パワーカップルは日本経済を救えるか?

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〜人生100年時代と共働き夫婦のこれから〜

最近「パワーカップル」という言葉を耳にする機会が増えてきました。定義はさまざまですが、一般的には夫婦それぞれの年収が700万円〜1000万円以上の共働き世帯を指します。双方がキャリアを維持しながら高い収入を得ているため、世帯年収は1500万〜2000万円に達することもあります。

総務省の労働力調査によると、夫婦ともに年収1000万円以上の世帯は約11万世帯。10年前の2倍に増えました。夫婦ともに700万円以上でも45万世帯と、こちらも倍増しています。増加傾向にあるとはいえ、全体に占める割合はまだわずか。1000万円以上の層は1%に届かず、700万円以上でも3%に満たないのが現状です。

人生100年時代と共働き

日本は「人生100年時代」に突入しています。寿命が延びる一方で、年金や社会保障に頼り切ることは難しくなり、働く期間を長くし、自分で経済基盤を築くことが重要になってきました。

その中で女性の就労は不可欠です。かつては「夫が稼ぎ、妻は家庭を守る」モデルが一般的でしたが、今や専業主婦世帯は減少し、共働き世帯が主流に。2024年時点で専業主婦世帯は508万世帯と、共働き世帯の半分以下になりました。

夫婦共に働くことは「家計の安定」だけでなく、女性のキャリア形成や社会参加の拡大、男女ともに生き方の多様化にもつながります。

パワーカップルの生活スタイル

ある飲料メーカー勤務の30代女性は、会社員の夫と2人の子どもと暮らしています。世帯年収は約1800万円。
「家事は外注し、時間を子どもや仕事に使う」と話し、保育園の送迎や家事代行に月10万円以上を投じています。夕食は宅配サービス、掃除は業者依頼といった具合です。

このように「お金で時間を買う」消費行動は、教育や住宅、家電などの高額消費にもつながり、経済への波及効果が期待されています。

それでも個人消費は伸びない

一方で、家計全体の消費は伸び悩んでいます。

  • 2024年の二人以上勤労者世帯の可処分所得は月52万2569円(10年前より約10万円増)。
  • しかし消費支出は月32万円と、10年前からわずか1万円増にとどまり、残りは貯蓄へ回っています。

背景には、コロナ禍やウクライナ危機を経たインフレによる節約志向の強まりがあります。内閣府の調査では、60歳未満の66%が「将来に備える」ことを優先すると回答しています。

国際比較と日本の課題

パワーカップルの増加は「日本の賃金停滞」を映し出しています。

  • 日本の平均年収はOECD平均を下回り、購買力平価ベースでは30年前より減少。
  • パワーカップルの基準である「700万円」「1000万円」は、米国やドイツではすでに平均水準に近い金額です。

さらに、日本の労働慣行も足かせになっています。転勤制度は「配偶者は専業主婦」という前提で設計されており、共働き世帯にとっては大きな壁。法政大学の武石恵美子教授は「制度疲労を起こしている」と指摘しています。

共働きは社会の力に

人生100年時代において、夫婦で働くことは家計防衛の戦略であると同時に、社会全体の活力を維持するための条件でもあります。

  • 女性が活躍できる労働環境を整えること
  • 共働き世帯を支える保育・教育・介護インフラを拡充すること
  • 転勤や長時間労働といった旧来型の働き方を見直すこと

これらが進めば、パワーカップルは「微力」から「強力」な存在へと変わり、日本経済の成長を牽引する層になり得ます。

まとめ

パワーカップルの存在は確かに増えてきました。しかし現状ではまだ経済全体を動かす力にはなっていません。むしろ、この層が増えても消費が伸びないという事実は、日本の賃金構造や家計の意識に深い課題があることを示しています。

「夫も妻も共に働き、共に稼ぎ、共に人生を築く」ことは、個人のライフプランだけでなく、日本社会の持続可能性に直結しています。人生100年時代を生き抜くために、共働きは一つの鍵になるでしょう。


📌参考:2025年9月7日付 日本経済新聞朝刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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