シリーズ第3回:副業・起業・税務の視点から考える
ChatGPTをはじめとする対話型AIは、仕事の効率化やアイデア創出のツールとして大きな可能性を秘めています。
一方で「AIに頼りすぎる働き方」が、思わぬリスクを伴うことも見逃せません。
特に副業やフリーランス、起業を志す人にとって、AIは強力な味方でありながら、税務や法的な落とし穴につながるケースもあります。
今回は「働き方の変化」と「AI依存リスク」を、税理士・FPの視点から整理してみます。
AIが拓く新しい働き方
AIを活用すれば、資料作成、デザイン、プログラミング、マーケティング文案など、従来外注していた業務を自分でこなすことができます。
コストを抑えながらスピーディーにアウトプットできるため、副業や個人事業の立ち上げを後押しする力は絶大です。
例えば:
- ブログ記事やSNS投稿の原稿をAIに作らせる
- 税務や法律の基礎情報をAIで調べる
- 事業計画や資金繰り表のひな型をAIに作成させる
こうした“時間の節約”は、働き方改革そのものといえるでしょう。
依存のリスク:判断停止と自己責任
ただし注意したいのは、「AIが言ったから大丈夫」と思い込むリスクです。
AIの回答はあくまで一般論であり、必ずしもあなたの状況に即しているわけではありません。
- 副業の税務:AIは「20万円を超えると確定申告が必要」と教えてくれるかもしれません。
しかし実際には給与の源泉徴収状況や控除の有無で扱いは変わります。 - 起業の資金調達:AIは「補助金や助成金を使いましょう」と答えますが、申請要件や期限はケースごとに異なります。
- 社会保険の切り替え:AIは制度概要を説明できますが、転職・副業・法人化の具体的な手続きは個別の判断が必要です。
こうした「制度の微妙な差」を見落とすと、思わぬ税負担や法的トラブルにつながりかねません。
FP・税理士から見た“賢い活用法”
AIを働き方に取り入れるなら、次の3ステップを意識するのが安全です。
- 情報収集:AIで概要を素早く把握する。
- 自己整理:AIを壁打ち相手にして、自分の考えをまとめる。
- 専門家に確認:税理士・FPなどに相談して、個別事情に沿った最終判断を下す。
この流れを踏めば、AIは「判断の材料を広げるツール」として最大限の力を発揮してくれます。
人間関係の中でのAI活用
AIに頼ることで、上司や同僚に聞きにくいこともスムーズに調べられます。
ただし、すべてをAIに任せると、人間関係の構築が希薄になり、職場での信頼関係を損なう恐れもあります。
仕事のスピードを上げるためのAI活用は大切ですが、キャリア形成や評価に直結するのは「人間同士のやりとり」であることを忘れてはいけません。
まとめ:AIを「副操縦士」に
AIは働き方を広げる「副操縦士」のような存在です。
操縦桿(意思決定)はあくまで自分が握り、AIは視野を広げたり、ルートを提案したりする役割にとどめることが大切です。
税理士・FP的な視点での注意点
- 税金や社会保険は必ず“個別の事情”で変わる
- AIは一般論の整理役に、専門家は最終確認役に
- 働き方の自由度を高めつつ、人とのつながりも大切に
AIに依存しすぎないバランス感覚を持つことで、私たちは「新しい働き方」をより健全に広げることができるでしょう。
👉 次回(第4回)は、「AIとメンタルヘルスの関係」について、FPとしての“生活設計”の観点も交えて掘り下げます。
(参考 2025年9月15日付 日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
