2010年代以降に生まれた「α世代」は、世界で20億人を超える規模に達しています。これは約100年前の世界人口に匹敵する人数であり、単なる若者世代の一つとして捉えるにはあまりにも大きな存在です。
この世代は、人工知能(AI)が社会に深く組み込まれ、世界人口が100億人規模に達する転換期を生きています。人口増加の終着点と技術革新の加速が同時に起きる時代に、社会の中核を担うことになります。
α世代はしばしば「未来を変える世代」「希望の世代」と語られます。しかし本質的には、希望を一方的に託される世代というよりも、制度疲労を起こした世界を引き受けて生きる世代だといえるでしょう。本稿では、α世代とは誰なのか、その誕生が人類史の中でどのような意味を持つのかを整理します。
α世代の規模と位置づけ
α世代は、おおむね2010年から2024年ごろに生まれた世代で、現在は16歳以下です。全員が21世紀生まれであり、幼少期からデジタル端末やインターネット、AIが身近にある環境で育ってきました。
人数の多さは特に注目すべき点です。出生率の高いアフリカ諸国が世界全体の約3割を占め、インド、中国、ナイジェリア、パキスタンなどが主要な構成国となっています。一方、日本のα世代は約1400万人にとどまり、世界全体では少数派です。
21世紀後半に世界人口が減少へ転じると予測される中で、α世代は「人口拡大の最終世代」であると同時に、「人口減少社会を最初に本格的に生きる世代」でもあります。
この人口構造の転換は、経済成長の前提、社会保障制度、都市のあり方、国家運営の考え方にまで影響を及ぼします。α世代は、膨張を続けてきた資本主義社会のピークと、その後の再設計の両方を経験する世代だといえます。
AIネーティブという質的な違い
α世代を語るうえで最大の特徴は、「AIネーティブ」である点です。
上の世代がAIを「後から使い始めた」のに対し、α世代は「AIがある世界」を前提として成長しています。調べものや学習、創作、進路の検討に至るまで、AIは特別な存在ではなく、日常の延長線上にあります。
注目すべきなのは、α世代がAIを無条件に信頼しているわけではない点です。多くの若者が、AIには誤りや限界があることを理解しており、違和感を覚えた場合には自分で調べ直す姿勢を持っています。
AIを「答えをくれる存在」ではなく、「考えるための相棒」として扱う感覚は、これまでの世代にはあまり見られなかった特徴です。この違いは、学び方や働き方、意思決定のあり方を大きく変えていきます。
成長を前提としない時代を生きる
一方で、α世代が直面する社会環境は決して楽観できるものではありません。
世界経済の潜在成長率は低下傾向にあり、格差や分断、排斥が各国で顕在化しています。民主主義や資本主義が抱えてきた矛盾は、十分に解消されないまま次世代に引き継がれています。
α世代は、「右肩上がりの成長」を当然視できない最初の本格的な世代です。成長が鈍化する中で、分配のあり方、社会保障の持続性、環境制約との調整といった問題が一気に表面化します。
それでも多くの若者が未来に一定の希望を見いだしているのは、科学技術の進化に対する信頼があるからです。技術が万能ではないことを理解したうえで、それでも突破口を託す姿勢は、楽観でも悲観でもない、非常に現実的なものだといえます。
「選ばれた世代」ではなく「引き受ける世代」
α世代は、人類史において桁外れの影響力を持つ可能性があると指摘されています。しかしそれは、特別に恵まれているからではありません。
人口規模が大きく、技術変化が激しく、制度疲労が限界に達した時代に、社会の中心を担う立場に立つからです。
重要なのは、α世代に過度な期待や責任を押し付けないことです。
世界を変える役割を若者だけに委ねるのではなく、上の世代が制度を点検し、調整し、共に考える姿勢が求められます。
結論
α世代は、未来を夢見るだけの世代ではありません。
人口、技術、経済、環境といった人類史的な転換点を引き受けながら、自らの手で社会の次の形を模索する世代です。
彼らはすでに頂に立っている存在ではなく、これから頂を形づくっていく途中にいます。その道は決して平坦ではありません。だからこそ、α世代を遠くから評価するのではなく、同じ時代を生きる当事者として向き合うことが、これからの社会にとって重要になります。
本シリーズでは、α世代の価値観や行動、そして彼らが直面する課題を通じて、私たち自身の社会のあり方を問い直していきます。
参考
・日本経済新聞「α-20億人の未来」特集
・日本経済新聞「自由な世界、自ら描く α世代1123人の声」
・日本経済新聞「人類100億時代、命運握る」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

