― 個人・家庭・社会、それぞれの行動のヒント ―
これまで5回にわたり、家計金融資産の過去最高更新(2239兆円)というニュースの裏側にある「高齢者世代の資産二極化」を見てきました。資産ゼロ世帯の増加、資産を築いた世帯の特徴、社会全体への影響、そして各世代に求められる資産形成のヒントを整理しました。
最終回となる今回は、「では私たちはこの二極化社会で具体的にどう行動していけばよいのか?」を個人・家庭・社会の3つの視点から考えてみます。
1. 個人ができること ― 「早めの行動」と「知識の習得」
資産二極化を生き抜くためには、まず個人の行動が欠かせません。
① 小さな一歩を早く始める
資産形成は「額」よりも「時間」が大きな味方です。
- 月1万円の積立投資
- ボーナス時の臨時拠出
- 保険やサブスクの見直しで浮いた分を投資に回す
こうした小さな行動の積み重ねが、10年・20年後に大きな違いを生みます。
② 金融知識を学び続ける
「投資は怖い」と思うのは知識不足が原因です。
- NISA・iDeCoなどの制度の基本
- 株式・投信・債券の特徴
- インフレや金利が資産に与える影響
これらを理解することで、無駄な不安を減らし、行動に移しやすくなります。学びは一度きりではなく「アップデートし続ける」ことが重要です。
③ 健康を「最大の資産」と考える
資産を増やすことと同じくらい、医療費や介護費を減らすことも大切です。運動習慣や食生活の改善は、将来の大きな支出を防ぎます。
2. 家庭でできること ― 「共有」と「計画」
資産は個人だけでなく、家庭全体で管理するものです。
① 情報を家族と共有する
口座や保険、不動産の情報を家族に伝えていますか?
「誰も知らない」「自分しかわからない」状態は、もしもの時に家族を困らせます。資産一覧を紙やデジタルで整理し、家族に伝えておくことが安心につながります。
② 夫婦・世帯で計画を立てる
教育費、住宅ローン、老後資金――家庭のお金は連動しています。
- 教育費にかける上限を夫婦で話し合う
- 老後に必要な資金をシミュレーションする
- 親の介護や相続について早めに意見交換する
こうした対話が、家庭全体の資産防衛になります。
③ 「世帯単位」で資産を育てる
資産形成は夫婦別々ではなく「世帯単位」で見ることがポイントです。NISAやiDeCoも、夫婦両方で使えば非課税枠は倍になります。
3. 社会ができること ― 「制度」と「教育」の整備
資産二極化は個人の努力だけで解決できる問題ではありません。社会全体での取り組みも不可欠です。
① 金融教育の普及
日本では、金融教育はまだ十分ではありません。学校や地域で「お金の授業」を広げることが、長期的な資産形成を促す第一歩です。若いうちから投資や制度を知ることで、老後の格差は緩和されます。
② セーフティネットの整備
資産ゼロ世帯が増え続ければ、医療や介護の負担は社会に跳ね返ってきます。生活保護や年金の仕組みを持続可能に整備することが、全体の安定につながります。
③ 制度の使いやすさを高める
NISAやiDeCoなどの制度も「知っている人だけが得をする」状況では不十分です。
- 手続きの簡素化
- 情報提供の充実
- 高齢者でも使いやすい仕組みづくり
こうした改善が、幅広い世代に恩恵を届けるカギとなります。
まとめ ― 「二極化社会」を前提に生きる
日本の家計金融資産は過去最高の2239兆円に達しましたが、その多くは高齢者に集中し、しかもその高齢者世代の中でも二極化が進んでいます。
この現実を前に、私たちができるのは「格差をなくす」ことではなく、格差が広がる社会を前提に、どう備えるかを考えることです。
- 個人は早めに小さく行動し、知識を身につける
- 家庭は情報共有と計画で資産を守る
- 社会は教育と制度整備で格差を緩和する
一人ひとりの工夫と社会全体の取り組みが、資産二極化時代を乗り越える力になります。
📌参考:2025年9月19日付 日本経済新聞朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

