老後に向けた資産形成を考える際、iDeCo(個人型確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)は、代表的な税制優遇制度として知られています。
両制度は併用可能である一方、仕組みや制約、税制上の効果には明確な違いがあります。
本稿では、iDeCoとNISAの基本的な違いを整理したうえで、家計状況やライフイベントを踏まえた使い分けの考え方を解説します。
iDeCoとNISAの制度上の大きな違い
iDeCoとNISAはいずれも運用益が非課税となる点では共通していますが、最も大きな違いは「拠出時の税制優遇」と「資金の引き出し制限」にあります。
iDeCoは、毎月拠出する掛金の全額が所得控除の対象となります。
そのため、所得税・住民税の負担が軽減され、所得水準が高いほど節税効果が大きくなります。一方で、原則として60歳になるまで資金を引き出すことができません。
これに対してNISAは、拠出時の所得控除はありませんが、売却益や配当が非課税となり、資金の引き出しに制限がありません。
必要なタイミングで売却・換金でき、売却した投資元本分の投資枠が翌年以降に復活する点も特徴です。
所得が高い人ほどiDeCoの節税効果は大きい
毎月の収入が安定しており、当面使う予定のない資金を老後まで確保できる場合、iDeCoの税制メリットは非常に大きくなります。
特に共働き世帯や、厚生年金に加入しながら追加で老後資金を積み立てたい会社員・公務員にとっては、iDeCoは「税金を減らしながら老後資金を確保する制度」と位置づけられます。
将来、年金や退職金との受け取り調整が必要になる点はありますが、長期視点では所得控除による効果は無視できません。
ライフイベントが多い時期はNISAの柔軟性が生きる
一方、結婚、出産、子育て、住宅購入など、大きな支出が見込まれる時期には、資金拘束のないNISAのほうが使いやすい制度といえます。
NISAは運用を続けながらも、必要なタイミングで一部または全部を売却できるため、家計の変化に柔軟に対応できます。
また、家計に余裕がなく、将来的に積立を一時中断する可能性がある場合にもNISAは適しています。
iDeCoは拠出を停止しても口座管理手数料が発生しますが、NISAにはそのような固定コストがありません。
両制度を併用するという選択
投資に回せる資金に余裕がある場合は、iDeCoとNISAを併用することで、税制優遇を最大限に活用できます。
老後まで使わない資金はiDeCoで確保し、ライフイベント対応や中長期の資産形成はNISAで行うといった役割分担が現実的です。
将来の税制改正や制度変更の影響も見据えつつ、どの資金を「いつ使う予定なのか」を意識することが、制度選択の重要なポイントとなります。
結論
iDeCoとNISAは優劣を比べる制度ではなく、目的と状況に応じて使い分ける制度です。
所得が高く、老後まで資金を固定できる場合はiDeCoの節税効果が生きます。一方、資金の自由度やライフイベント対応を重視する場合はNISAが適しています。
重要なのは、制度そのものよりも、自身のライフプランと家計状況を踏まえて選択することです。
両制度の特徴を理解したうえで、無理のない形で長期の資産形成を進めることが求められます。
参考
・日本経済新聞「<マネーの知識ここから>iDeCoの基礎(下) NISAと使い分け」2025年12月13日
・金融庁 NISA制度解説
・国民年金基金連合会 iDeCo公式情報
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
