■お金が地域を離れ、人が不安を抱える時代
近年、地方銀行の統合や店舗閉鎖、ネット証券・デジタル通貨の普及によって、
お金の流れは便利になった一方で、「地域から離れていく」傾向が強まっています。
- 預金は東京・大企業・海外ファンドへ
- 地域の若者は働き口を求めて都市部へ
- 地元の高齢者は資産を使わず眠らせたまま
結果として、「地域にお金が回らない」「つながりが薄れる」という現象が生まれています。
この流れを変えるカギを握るのが、FP(ファイナンシャル・プランナー)です。
FPは、単に“お金のアドバイザー”ではなく、
人と人・お金と地域を結び直す“地域金融の翻訳者”になりつつあります。
■地域金融の再定義:「資金調達」から「価値循環」へ
これまで金融は、
「資金を集めて貸す」=資金調達・融資中心の仕組みでした。
しかし、人口減少・地産地消・SDGsの時代では、
金融の目的そのものが変わります。
お金を“回す”から、“活かす”へ。
資金調達から、“価値循環”へ。
たとえば――
- 高齢者の余剰資金を、地域の子育て支援ファンドへ
- 中小企業の売掛資金を、地元クラウドファンディングで循環
- 公共事業を「地域債」で住民が支える
このように、金融を通じて“地域の未来”をデザインする動きが広がっています。
FPはその中で、個人と地域の橋渡し役を担います。
■FPが地域で果たす3つの役割
| 役割 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 家計と地域をつなぐ | 高齢者の資産運用、相続、寄付設計などを地域課題と結びつける | 「個人の資産を地域の未来に変える」 |
| ② 企業と金融機関をつなぐ | 中小企業の資金繰り・事業承継・再投資をサポート | 「地域企業の再生を支える」 |
| ③ 行政・教育・市民をつなぐ | 金融リテラシー教育や相談会を通じた生活支援 | 「金融を通じて“学びと安心”を広げる」 |
FPが地域に根ざすほど、
金融は“商品”から“共通の言語”になります。
■地域共創の金融モデル:3つの実践フィールド
① 地域金融×教育:学校・自治体でのFP活動
金融教育が義務化され、高校・自治体でFPが講師を務める機会が増えています。
授業や市民講座で伝えるべきは、投資のテクニックではなく――
「お金を通じて、どう生きたいか」。
FPが生活に根ざした金融リテラシーを広めることで、
地域の“経済的自立”が育ちます。
② 地域金融×ビジネス:中小企業と共に考える
地域企業の多くは、資金繰り・後継者・人材不足に悩んでいます。
FPは、単なる「節税」や「保険販売」にとどまらず、
財務・相続・経営・個人資産を一体で見るパートナー。
これこそ、地域経営FPという新しい形です。
経営者の“お金と人生”を同時に支える専門家が求められています。
③ 地域金融×共感:寄付・投資・支援の融合
クラウドファンディングやふるさと納税の拡大は、
「お金を通じた共感」が社会を動かす証拠です。
FPはその中で、
- 寄付の税制優遇や相続活用の設計
- ESG・地域再投資型ファンドの提案
- 個人の“社会的リターン”の可視化
などを通じて、“応援の金融”を設計する役割を担います。
「心が動くお金の流れ」を支援できるか――そこにFPの真価があります。
■FP×AI×地域:デジタルが“距離”を埋め、人が“信頼”をつくる
AIやフィンテックの進化により、地域の金融格差は縮まりました。
地方でも、オンラインで専門相談や投資管理が可能です。
しかし、テクノロジーがいくら発達しても、
「誰に相談するか」の信頼は人でしか築けません。
FPがAIを活用すれば、
- 家計診断の自動化
- 資産形成プランのシミュレーション
- 税・社会保障の最適化
を効率化できます。
そして生まれた時間で、
地域の人と“顔の見える関係”を築く。
この組み合わせが、地域金融の未来を支える礎です。
■まとめ:お金を回すのは、仕組みではなく人
地域共創の金融とは、
単なる制度や商品づくりではありません。
・人の想いがつながり、
・お金が地域をめぐり、
・世代が未来を共有する。
FPの仕事は、その循環を設計し、動かすこと。
お金の相談相手から、“地域の未来をデザインする専門家”へ。
これからのFPは、
数字ではなく“信頼”を資産として扱う時代に入ります。
出典:日本経済新聞/金融庁「金融リテラシー白書2025」ほか関連資料をもとに構成
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

