――「人生100年時代」の資産活用入門(第3回)
前回(第2回)では、退職後の資産運用において「リスクを下げる3つの視点」を確認しました。
今回は、その中でも特に重要な 具体的な手段 である「債券」と「バランス型投信」の活用法について掘り下げていきます。
「リスクを抑える」といっても、ただ預金に偏らせるだけではインフレに負けてしまいます。ある程度の運用を続けながら、安定性を確保するために、債券とバランス型投信は退職後の資産ポートフォリオにおいて強力な選択肢となります。
債券を活用する意味
まずは「債券」の役割を整理してみましょう。
債券とは何か
債券は、国や企業にお金を貸し、その代わりに利息を受け取る金融商品です。
- 国が発行する「国債」
- 企業が発行する「社債」
がありますが、退職後の運用では 信用度が高く、元本の安全性が重視される国債 が基本となります。
債券のメリット
- 元本が比較的安定している
株式に比べて値動きが小さいため、安定した資産運用が可能です。 - 利息収入が得られる
定期的に利息が支払われるため、生活費の補助になります。 - 満期で元本が戻る(国債の場合)
満期まで保有すれば、額面どおりの元本が返ってくるため、計画的な資産管理がしやすい。
個人向け国債の使い方
日本では「個人向け国債」が退職後の資産運用に適しています。
- 変動10年型:金利は半年ごとに見直し、満期は10年。金利上昇局面でメリット大。
- 固定5年型/固定3年型:発行時点の金利が固定される。短期の資金計画に合わせやすい。
2025年8月募集分では、変動10年・固定5年ともに表面利率が0.97%、固定3年でも0.79%が提示されています。
例えば、65歳で500万円を変動10年国債に投資すれば、70代前半まで安定した利息収入を得ながら、満期時に元本が戻ります。
注意点
- NISA口座での購入は不可:国債は課税口座でしか買えないため、利息に20.315%の税金がかかります。
- 途中換金の制限:原則3年未満の換金はできません。計画的に資金を割り当てる必要があります。
債券投資信託の活用
債券を直接購入する以外に、投資信託を通じて債券に投資する方法もあります。
- 国内債券型投信:日本国債や地方債を中心に投資。為替リスクがないため安定性が高い。
- 海外債券型投信:米国国債や新興国債などに投資。リターンは高いが為替リスクあり。
退職後の資産活用では、為替リスクを嫌う人が多いため、まずは国内債券型を中心に考えるのが無難です。
バランス型投信を活用する意味
次に注目すべきは「バランス型投資信託」です。
バランス型投信とは
株式や債券、不動産投資信託(REIT)など、複数の資産に分散投資する投資信託のことです。1本の投資信託を買うだけで分散が効くため、管理がシンプルになります。
メリット
- 分散効果
1つの商品で株式・債券・不動産などに投資できる。 - 管理の手間が少ない
複数の商品を組み合わせる必要がなく、シンプルに運用できる。 - 取り崩しがしやすい
1本を部分解約すればいいので、「どの商品を売るか迷う」問題を避けられる。
具体的な利用法
- 株式投信を複数保有している人が、それらを売却して バランス型投信に一本化 する。
- 資産全体の比率を考えたうえで、株式比率を20~30%程度に抑えた商品を選ぶ。
- 取り崩し時には、バランス型投信を一部解約するだけで済むため手間がかからない。
注意点
- 信託報酬(手数料)が高めの商品もあるので要確認。
- 分散されているとはいえ、株式が含まれるため値下がりリスクは残る。
債券とバランス型投信の組み合わせ方
退職後のポートフォリオは「債券+バランス型投信」の組み合わせが有効です。
例:総資産4,000万円の場合
- 現金・預金:1,000万円(生活費3年分)
- 個人向け国債:1,000万円
- 国内債券投信:1,000万円
- バランス型投信:1,000万円
このようにすれば、資産の半分は安定性重視、残り半分で株式を含む分散投資を行い、インフレにも備えることができます。
まとめ
退職後の資産活用において、
- 債券は「安定性」と「計画的な取り崩し」を支える基盤
- バランス型投信は「シンプルさ」と「分散効果」を両立する選択肢
として大きな役割を果たします。
リスクを下げながらも、資産寿命を伸ばすためには「守る資産」と「運用する資産」をバランスよく組み合わせることが大切です。
次回(第4回)は「投資対象を変えない」という選択肢を取り上げます。現役時代からの投資信託をそのまま持ち続けつつ、全体の比率を調整する方法について詳しく考えていきます。
(参考:日本経済電子版 2025年9月14日記事)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
