住宅ローン減税が令和12年入居分まで延長されました。
一方で、省エネ基準の厳格化や災害レッドゾーンの除外など、制度は「誰でも同じ」ではなくなっています。
住宅取得は人生最大級の意思決定です。
税制は背中を押す要素にはなりますが、判断の主役ではありません。
本稿では、「今買うべきか」「待つべきか」を整理するための判断軸を体系化します。
判断軸① 税制の有利・不利は本当に大きいか
まず冷静に確認すべきは、税制メリットの規模です。
仮に借入残高3,000万円、控除率0.7%とすると、年間控除額は最大21万円です。
これが13年間続いた場合、総額は約273万円です。
確かに小さくはありません。
しかし、住宅価格が100万円変動するだけで税制メリットの数年分が相殺される可能性があります。
結論として、
税制は重要だが、価格変動や金利動向の方が影響は大きい
という視点が必要です。
判断軸② 金利環境
住宅ローンの総支払額は金利で大きく変わります。
例えば3,000万円を35年返済で借りた場合、
- 金利1.0%
- 金利1.5%
この差だけで総支払額は数百万円規模で変動します。
減税延長を待つ間に金利が上昇すれば、控除拡充分を超える負担増になる可能性があります。
「制度の延長」よりも
金利トレンドの方が影響は大きい
ことを忘れてはいけません。
判断軸③ 住宅価格のトレンド
都市部では価格高騰が続いています。
減税延長が心理的な需要喚起につながれば、価格が下がる保証はありません。
税制メリットがあるから買うのではなく、
価格水準が合理的かどうかを検証する必要があります。
判断軸④ 省エネ基準と将来価値
今回の改正で明確になったのは、
- 省エネ性能
- 災害リスク立地
が税制上の評価対象になったことです。
将来的には中古市場でも、
省エネ性能が資産価値を左右する可能性が高い
と考えられます。
税制は一時的なメリットですが、住宅の資産価値は長期にわたり影響します。
判断軸⑤ ライフプランとの整合性
住宅取得は税制ではなく、生活設計で決まります。
- 転勤可能性
- 子どもの進学予定
- 共働き継続可否
- 老後資金形成計画
これらと整合しない購入は、税制が有利でも合理的とは言えません。
3つの典型パターン
① 早期取得型
- 金利上昇前に固定金利で確定
- 省エネ基準適合物件を選択
安定志向の家庭に適します。
② 待機型
- 市場価格調整を待つ
- 自己資金を増やす
価格下落局面を想定する場合に有効です。
③ 既存住宅重視型
- 省エネ改修済み既存住宅
- 控除期間13年活用
価格抑制と税制活用の両立を狙う戦略です。
「税制終了前に急ぐ」は合理的か
制度が延長された今、「急がなければ損」という局面ではありません。
むしろ今後は、
- 対象物件の選別強化
- 立地規制強化
が進む可能性があります。
焦って不利な立地や性能の住宅を取得すれば、
将来の売却時に不利になる可能性があります。
結論
住宅ローン減税は延長されました。
しかし、「いつ買うか」の判断は次の5軸で整理するべきです。
- 税制メリットの規模
- 金利動向
- 住宅価格水準
- 省エネ性能と立地
- ライフプラン整合性
税制は“補助的要素”です。
住宅取得の本質は、
家計の持続可能性と将来の選択肢を守れるかどうかにあります。
減税があるから買うのではなく、
買うべき状況だから減税を活用する。
この順序を守ることが、最も合理的な判断につながります。
参考
・税のしるべ 2026年2月9日号
「令和8年度税制改正大綱を読む」第6回(個人所得課税③)
