AIやフィジカルAIへの投資は、国の基本計画や補助金政策も後押しし、今後ますます広がっていきます。
一方で、現場では「導入したが成果が出ない」「想定より負担が重い」といった声も少なくありません。
AI投資は、技術的に失敗するというより、進め方を誤ることで失敗するケースが目立ちます。
本記事では、AI投資が失敗しやすい典型パターンと、その回避策を整理します。
失敗パターン① 目的が曖昧なまま導入する
最も多い失敗は、「AIを入れれば何かが良くなる」という曖昧な期待だけで投資を進めてしまうケースです。
・人手不足対策なのか
・生産性向上なのか
・品質・安全性向上なのか
目的が曖昧なままでは、導入後に
「何が改善されたのか分からない」
という状態に陥ります。
回避策
導入前に、
・解決したい課題
・改善の指標
・期待する変化
を言語化し、関係者で共有することが不可欠です。
AIは目的を代わりに考えてくれる存在ではありません。
失敗パターン② 現場を置き去りにする
経営判断でAI導入を決めたものの、現場の理解や準備が不十分なまま進めてしまうケースも多く見られます。
その結果、
・使い方が分からない
・既存業務と合わない
・結局、人の手に戻る
といった事態が起こります。
回避策
AI投資は「現場の業務設計」を伴います。
導入前から現場を巻き込み、
・業務がどう変わるのか
・何が楽になるのか
を具体的に示すことが重要です。
失敗パターン③ 初期費用だけで判断する
AI投資では、初期費用に目が行きがちです。
しかし、実際には
・保守費用
・利用料
・追加開発
・人材育成
といった継続コストが発生します。
初期費用だけを見て判断すると、
「導入後に資金が持たない」
という失敗につながります。
回避策
導入から数年分の
・総コスト
・資金流出タイミング
を見積もり、資金繰り計画に落とし込むことが必要です。
失敗パターン④ 補助金ありきで進める
補助金や減税はAI投資を後押ししますが、
「補助金が出るから導入する」
という発想は危険です。
補助金終了後に、
・維持できない
・活用が止まる
といったケースは珍しくありません。
回避策
補助金は「あれば助かるもの」と位置づけ、
補助金がなくても成立する投資かどうかを基準に判断することが重要です。
失敗パターン⑤ 効果を短期で求めすぎる
AI投資は、導入直後から劇的な成果が出るとは限りません。
特にフィジカルAIでは、
・データ蓄積
・現場の慣れ
・改善の積み重ね
が必要です。
短期成果を求めすぎると、
「思ったより効果がない」
として投資が中断されてしまいます。
回避策
短期効果と中期効果を分けて評価し、
「今は準備段階である」
という共通認識を持つことが重要です。
失敗パターン⑥ 責任範囲を決めていない
AIが関与する業務では、
・不具合
・事故
・誤判断
が起こる可能性をゼロにはできません。
責任範囲を整理しないまま進めると、問題発生時に混乱します。
回避策
契約、運用ルール、保険などを通じて、
・誰がどこまで責任を負うのか
を事前に整理しておく必要があります。
士業が果たせる「失敗回避」の役割
AI投資の失敗は、技術ではなく「判断と設計」に原因があることがほとんどです。
税理士やFP、士業は、
・目的整理
・資金繰り設計
・制度活用
・リスク整理
といった点で、失敗を未然に防ぐ役割を担えます。
AI投資は、専門家が関与する余地が大きい分野です。
結論
AI投資は、正しく進めれば大きな武器になりますが、進め方を誤れば重荷にもなります。
失敗の多くは、導入そのものではなく、考え方と準備不足に起因します。
重要なのは、
・なぜ導入するのか
・続けられるか
・誰が支えるか
を事前に整理することです。
AI投資の成否は、導入前にほぼ決まっています。
参考
・日本経済新聞「AI、研究開発で巻き返し 政府初の計画、投資は米の30分の1」
・日本経済新聞「AI開発強化、国が主導 政府が基本計画決定」
・政府発表資料「AI基本計画」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

