これまでのシリーズでは、住宅ローン、預金・国債、社債・REITといった金利上昇と家計の関わりを見てきました。
最終回となる今回は、株式投資とインフレ対策 をテーマにします。
金利上昇は「借りる側」には負担ですが、「投資する側」にはチャンスをもたらすこともあります。特にインフレ局面では、株式投資を取り入れるかどうかが資産寿命を左右する重要な分岐点 になります。
なぜインフレに株式が有効なのか?
インフレとは、モノやサービスの価格が上がり、お金の価値が下がる現象です。
- 預金に眠らせておく → 実質的な購買力は目減りする
- 株式を保有する → 企業は価格転嫁(値上げ)で収益を維持・増加できる
つまり、企業の売上や利益はインフレとともに伸びやすいため、株式は「インフレに強い資産」といわれます。
金利上昇と株式の関係
ただし、金利上昇は株式にとって必ずしもプラスではありません。
- マイナス要因
借入コストの上昇 → 企業利益を圧迫
割引率の上昇 → 成長株の理論株価が下がる - プラス要因
景気が堅調で物価上昇 → 企業収益が拡大
配当利回りの魅力が高まる
実際の株価は、インフレと金利のバランス、企業業績、投資家心理など複数要因で動きます。
ケーススタディ:日本株の配当利回り
例えば、2025年現在の日経平均株価採用銘柄の平均配当利回りは 約2.2%。
一方、東証プライム市場全体でみると 約2.5~3.0% の銘柄も多くあります。
- 銀行預金:0.2~1.0%
- 個人向け国債(変動10年):1.0%前後
- REIT:4%前後
- 株式(高配当株):2~3%
こうして比較すると、株式投資は「値上がり益+配当収入」の両面でインフレ対策になり得ることがわかります。
若い世代の戦略:株式中心でOK
20~40代の比較的若い世代は、長期投資の時間を味方につけられます。
- 株式を中心にインデックス投資(例:TOPIX連動型投信、S&P500投信)
- 積立NISAやiDeCoを活用して、非課税枠を最大限利用
- 短期的な株価下落は気にせず、20年・30年というスパンで積み上げる
インフレに強いポートフォリオを自然に形成できるのが若年世代の強みです。
中高年世代の戦略:守りと攻めのバランス
50代・60代は「リタイア後の生活資金を減らさないこと」が最優先になります。
- 株式だけに偏らず、国債・社債・REITを組み合わせる
- 「高配当株」や「生活必需品セクター株」を中心に据える
- 株式比率は「年齢=債券比率」という考え方を目安に調整
(例:60歳なら株式40%、債券や預金60%)
「資産を殖やす」から「資産を減らさない」にシフトする時期です。
インフレ対策としての実物資産
株式以外にもインフレに強い資産があります。
- 不動産(実物):賃料上昇や資産価値の維持
- 金(ゴールド):通貨価値が下がる局面で強さを発揮
- コモディティ(原油・資源):価格上昇がインフレと連動
ただし、どれも価格変動が大きく、保有のハードルも高めです。家計レベルでは「ポートフォリオの一部」として組み込むのが現実的です。
ケーススタディ:世代別ポートフォリオ
30代独身会社員
- 株式インデックス投信:70%
- REIT:10%
- 預金・国債:20%
→ 積極的にリスクを取って資産形成。
50代子育て世帯
- 株式:40%(高配当株中心)
- 国債・社債:40%
- REIT・現金:20%
→ 教育費・住宅ローン返済もあり、バランス型で安定性重視。
65歳退職後夫婦
- 株式:20%(生活必需品・高配当株)
- 国債・社債:50%
- REIT:10%
- 預金:20%
→ 生活資金を守りつつ、インフレ対策として株式を少し残す。
投資初心者におすすめの一歩
- つみたてNISAでインデックス投信を毎月積立
→ 世界株式やS&P500連動型を選べば分散効果も抜群。 - iDeCoで老後資金を株式投信に振り分ける
→ 節税メリットを受けつつ、長期運用。 - 高配当ETFを少額から買う
→ 分配金を「インフレ時代の小さな年金」として受け取れる。
まとめ:インフレ時代に株式を取り入れる意味
- インフレ下では預金だけでは資産価値が目減りする。
- 株式は企業の成長と価格転嫁力により、インフレに強い。
- 若年層は株式中心、シニア層は債券や預金を増やすなど、世代に応じた配分が重要。
- 金や不動産など実物資産も組み合わせれば、より強いインフレ耐性がつく。
シリーズを通じての総括
- 第1回:住宅ローン → 固定か変動か、ライフプランで判断
- 第2回:預金と国債 → 短期定期と国債を使い分ける
- 第3回:社債とREIT → 国債以上の利回りを求めるならリスクを理解
- 第4回:株式とインフレ対策 → インフレに強い株式を世代別に取り入れる
金利上昇は、単に「借金が重くなるリスク」ではなく、「資産を増やすチャンス」にもなります。大切なのは、自分のライフステージや目的に応じて、守りと攻めのバランスをとること です。
👉 参考記事:
- 〈マネー相談 黄金堂パーラー〉金利を知る(下) 家計への影響と対応(日本経済新聞夕刊 2025年9月24日)
- 国債「固定3年・5年」購入も(日本経済新聞夕刊 2025年9月24日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
