iDeCo 改正~受け取り方を一緒に考えましょう~④

FP
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<記載日:2025年7月23日>

今回のスタディグループの講義は、今年度の税制改正の1つであります iDeCoの改正事項のうち、受取時のルールが「5年ルール」から「10年ルール」に変更となりました件について、どのように受け取るのが良いのか、一緒に考えることによって、理解を深めていきたいという主旨で行ないました。

今回の記事でも、引き続き、内容をご連携させていただきます。

全体の資料は、こちらになります。

iDeCo対策(note).pdf

また、全体の資料は24ページにもおよびますので、説明箇所のページを1枚ずつ添付し、説明させていただきます。

それでは、本論に入ります。

前回の記事にて、6つの受け取りパターンについて、税金面でどうなるかを考えてみました。

https://note.com/embed/notes/na7a8e3b7ab2d

実際は、このパターン以外にも受け取り方はあると思いますが、今回はこれくらいにさせていただきたいと思います。

なお、いまさら当たり前の事を申し上げますが、退職金や確定拠出年金の受け取り方は、まず第一に自分が退職後、どのような生活をしていくのか、それを決めることが一番目にあります。
そのうえで、どのような受取り方をすれば税金の支払いが少なくて済むのかを考える訳で、当然ながら税金ありきで決めるものではありません。

しかも、今のように色々な制度がコロコロ変わる状況においては、今の制度で対策を決めても、また制度が変わる可能性があります。
また、ご自身の状況やお勤めの会社の制度も変わるかもしれません。
なので、大事なことは、現在の制度をしっかりと把握して、そして、今後、制度改正について注意すること、さらに改正があった場合、流動的に対策を考えれること、それが大事であって、今回のスタディグループでは、一緒に考えることで現在の制度の理解を深め、また、制度が変わっても、流動的に対策を考えれる、その参考になればと思い、受け取り方のパターンを考えていきました。
是非、今後も制度改正等に注意し、ご自身の状況等に合わせて、対策を考えていただきたいと思います。

ちなみに、自分自身のことを考えた場合、60歳で定年退職して、税理士事務所を開業したとしますと、まず、退職金を一時金と年金でもらいます。
そして、確定拠出年金は、必要になったときに一時金で受け取ろうかと考えています。
これは、税理士事務所を開業したとしても、すぐに収入が安定する訳ではないと思いますので、それを補うために年金でも受け取る、そして年金でも受け取ることによって、一時金が減るので、「みなし勤務年数」が活用でき、確定拠出年金との重複期間が短くなり、確定拠出年金を一時金で受け取る時に少しでも多く、退職所得控除を受け取るようにする、というふうに考えています。
前回のパターン⑤になりますね。
なので、実は、自分自身の状況に合わせるため、このパターン⑤のみ確定拠出金の制度が、途中から始まったり、退職後も掛金の拠出を続けたり、少し複雑な設定にしてあります。

折角なので、パターン⑤の計算事例だけでも少し見てみましょうか…。
この事例は、計算事例の全ての要素を含んでいますし、自分自身のパターンとして、確定拠出年金の制度が途中から始まったり、退職後も掛金拠出を続けたり…という設定にしてあって…
まあ、これを見ておけば他の計算事例は難しくありません。

それでは、スライド19枚目をご覧ください。

iDeCo対策(P19).pdf

このパターンだと60歳で定年退職し、退職金を一時金と年金で受け取りますので、まず、一時金 1,300万円は退職所得控除の対象となりますが、この事例だと退職所得控除は、800万円+70万円✕(36年-20年)=1,920万円となり、退職所得控除の額が退職一時金の額を上回ります。
ですので、みなし勤務年数を考えることができ、みなし勤務年数は(1,300万円-800万円)÷70万円+20年=27年となります。
そして、60歳から70歳まで年金として毎年 60万円を受け取りますので、年金は公的年金等控除の対象となります。
公的年金等控除の額は60歳から65歳までは60万円、65歳から70歳までは 110万円となりますので、その他公的年金等の受け取りがなければ、受け取る年金は非課税となります。
さらに、70歳時に確定拠出年金の一時金 1,000万円を受け取った時は、退職所得控除の対象となりますが、退職一時金を受け取ったとき、みなし勤務年数は27年となりましたので、本来の勤続年数36年から9年短くなりました。
なので、重複期間は、本来の重複期間 25年が9年短くなり16年となります。
ですので、この場合の退職所得控除の額は
800万円+70万円✕(36年-20年-16年)=800万円となり、課税の対象となる金額は、
(1,000万円-800万円)÷2=100万円となります。

以上、計算事例の確認はここまでとさせていただきますので、他の計算事例は後ほどご確認願います。

私はパターン⑤を考えていると言いましたが、
まあ、これも今、そう考えているだけで、色々な状況も変わるかと思いますので、60歳まであと2年、しっかり考えていきたいと思います。

それでは、統きまして21枚目のスライドをご覧ください。

iDeCo対策(P21).pdf

ここからは全体のまとめになります。

今回、「5年ルール」から「10年ルール」に改正となった主旨は、スライドの資料にありますように65歳以降まで定年延長になった企業や定年制が廃止になった企業が増加していることから、「5年ルール」が適用できる人が増え、「5年ルール」を適用できる人と適用できない人に不公平が生じるので、それは宜しくないと判断したことによるものと言われています。
つまり、「5年ルール」は、そもそも適用される人が少ないことを前提とした特例ということで、そういう意味では、現在、高齢者雇用安定法で 70歳までの定年延長等を努力義務としている中で、「10年ルール」を適用できる人の割合が増加すれば再び改正されるものと思われます。

また、前回のパターン①の時に話させていただきましたが、定年延長がされたとしても確定拠出年金の規約内容によっては、60歳時に確定拠出年金の一時金受け取りができない場合もあり、本当に「5年ルール」を適用できる人がどれくらいいるのかはこのデータだけでは判断できないものと思われます。
以上のことから、「5年ルール」から「10年ルール」に改正されたことにより影響を受ける人は、どんだけ多く見積もっても全体の3割もいない、実際にはかなり少数であると思われます。

なので、こんなふうに言ったら、怒られるかもしれませんが、一時期、色々なところで「iDeCo 改悪!」と言われましたが、それはごく少数派の人たちにとっての改悪だと言うふうに思われます。

続きまして、22枚目のスライドをご覧ください。

iDeCo対策(P22).pdf

そもそも確定拠出年金は①掛金が全額所得控除され、②運用益も非課税という税制のメリットがあります。
つまり、高い所得税率が課されている時に支払う税金を先送りして、適用税率が低くなった定年以降で課税される、いわゆる課税の繰り延べ効果があります。
また、退職所得控除について「10年ルール」や「19年ルール」が適用されない場合でも、重複期間を除いた期間の退職所得控除はありますし、また、一時金の金額が少額の場合は「みなし勤務年数」の適用もあります。
加えて、年金受け取りの場合は公的年金等控除の適用もありますので、年金受け取りも考慮すれば、税制のメリットは十分にあるものと思われます。

23枚目のスライドをご覧ください。

iDeCo対策(P23).pdf

申し上げたとおり、そもそも iDeCoは、①厚生年金がない自営業者・フリーランスや②企業年金がない会社員、もしくは③企業年金はあるが充実していない企業に勤めている会社員を対象とした「上乗年金制度」として、制度の見直しを繰り返してきました。
つまり、企業年金が充実している企業に勤めている会社員にとっては、今回の「5年ルール」が「10年ルール」に改正されたことの影響はありますが、今申し上げた①②③の方、つまり退職金が少ない方については、それほど大きな影響はないものと思われます。

スライドにある資料の退職給付額の水準をみていただきますと、退職金も以前に比べて下がってきていますので、退職所得控除を満額使えない人も一定数いるものと思われます。
また、本来、退職所得控除を使い切る人は、現役時代の所得が高いため、掛金の所得控除での効果が大きく、そもそもiDeCoに加入することの恩恵は、現役時代から大きく受けているものと思われます。

以上のことから、今回の改正により「5年ルール」が「10年ルール」に変わりましたが、それ自体で iDeCo
を使わない理由にはならないかと思います。
確かに掛金を拠出してから、実際に受け取ることができる期間が長い制度をコロコロ変えられたら、怒るのも仕方がないかとも思いますが、それはさておき、確定拠出年金、特にiDeCoは「人生100年時代」において、制度をしっかりと認識したうえで、積極的に活用しても良いものと思われます。

長くなってきましたね…。

切りが良いところで、今回はこれくらいにさせていただきます!
いよいよ次回は最終回となります!

引き続き、よろしくお願いいたします!

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