政府は2026年1月から、電気自動車(EV)などエコカー向け補助金を見直します。EVの補助上限は40万円増え、最大130万円となる一方、燃料電池車(FCV)は大幅に減額されます。
一見するとEV普及を後押しする政策に見えますが、同時に「EVへの新たな重量課税」の導入も調整されており、政策全体としてはちぐはぐな印象も否めません。
今回の補助金見直しは何を目的とし、どこに課題があるのでしょうか。
補助金見直しの中身
今回見直されるのは、経済産業省が所管する「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」です。
主なポイントは次のとおりです。
- EV:補助上限を40万円引き上げ、130万円
- プラグインハイブリッド車(PHV):25万円増の85万円
- 軽EV:58万円で据え置き
- FCV:105万円減の150万円
EVとPHVは2026年1月登録車から、FCVは影響が大きいため同年4月からの適用となります。
政府は補助額を「車両の平均価格の2割程度」にそろえることで、車種間の公平性を高めると説明しています。
背景にある日米関税交渉
今回の見直しの背景には、日米間の通商交渉があります。
米通商代表部(USTR)は、日本のエコカー補助金制度が米国車の普及を妨げていると指摘してきました。これを受け、日米関税交渉では「米国車もCEV補助金を受けやすくする」方向で合意しています。
つまり、今回の補助金調整は環境政策というより、通商政策の色合いが濃い側面があります。
日本のEV普及はなぜ進まないのか
補助金を手厚くしても、日本のEV普及は世界的に見て低水準です。
2024年の新車販売に占めるEV比率は、日本は1.6%にとどまり、中国(24.5%)、ドイツ(13.5%)、米国(7.6%)を大きく下回ります。
充電インフラの不足、車両価格の高さ、航続距離への不安など、補助金だけでは解決できない構造的課題が残っていることがうかがえます。
補助の裏で進む「EV重量税」
今回、より違和感を覚えるのは、補助金とは別に進められている新たな課税の動きです。
政府・与党は、2028年5月からEVやPHVを対象に、車両重量に応じた新たな税負担を導入する方針です。
EVはバッテリーの関係でガソリン車より重く、道路への負担が大きいというのが理由とされています。税収は道路維持などに充てる想定です。
補助と課税が同時に進む政策の矛盾
EV補助金を拡充しながら、数年後には新たな課税を導入する。
この組み合わせは、消費者にとって分かりにくく、政策の一貫性にも疑問が残ります。
環境負荷低減を目的にEVを促進するのであれば、利用段階での負担増は慎重に整理すべきです。一方で、道路維持という公共財の観点も無視できません。
結論
今回のEV補助金40万円増は、短期的には購入の後押しとなるでしょう。しかし、その背景には通商交渉があり、さらに将来的には重量課税という負担増も控えています。
補助金と税制は、本来一体で設計されるべきものです。補助で促し、後から課税で抑えるような政策運営は、消費者の信頼を損ねかねません。
EV普及を本気で進めるのであれば、補助・課税・インフラ整備を含めた中長期的な制度設計が問われています。
参考
日本経済新聞「EV補助金40万円増 政府、来月から」(2025年12月18日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

