子どもがまだ小さい時期は、保育園の送迎や夜の寝かしつけ、急な体調不良などでどうしても親の働き方に制約が生じます。特にフルタイム勤務を続けてきた人にとっては「時短勤務」を選ぶと給与が減るため、家計にとって大きな悩みとなってきました。
そうしたなか、2025年4月から新しく始まったのが 「育児時短就業給付金」 です。この制度を使えば、時短勤務による給与減少を一部補填してもらえるため、家計の負担を抑えることが可能になります。
ただし、制度の仕組みを理解して上手に活用することが大切です。本記事では、制度の概要、夫婦で分担した場合のメリット、注意点、そしてキャリア形成の観点までをわかりやすく解説します。
1. 育児時短就業給付金とは?
育児時短就業給付金は、子どもが 2歳になるまで、所定労働時間を短縮した場合に、減った給与の一部を補う制度です。
- 対象者:2歳未満の子を養育する労働者
- 条件:所定労働時間を短縮して働くこと(6時間勤務に限らず、7時間や7.5時間など「少しだけ短縮」も対象)
- 給付額:時短勤務で受け取る給与の10%(ただし給与の減少幅が10%未満なら調整あり)
- 上限:給与+給付金で月47万1393円(2026年7月末まで)
例えば、1日8時間勤務から6時間勤務に変更すると給与が25%減りますが、その減額分の一部が給付金でカバーされます。
2. 従来の時短勤務制度との違い
従来の「育児・介護休業法」による時短勤務制度は以下の内容でした。
- 3歳未満の子どもを育てる従業員が対象
- 1日6時間勤務まで短縮できる制度
- 2025年10月からは「小学校就学前」までに対象拡大予定
一方、新しい給付金制度は「2歳未満」と期間は短いものの、 6時間だけでなく、7時間や7時間半など柔軟な短縮も対象になる という違いがあります。
つまり、少しだけ勤務時間を短縮して、家事や育児の時間を確保したい家庭にとっても利用しやすい仕組みになっているのです。
3. 夫婦で取得した方が有利になるケース
ここで、実際の数字を使ってシミュレーションしてみましょう。
例:共働き夫婦(1人あたり月収30万円、フルタイム勤務8時間)
妻だけが2時間時短(6時間勤務)
- 妻の給与:30万円 → 22.5万円(▲25%)
- 給付金:2万2500円
- 世帯収入:54万7500円
(通常60万円の約91%)
夫婦それぞれ1時間時短(7時間勤務)
- 夫:30万円 → 26.25万円(▲12.5%)
- 妻:30万円 → 26.25万円
- 給付金:2人合わせて5万2500円
- 世帯収入:57万7500円
(通常60万円の約96%)
→ 妻だけが時短するよりも月3万円の差。2歳までの2年間で計算すると、60万円以上の収入差になる可能性があります。
4. なぜ夫婦で分担すると有利になるのか?
ポイントは 「給付金は給与の10%」 というルールです。
- 妻だけが6時間勤務になると、給付の基準となる給与は22.5万円。そこから10%=2万2500円が支給。
- 夫婦で7時間勤務にすると、基準となる給与はそれぞれ26.25万円。10%=2万6250円が2人分で5万2500円。
つまり、 給付の基準額が高いまま適用され、さらに夫婦2人分受け取れる ため、収入減を抑えられるのです。
5. 注意点と落とし穴
もちろん、どの家庭でも「夫婦で時短」がベストとは限りません。
- 夫婦の給与に差が大きい場合(高収入の方が時短すると減少幅が大きい)
- 残業代やインセンティブの有無によっては、世帯収入がかえって少なくなる
- すでに2025年4月より前から時短していた場合は、給付対象外になるケースあり
家庭ごとの事情によって損得が変わるため、シミュレーションは必須です。
6. キャリア格差を防ぐ視点も大切
社会保険労務士の佐々木由美子氏はこう指摘します。
「女性ばかりが時短勤務をすれば、将来の昇給や賃金格差につながる。夫婦で共に育てるという視点で、制度利用を考えたい」
実際、厚労省の調査によれば、小学4年生未満の子を育てる正社員のうち、時短勤務を利用している割合は 女性51.2%に対して男性7.6%。依然として「女性が時短をとるのが当たり前」という雰囲気があります。
しかし、時短勤務の負担を夫婦でシェアすれば、どちらか一方のキャリアへのマイナス影響を抑え、共働きを長く続けやすくなります。
7. 家計・キャリア・子育てをトータルで考える
育児時短就業給付金は、単なる「収入補填」の仕組みではありません。
- 家計へのダメージを抑えられる
- 夫婦で育児を分担しやすくなる
- 長期的にキャリア格差を小さくできる
この3つを同時に実現できる可能性を秘めた制度です。
まとめ
- 育児時短就業給付金は2025年4月からスタート
- 2歳未満の子が対象、勤務時間を「少し」短縮しても給付対象
- 給付額は給与の10%、上限は月47万円強
- 夫婦で分担すると世帯収入の減少を抑えられるケースが多い
- 将来のキャリア格差を防ぐ意味でも「夫婦で時短」が新しい選択肢
子どもが小さい時期の働き方は、数年先、さらには10年後のキャリアと家計に大きな影響を与えます。
新制度をきっかけに、「誰が時短を取るか」ではなく、「どう夫婦でシェアするか」という発想に切り替えることが大切です。
👉 あなたのご家庭では、夫婦どちらが時短を取りますか? それとも二人で分担しますか?
📌 参考 日本経済新聞朝刊(2025年9月27日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

