AI時代の法人税調査 チェックに引っかかったら何をすべきか【実務対応編】

税理士
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前回の記事では、AI時代の法人税調査におけるチェックポイントを整理しました。
では、実際にチェック項目を確認してみて、「これは少し危ないかもしれない」と感じた場合、何から手を付けるべきでしょうか。

重要なのは、すぐに税務署を恐れることではありません
やるべきことを順番に整理し、冷静に対応することが、調査リスクを最小限に抑える近道です。


① まず「事実関係」を整理する

チェックに引っかかった場合、最初にやるべきことは非常にシンプルです。

  • その取引は実際に何をしたのか
  • 誰と、いつ、いくらで行ったのか
  • なぜその処理になったのか

これらを感覚ではなく、事実ベースで書き出すことが重要です。

この段階では、

  • 正しいかどうか
  • 税務上どう評価されるか

は一旦脇に置きます。
まずは「実態を自分で説明できる状態」を作ることが最優先です。


② 証拠資料がそろっているか確認する

次に、その事実を裏付ける資料があるかを確認します。

  • 契約書
  • 請求書・領収書
  • メールやチャットのやり取り
  • 業務内容が分かる資料

AI時代でも、最終的に判断するのは人です。
説明と資料が一致していれば、大きな問題に発展しにくくなります。

逆に、
「実態はあるが、証拠がほとんどない」
という状態は、調査で最も苦しくなります。


③ 「説明できない論点」を切り分ける

整理を進めると、次の3つに分かれるはずです。

  1. 問題なく説明できるもの
  2. 説明はできるが、処理が微妙なもの
  3. 自分でも説明が苦しいもの

特に重要なのは、③です。
この部分こそが、調査で否認されやすい論点になります。

ここで初めて、
「修正が必要かもしれない」
という判断が視野に入ってきます。


④ 税務署から連絡が来る前に専門家に相談する

③に該当する論点がある場合、税務署から連絡が来る前に動くことが重要です。

理由は明確で、

  • 事前であれば選択肢が多い
  • 自主的な見直しは評価されやすい
  • 重い加算税を回避できる可能性がある

からです。

国税庁の調査事績でも示されている通り、近年は「簡易な接触」による見直し要請が増えています。
その前段階で手を打てるかどうかが、結果を大きく左右します。


⑤ 修正申告をするかどうかの判断基準

修正申告をすべきかどうかは、金額の大小だけで判断すべきではありません。

判断のポイントは、

  • 否認された場合の影響額
  • 重加算税のリスク
  • 他の論点に波及する可能性

です。

「少額だから大丈夫」
「今回は見逃されるだろう」

という判断が、結果的に調査を長期化させるケースも少なくありません。


⑥ 簡易な接触が来た場合の基本姿勢

実際に税務署から文書や電話が来た場合、重要なのは次の姿勢です。

  • すぐに反論しない
  • その場で結論を出さない
  • 事実確認の時間を確保する

簡易な接触は、「最後通告」ではありません。
ここで冷静に対応できれば、実地調査に進まずに終わるケースもあります。


⑦ 帳簿・運用をそのままにしない

一度チェックに引っかかった論点は、
来年以降も同じ形で引っかかる可能性が高いという点を忘れてはいけません。

  • 経費計上ルールの見直し
  • 証憑保存方法の改善
  • 取引スキームの是正

「今回だけ乗り切る」ではなく、
次から同じ論点を生まない仕組み作りまで行うことが、本当の対応です。


結論

AI時代の法人税調査において、
チェックに引っかかること自体は珍しくありません。

重要なのは、

  • 放置しない
  • 感情的にならない
  • 事前に動く

この3点です。

調査は、来てから対応するものではなく、
気付いた時点で対応するものへと変わっています。

チェックリストは「脅し」ではありません。
健全な申告体制を整えるための、実務ツールとして活用することが、
AI時代における最善の調査対策と言えるでしょう。


参考

・税のしるべ「6事務年度法人税等の調査事績、追徴税額が6.6%増の3407億円で過去最高に」(2025年12月8日)
・国税庁「令和6事務年度における法人税等の調査事績」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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