コロナ禍で大きく落ち込み、その後急速に回復した代表的な資産がホテルです。インバウンド(訪日外国人客)の増加や国内旅行の需要回復によって、ホテル市場はここ数年で劇的に変化しました。
そして、この変化を最もダイレクトに反映するのが「ホテルREIT」です。稼働率や客室単価(ADR)が上がれば分配金が急回復する一方、景気悪化や外部要因で収益が大きく揺れ動く、メリハリのあるセクターでもあります。
今回は、ホテルREITの仕組みや強み、注意点を分かりやすく整理します。
● ホテルREITとはどのような仕組みか
ホテルREITが保有するのは、
- シティホテル
- ビジネスホテル
- リゾートホテル
などです。
ホテルの運営自体は専門のホテル運営会社が行い、REITは“物件を所有して収益を得る”立場です。
ホテルREITの収益は主に次の二つで構成されます。
- 固定賃料(最低賃料)
- 変動賃料(ホテルの売上に応じて受け取る収入)
この「固定+変動」の構造が、ホテルREITの大きな特徴です。
- 景気や観光需要が強いと、変動賃料が大きく増える
- 景気悪化期には収益が減りやすい
したがってホテルREITは、REITの中でも景気に敏感なセクターです。
● インバウンド需要の回復が収益を押し上げる
ホテル需要を語るうえで欠かせないのがインバウンドの存在です。
訪日客数はコロナ前の水準に近づき、地域によってはコロナ前を超えるケースもあります。
- 円安による訪日客の増加
- 観光地の再人気化
- LCC路線の拡充
- 国際会議・イベントの復活
これらの要因がホテル稼働率と客室単価を押し上げ、ホテルREITの収益回復に大きく寄与しています。
さらに、観光庁の宿泊統計でも
「都市部の稼働率・ADR(客室単価)が高水準」
という傾向が見られます。
● ホテルREITの強み
ホテルREITの魅力は、好景気・観光需要の拡大局面で収益が跳ね上がりやすいことです。
具体的には、
- 景気回復期に分配金が急回復しやすい
- インバウンドと国内旅行の両方の恩恵がある
- 変動賃料で収益がレバレッジ的に伸びる
- 都市部ホテルでは稼働率が安定しやすい
などがあります。
投資家にとっては、景気の波にうまく乗ると高い利回りを得やすい点が魅力です。
● ホテルREITのリスク
一方で、ホテルREITは不確実性が高いセクターでもあります。
■ 景気に敏感
景気後退局面では、稼働率・客室単価ともに下落し、変動賃料が大きく減少します。
■ 外部要因に左右される
- 災害
- 国際情勢
- 入国規制
- 感染症流行
など、“予測しづらい外部ショック”の影響を受けやすい点はオフィスや住宅との大きな違いです。
■ ホテル運営会社の力量
ホテル運営は専門性が高いため、オペレーターの運営力が収益の差に直結します。
- マーケティング力
- 稼働率の管理
- 客室単価の設定
など、運営会社の力量がホテルREITの収益性に大きく影響します。
● ホテルREITを見る際の注目ポイント
ホテルREITを分析する際は、次の指標が重要です。
- 稼働率(Occupancy)
- 客室単価(ADR:Average Daily Rate)
- RevPAR(RevPAR:稼働率×単価)
- 契約形態(固定賃料の比率)
- ホテルの立地(観光・ビジネスニーズの強さ)
- オペレーターの実績
ホテルは稼働率だけでは判断できず、「単価 × 稼働」両方を見ることが大切です。
結論
ホテルREITは、「景気回復」「インバウンド拡大」「イベント需要」の恩恵を大きく受けるセクターです。変動賃料の仕組みがあるため、需要が強い局面では分配金が急伸する可能性があります。一方で、外部要因によるショックが収益に直結するため、最もボラティリティ(振れ幅)の大きいREITでもあります。
投資家にとっては、景気循環を踏まえながら適切なタイミングで組み入れることが重要です。安定運用の中心に据えるというより、分散投資の中で“成長セクター枠”として活用するイメージが適しています。
次回の第5回では、EC普及で構造変化が続く「商業REIT」について解説します。
出典
・観光庁「宿泊旅行統計調査」
・国土交通省「ホテル市場動向」
・各種REIT決算資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
