ここまでGLTD(団体長期障害所得補償保険)の仕組みや税制、健康経営との関係を解説してきました。
今回は視点を変え、「企業」と「従業員」それぞれにとってのメリットとデメリットを整理してみます。
企業側のメリット
- 採用・定着率の向上
- 雇用の流動化が進む中で、「もしもの時の安心」を提供することで他社との差別化に。
- 特に転職希望者にとっては魅力的な福利厚生となり、採用力を高める。
- 健康経営・人的資本開示の強化
- 健康経営優良法人の認定項目を満たしやすくなる。
- ESG投資や金融機関の融資判断においてプラス評価を得やすい。
- 経費処理が可能
- 保険料は福利厚生費として損金算入でき、税務上の負担は軽減される。
企業側のデメリット
- 保険料負担の増加
- 全従業員を対象にするとコストが膨らむ。
- 中小企業にとっては導入ハードルとなりやすい。
- 制度設計の複雑さ
- 既存の福利厚生制度や就業規則との整合性をとる必要がある。
- 説明不足だと従業員が「使い方が分からない」という事態に。
従業員側のメリット
- 長期的な収入補償
- 傷病手当金や障害年金と併用でき、生活不安を大幅に軽減。
- 定年まで補償が続く設計も可能。
- 割安な保険料
- 個人で加入する場合に比べ、団体契約によりコストは大幅に低減。
- 退職・転職に左右されにくい
- 退職後も一定期間補償が続く契約が一般的。
- 勤続年数が短くても対象になる。
従業員側のデメリット
- 会社に依存
- 会社が導入していなければ利用できない。
- 転職先で同制度がなければ継続できないケースもある。
- 補償額が画一的
- 「給与の50〜60%」といった定率補償が基本。
- 住宅ローンなど大きな固定支出がある人には十分でない場合も。
税理士・FPの視点
GLTDは「安心を広くカバーする仕組み」である一方、個別事情に完全対応できるわけではない点に留意が必要です。
例えば、住宅ローンや教育費の支出が重い家庭では、GLTDに加えて「個人加入型の所得補償保険」を組み合わせることが望ましいケースもあります。
まとめ
- 企業にとって:採用・健康経営・税務メリット → ただしコスト負担が課題。
- 従業員にとって:長期的な安心・割安保険料 → ただし個別事情には対応しにくい。
👉 次回(最終回・第6回)は、日本におけるGLTDの今後の課題と将来展望をテーマに解説します。
(参考 2025年9月9日付 日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
