【最終回】家族とマンションと認知症 〜共生社会への道を考える〜

FP
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このシリーズでは、認知症とマンション生活をめぐる課題を、制度・税務・相続の視点から見てきました。
最終回は「実際の家族」を想定したストーリーを通して、制度と人の理解、そしてお金の備えがどう結びつくのかを考えます。


ストーリー:都内マンションに暮らす佐藤さん一家

  • 父:佐藤正夫さん(78歳、マンション所有)
  • 母:佐藤春子さん(75歳)
  • 子ども:長男(会社員、地方在住)、長女(主婦、都内在住)

正夫さんは都内にある築25年の分譲マンションに住んでいます。
子どもたちは独立し、夫婦二人で暮らしていましたが、最近になって正夫さんに物忘れの症状が見られるようになりました。


第1の転機:管理費の未払い

ある日、管理組合から「管理費が2カ月滞納しています」という通知が届きます。
家計は年金で十分回っているのに、銀行引き落としの手続きが抜けていたのです。

長女が相談しに行くと、正夫さんは「もう払ったよ」と言い張ります。
そこで長女は成年後見制度を検討し、もしもの時は家庭裁判所に申し立てる準備を進めました。


第2の転機:大規模修繕の総会

数年後、マンションで大規模修繕の議題が上がります。
しかし正夫さんは「工事なんて不要だ」と強く反対。話し合いは平行線をたどります。

このとき役に立ったのが、任意後見契約です。
正夫さんが元気なうちに「将来判断が難しくなったら、娘に判断を任せる」と契約していたおかげで、長女が代理で議決に参加し、スムーズに総会が進みました。


第3の転機:相続をめぐる思い

やがて正夫さんが80代半ばになり、認知症の診断を受けます。
母・春子さんも体力が落ちてきたため、子どもたちが集まり「このマンションをどうするか」話し合いました。

  • 長男:「地方にいるので管理はできない。売却して現金で分けたい」
  • 長女:「私は都内にいるから住み続けたい」

ここで使えたのが、家族信託生命保険です。
あらかじめ「マンションは長女が相続、長男には代償金を生命保険から支払う」という仕組みを作っておいたため、大きな対立には至りませんでした。


学び:家族と地域の“お互いさま”

このケースから分かることは、

  • 制度(成年後見・任意後見・家族信託)があれば、トラブルを防げる
  • 税務・相続の備え(遺言・保険・評価額の確認)があれば、公平感を保てる
  • そして何より「お互いさま」という気持ちが、地域での共生には不可欠

ということです。

東京都も「マンション管理士派遣」や「認知症施策推進計画」を打ち出していますが、最終的に安心できる暮らしを作るのは、制度+お金の備え+人の理解の三本柱だといえます。


まとめ

佐藤さん一家のように、認知症とマンション相続は「いつ誰にでも起こり得ること」です。

  • 元気なうちに制度を準備する
  • 家族で話し合い、思いを共有する
  • 地域や専門家とつながっておく

この3つを意識することで、安心して老後を迎えられる社会に近づけます。

認知症は「家族だけの問題」ではなく、地域と社会全体で支え合うテーマ
マンションという住まいの場を通じて、共生社会のあり方を考えるきっかけになれば幸いです。


📌 参考 日本経済新聞朝刊(2025年9月26日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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