人生100年時代の承継観――「残す」から「循環」へ

税理士
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人生100年時代といわれるようになりました。

老後は20年、30年に及び、かつての「引退後の余生」という発想は通用しなくなっています。

そのなかで、相続や承継に対する考え方も変化が求められています。

従来の承継観は、「できるだけ多く残す」ことに重きが置かれてきました。

しかし、長寿化と社会構造の変化のもとで、その前提は再検討が必要です。

本稿では、人生100年時代における承継観の再構築を考えます。


従来の承継観

これまでの承継観は、次のような特徴を持っていました。

・資産は減らさず守る
・次世代にできるだけ多く渡す
・相続税は最小化する

高度経済成長期から資産価格上昇期にかけては、この発想は合理的でした。

資産は増え続ける前提があり、守ることが価値でした。


長寿化がもたらす変化

しかし、人生100年時代では事情が異なります。

老後期間が長期化すれば、資産は「使う」ことが前提になります。

取り崩しを前提にしない設計は、生活の質を低下させる可能性があります。

また、子世代も高齢化しており、相続時点で既に60代、70代ということも珍しくありません。

承継のタイミングと効果も変化しています。


承継は「点」ではなく「流れ」

相続は死亡時の一回限りの出来事です。

しかし、承継は本来、人生全体を通じた「流れ」です。

・教育支援
・住宅取得支援
・生前贈与
・知識や価値観の継承

承継は財産だけではありません。

人生100年時代では、承継を「点」から「流れ」へと再定義する必要があります。


資産は循環するもの

資産は固定的なものではなく、社会の中で循環するものです。

高齢世代が資産を活用し、生活の質を高め、その後に残る部分を承継する。

また、生前に次世代へ適切に移転する。

この循環モデルは、世代間バランスの観点からも合理的です。

「残すこと」よりも「活かすこと」を重視する発想が求められます。


税制との関係

税制は、承継観に影響を与えます。

評価制度の適正化や特例制度の見直しは、承継の在り方に調整を加えます。

しかし、税制はあくまで制度的枠組みです。

承継観そのものを決めるのは、価値観です。

税額の最小化だけを目的とする承継設計は、人生100年時代の価値観とは必ずしも一致しません。


家族観の変化

家族構成も多様化しています。

・単身世帯の増加
・子のいない世帯
・再婚家庭

承継は、単純な血縁継承だけではありません。

寄附や社会貢献を含む選択も増えています。

承継観は、家族観と密接に結びつきます。


新しい承継観の要素

人生100年時代の承継観には、次の要素が含まれます。

  1. 自身の生活の充実を優先する
  2. 承継は段階的に行う
  3. 財産だけでなく価値観を継ぐ
  4. 世代間バランスを意識する

承継は義務ではなく、選択です。

そして、その選択は人生設計の一部です。


結論

人生100年時代において、承継観は「残す」から「循環」へと移行しつつあります。

資産を守るだけではなく、活用し、流れの中で次世代へ渡す。

その発想が重要になります。

相続制度や税制は変化しますが、承継の本質は人生設計と不可分です。

承継は財産の問題であると同時に、生き方の問題でもあります。

人生100年時代にふさわしい承継観を、静かに再構築することが求められています。


参考

・自由民主党・日本維新の会 令和8年度税制改正大綱
・財産評価基本通達
・最高裁令和4年4月19日判決 解説資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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