REITの中でも「最も安定的」と言われることが多いのが住宅REIT(レジデンスREIT)です。オフィスやホテルのように景気変動の影響を受けにくく、稼働率が高位で推移しやすいことが特長です。特に都心部の賃貸住宅は人口動態とも密接に関わるため、中長期的に底堅い需要が続きやすいと言われています。
今回は、住宅REITの特性・強み・リスクを整理し、今の日本の住宅市場とどのように結びついているのかを分かりやすく解説します。
● 住宅REITとはどのようなものか
住宅REITはマンションや賃貸住宅を中心に運用するREITで、
- 都市部の単身者向け物件
- 住宅街のファミリー向け物件
などを多く保有しています。
物件規模も多様で、都心ワンルームから郊外の大型ファミリータイプまで扱われます。
賃貸住宅は生活の基盤となるため、景気に左右されにくく、稼働率が95〜98%と高位安定しやすいのが大きな魅力です。
● 都心部では住宅需要が底堅い
住宅REITの安定性を支える根拠のひとつが、日本の人口動態です。
- 都市部への人口流入
- 単身世帯の増加
- 20〜40代の就業者の都市集中
- 共働き世帯の増加による利便性重視の住まい選び
これらの要因により、東京圏では賃貸需要が非常に強い状況が続いています。
また、24時間スーパーや交通利便性があるエリアでは賃貸ニーズが下がりにくいため、REITの物件選定も安定的です。
● 家賃上昇のトレンドが追い風
近年は、都市部を中心に家賃が緩やかに上昇しています。
- 都心の住宅供給の制約(新築コストの高騰)
- 物価上昇に伴う建築費・土地価格の上昇
- 単身者の増加
- 設備グレード向上(防犯性・IT対応・宅配ボックスなど)
これにより、既存物件でも更新時に家賃増額が可能なケースが増えており、住宅REITの内部成長(賃料増加)は安定傾向にあります。
● 住宅REITの強み
住宅REITの投資対象は、多くのテナントが入居する不動産です。オフィスのように一社が大量に面積を借りる構造ではなく、1戸単位でテナントが細かく分散しています。
そのため、
- 特定テナントへの依存が低い
- 景気変動や企業業績の影響を受けにくい
- 分散効果が高い
- 空室リスクの平準化がしやすい
といったメリットがあります。
投資家にとっては、毎期の分配金のブレが小さいことが魅力です。
● 住宅REITのリスク(盲点になりやすい点)
安定性が高い住宅REITにも、注意点があります。
■ 家賃の上昇ペースは緩やか
オフィスやホテルのように、景気回復期に大きく賃料が上がるわけではありません。
そのため、
- 分配金の伸びはゆっくり
- NAV倍率が上がりにくい
というセクター特有の性質があります。
■ 修繕・設備更新コスト
住宅は
- 原状回復
- 給湯器・空調交換
- 水回り修繕
などがオフィスや物流より頻繁に発生します。
設備更新コストの効率性が物件選定の鍵になる場合があります。
■ 金利上昇の影響
REIT全般ですが、借入コストが増える局面では分配金が抑制される可能性があります。
ただし住宅REITは負債の平均年限が長めで、金利の影響を分散させる仕組みを持つケースが多いのが特徴です。
● 住宅REITの評価ポイント
住宅REITを選ぶ際は次の点が重要です。
- 物件立地(駅距離・生活利便性)
- 稼働率の推移
- 更新賃料の改定率(内部成長)
- 規模(物件数の多さ・分散性)
- 修繕計画の妥当性
- テナント(入居者)の質
特に、住み替えが多く発生する単身者向け物件では、入退去コストや稼働率を丁寧に見ることが重要です。
結論
住宅REITは、REITの中でも安定性が高いセクターです。都心部の人口動態や単身世帯の増加を背景に需要が底堅く、稼働率が高位で維持される傾向があります。賃料の上昇もじわりと進んでおり、中長期的な「内部成長」を期待しやすいことも魅力です。
一方、大幅な賃料上昇が見込みにくいため、短期で大きな分配金増を狙うタイプの投資には向きにくい側面もあります。安定した不動産収益を得たい投資家にとっては、非常に相性の良いセクターと言えます。
次回の第4回では、観光需要と経済回復に連動しやすい「ホテルREIT」について解説します。
出典
・総務省「人口移動報告」
・国土交通省「住宅市場動向」
・各種REIT決算資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
