてきました。

変わり始めた日本企業の姿勢

もっとも、こうした状況に対する危機感は企業側にも広がっています。近年では、中期経営計画においてPBR1倍超を明確な目標として掲げる企業が増えてきました。
非中核事業の切り離し、上場子会社の整理、ROE改善を意識した資本政策など、企業価値向上を意識した動きも目立ちます。これらは、東京証券取引所が求める資本効率改善の流れとも軌を一にしています。

投資家が見ているポイント

現在の日本株市場では、単なる割安修正だけでなく、「稼ぐ力」をどう高めるかがより厳しく問われています。
成長投資に踏み出せるか、事業ポートフォリオを見直せるか、株主還元を含めた資本配分を合理的に説明できるか。こうした点が、PBRの改善と株価の持続的上昇に直結する局面に入っています。

結論

PBR1倍割れ企業が3社に1社という現実は、日本株の伸びしろを示す一方で、構造改革の遅れを突きつけています。
株価指数が最高値を更新しても、個々の企業が資本効率と収益力を高めなければ、本当の意味での評価向上にはつながりません。
今後、日本株が一段高を実現できるかどうかは、PBR1倍割れ企業がどれだけ本気で稼ぐ力の改善と株主価値向上に取り組めるかにかかっていると言えそうです。

参考

・日本経済新聞「解散水準」3社に1社 PBR1倍割れ、日本突出
・東京証券取引所 コーポレートガバナンス・資本効率に関する開示資料
・各社中期経営計画公表資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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