2025年9月22日に告示された自民党総裁選。石破茂首相の退陣を受け、5人が立候補しました。今回の最大の争点は「物価高対策」と「経済再生」です。
ここでは候補者ごとの経済政策を比較し、それぞれの特徴と課題を整理します。
1. 小林鷹之氏 ― 若者・現役世代に重点
小林氏は「現役世代が自由に使えるお金を増やす」ことを最優先に掲げています。
- 柱となる政策
- 所得税の定率減税(若者・現役世代を対象)
- 社会保険料の負担軽減
- 狙い
物価や電気代の上昇に所得が追いつかない現実を直視し、可処分所得を直接的に増やす。 - 課題
減税や負担軽減の財源をどう確保するかが不透明。長期的な財政再建との整合性も問われます。
2. 林芳正氏 ― 成長戦略とGX推進
林氏は石破政権の流れを引き継ぎつつ、規制緩和による成長戦略を強調しています。
- 柱となる政策
- GX(グリーントランスフォーメーション)を最優先課題に設定
- 規制緩和と官民協調による新産業創出
- 実質賃金の年1%増を定着させる目標
- 狙い
成長の「パイ」を広げ、中間層を厚くする。英国のユニバーサルクレジットを参考に、日本版制度の創設も打ち出し。 - 課題
成長戦略が中長期的な成果に偏るため、足元の物価高への即効性が弱い。
3. 茂木敏充氏 ― 増税ゼロと地方主導の支援
茂木氏は「増税ゼロ」を明確に掲げ、地方に財源を委ねるスタンスです。
- 柱となる政策
- 「増税ゼロ政策」の継続
- 数兆円規模の特別交付金を創設(地方自治体が使い道を決定)
- 医療・保育などの公定価格を物価に連動させ、賃上げを促進
- 狙い
地方主導での支援策により、国民生活を直接的に下支えする。 - 課題
特別交付金の財源は国債頼みになる可能性が高く、財政規律が懸念される。
4. 高市早苗氏 ― 積極財政と現実路線への修正
高市氏は最も積極財政的な候補とされます。
- 柱となる政策
- 所得税減税、ガソリン減税
- 給付付き税額控除の導入(中低所得者支援)
- 科学技術投資(核融合など先端分野)による成長促進
- 狙い
「責任ある積極財政」により、民間投資を喚起して経済を押し上げる。 - 市場の見方
「高市トレード」と呼ばれ、株高・円安期待が先行。 - 課題
債券市場では財政悪化を懸念する声が強い。政策を現実路線に修正しつつあるが、財政規律との両立が焦点。
5. 小泉進次郎氏 ― 財政健全化と国民生活支援の両立
小泉氏は石破政権の財政健全化路線を引き継ぐ一方、生活支援策も掲げています。
- 柱となる政策
- 所得税の基礎控除を物価・賃金に連動させる制度改正
- 物価高対策を盛り込んだ補正予算を速やかに提出
- 狙い
「財政規律を意識しつつもインフレ下の税収増を活用」することで、持続可能な家計支援を目指す。 - 市場の見方
財政健全化色が強いため、円高方向の要因とされ、株価には調整圧力も。 - 課題
財政規律を守りつつ、国民が実感できる生活支援を実現できるかが焦点。
6. まとめ ― 5氏の比較ポイント
- 即効性重視:小林氏・茂木氏
- 成長戦略重視:林氏
- 積極財政と市場インパクト:高市氏
- 財政規律と生活支援の両立:小泉氏
どの候補も「物価高対策」を掲げていますが、アプローチは異なります。
即効性と財政規律、中長期的な成長戦略のどこに軸足を置くか――これが今回の総裁選の大きな分かれ目です。
📌 補足コメント(税理士FP視点)
- 小林氏の減税・社会保険料軽減 → 現役世代に即効性がありますが、長期的には年金財源に影響する可能性。
- 林氏の成長戦略 → 家計への直接効果は薄いですが、長期的に資産運用や雇用安定につながるかが焦点。
- 茂木氏の地方交付金 → 地域格差是正につながる可能性があり、地方中小企業の支援に注目。
- 高市氏の積極財政 → 短期的な景気刺激はプラスでも、国債増発による将来世代の負担増に留意。
- 小泉氏の財政規律重視 → 家計への効果は緩やかでも、長期的な金利安定や資産形成環境にプラス。
📌 参考記事(すべて2025年9月23日 日本経済新聞)
- 「自民総裁選、経済・政治再生競う 5氏出馬」
- 「総裁選、市場の見方 『小泉円高・高市株高』」
- 「〈自民総裁選2025〉物価高対策 立て直し」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
