REITシリーズ 第8回「REITの分配金はどこから生まれる? ― 内部成長・外部成長を完全理解」

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REITの最大の魅力のひとつが「安定した分配金」です。株式配当と比べても利回りが高めで、インカム投資を志向する投資家から特に支持されています。

しかし、「なぜREITの分配金は安定しているのか」「どのように増えるのか」という点は、意外と理解されていないことが多いものです。REITの収益構造を理解することで、どのREITが“長く持てる銘柄”なのか、その見極めが大きく変わります。

そこで今回は、REITの分配金の仕組みと、収益成長を支える2つの柱である内部成長外部成長について整理します。

● REITの分配金はどのように決まる?

REITの分配金は、主に次の3つから構成されます。

  1. 賃料収入(家賃)
  2. 物件売却益(臨時的)
  3. その他収益(駐車場・広告・付帯サービスなど)

このうち、最も安定的なのは「賃料収入」です。
REITは利益の90%以上を分配すれば法人税がかからないため、得られた利益の大部分は投資家に還元される仕組みになっています。


● 分配金の源泉「内部成長」とは

内部成長とは、REITが保有する既存物件の価値や収益を高めることで、分配金を増やす成長のことです。

具体的には次の3つがあります。


賃料の増額(リニューアル・新規契約)

テナントが契約を更新するタイミングで賃料改定を行い、

  • エリアの需要増
  • 物件価値の向上
  • 競争環境の変化
    などを背景に賃料が上がれば、分配金が増えます。

物流REITや住宅REITでは、近年この賃料改定が堅調に進んでいます。


稼働率の向上

空室が埋まれば、その分だけ賃料収入が増えます。
特にオフィスREITでは、空室率の改善が分配金の大きな押し上げ要因になります。


運営効率化(コスト削減)

  • 修繕計画の最適化
  • 管理費の見直し
    などにより運営費を抑えることで、収益が増えます。

内部成長は、“REITが持つ物件の力を最大限発揮させる成長”で、長期安定運用の基盤になります。


● 第二の柱「外部成長」とは

外部成長とは、新たな物件を取得して規模を拡大することで収益を伸ばす成長モデルです。

REITが拡大していくためには欠かせない要素で、特に大規模REITでは外部成長の巧拙が差別化要因になります。


外部成長の仕組み

  1. 新しい物件を取得
  2. 賃料収入が増える
  3. 投資口数を増やしながら規模拡大
  4. 分配金の安定性が高まる

REITが規模拡大を行う際、多くは「公募増資」で資金を調達します。
しかし、ここで重要なのが前回学んだ「NAV倍率」です。


● NAV倍率と外部成長の関係

外部成長がうまく進む条件は、

NAV倍率が1倍以上であること。

理由は、NAVが1倍未満だと、

  • 市場価格より高い資産を割安で売る
  • 既存投資家の価値が希薄化する
    ため、外部成長が評価されないからです。

逆に1倍超であれば、

  • 増資が評価される
  • 物件取得がプラスに働く
    ことで成長サイクルが回りやすくなります。

● 分配金の“持続力”を見極めるポイント

分配金が安定しているREITには、いくつかの共通点があります。


■ 内部成長がしっかりしている

  • 賃料改定率がプラス
  • 稼働率が高い
  • 運営費を適切にコントロール

内部成長が強いREITは、景気変動にも比較的強いです。


■ 外部成長を無理に進めない

NAVが低い状態での増資は危険です。
最近は、

  • 自己投資口の買戻し
  • 低利回り物件の売却
    を通じて“筋肉質な成長”を目指すREITも増えています。

■ バランスの良い資本政策

  • LTV(借入比率)が無理のない水準
  • 長期固定金利比率が高い
  • 金利上昇に耐性がある

これらは分配金の安定性に直結します。


結論

REITの分配金は、既存物件の価値向上による内部成長と、新たな物件取得による外部成長の両輪で生まれます。

内部成長がしっかりしているREITは、景気に左右されず安定した分配金を提供できます。一方、外部成長は規模拡大のための重要な要素ですが、NAV倍率や金利環境といった“市場との対話”が必要です。

分配金の安定性・成長性を見極めるためには、

  • 賃料改定
  • 稼働率
  • 管理コスト
  • NAV倍率
  • LTV
    といった複数の指標を総合的に見ることが重要です。

次回の第9回では、REIT投資のリスク管理について、金利上昇局面や相場下落時の対応を中心に整理します。


出典

・REIT各社決算資料
・金融庁・国交省REIT関連資料
・不動産鑑定評価資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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