日本は「借金大国」と言われ続けています。
国と地方を合わせた債務残高は1,400兆円規模に達し、GDPの2倍を超える水準です。
一方で、政府は積極的な財政運営を掲げ、成長投資や減税策を検討しています。
財政規律と経済成長は両立できるのか。本稿では、日本財政の持続可能性について整理します。
財政の基本構造――量出制入という考え方
財政とは、社会に必要な公共サービスを提供するための公的な経済活動です。
その基本原則は「量出制入」です。
まず必要な支出があり、それに見合う収入を確保します。
家計のように収入の範囲で支出を決める「量入制出」とは逆の発想です。
不況、災害、感染症などの危機時には歳出が増加します。
税収で賄えなければ、国債発行によって不足分を補います。
バブル崩壊後の長期停滞、東日本大震災、新型コロナ禍を経て、日本の債務は積み上がってきました。
国際比較で見る日本の債務水準
財政状況を比較する際に用いられるのが、GDP比の債務残高です。
米国や英国はGDPと同水準かやや上回る程度、ドイツはGDPを下回ります。
これに対し日本はGDPの2倍を超えており、主要国の中でも突出した水準です。
もっとも、日本国債は主に国内で保有されてきました。
ただし、日本銀行が保有額を徐々に減らす方針を示しているため、今後は市場での消化力がより重要になります。
積極財政と市場の視線
政府が支出を拡大する積極財政は、景気刺激や成長促進を目的とします。
しかし、財源の裏付けが不十分な場合、追加支出は国債増発に依存することになります。
国債の発行が増えれば、市場は財政悪化を懸念し、より高い金利を要求します。
その結果、長期金利が上昇します。
市場の信認とは何か
市場の信認とは、投資家が「この国の財政は持続可能である」と信じている状態を指します。
信認が揺らげば、
・長期金利の急上昇
・通貨安の進行
・物価上昇圧力の強まり
といった影響が生じます。
金利上昇は国の利払い費を増やすだけでなく、住宅ローン金利など家計にも波及します。
財政問題は生活に直結する問題です。
財政健全性を示す2つの指標
1.基礎的財政収支(プライマリーバランス)
利払い費を除いた歳入歳出の差を示す指標です。
これが黒字化すれば、借金に頼らず政策経費を賄えていると評価されます。
ただし、単年度で見るのか、複数年度で評価するのかによって印象は変わります。
指標の扱いを変更する場合は、市場への丁寧な説明が不可欠です。
2.債務残高のGDP比
経済成長率が債務増加率を上回れば、GDP比は改善します。
したがって、名目GDPの成長と金利水準の関係が重要になります。
積極財政が成長を生み出すのか、それとも金利上昇で効果が相殺されるのか。
市場はその持続可能性を見極めようとしています。
金利上昇の重み
長期金利が上昇すると、国債費が増加します。
予算に占める利払い費の割合が拡大すれば、他の政策に使える財源は制約されます。
財政の硬直化は、将来世代への負担という問題にも直結します。
日本財政は持たないのか
直ちに破綻するという議論は現実的ではありません。
重要なのは、
・成長戦略の実効性
・中期的な財政見通しの明確化
・市場との信頼関係の維持
です。
財政の持続可能性は、単なる債務の規模だけでは判断できません。
結論
日本の財政は厳しい状況にあります。
しかし、その持続可能性は「借金の額」だけで決まるものではありません。
成長と規律の両立、そして市場の信認の維持。
この三点が鍵となります。
積極財政を選択するのであれば、その成長効果と財源の説明責任を明確に示すことが不可欠です。
財政は経済政策であると同時に、信頼の問題でもあります。
参考
・日本経済新聞 2026年2月18日朝刊 「〈学びのツボ〉借金大国の日本 財政は持つの? 増える支出、市場が警戒」

