配偶者がいる場合の取り崩し設計――二人で考える老後資産戦略

税理士
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老後設計は「一人」の問題ではありません。配偶者がいる場合、取り崩し戦略は必ず二人分で設計する必要があります。

単身の場合と異なり、

・生活費は共通
・年金は個別
・寿命は異なる
・相続は二段階

という特徴があります。

特に重要なのは、「どちらか一方が先に亡くなった場合」を想定した設計です。

本稿では、配偶者がいる場合の取り崩し設計の考え方を整理します。


二人分の生活費を把握する

最初に行うべきことは、世帯全体の年間生活費を把握することです。

・現在の生活費
・将来減少する支出
・医療・介護費の想定

夫婦世帯の生活費は、単身世帯の約1.5倍程度が目安とされますが、実態に基づく整理が必要です。

この金額が、取り崩し設計の基準となります。


年金の構造を整理する

次に、夫婦それぞれの年金額を確認します。

・老齢基礎年金
・老齢厚生年金
・加給年金
・振替加算

年金は個人単位で支給されますが、生活費は世帯単位です。

特に重要なのは、どちらか一方が亡くなった後の年金水準です。

遺族年金の仕組みを理解し、生活費とのバランスを確認します。


先に亡くなるリスクを織り込む

取り崩し設計の核心は、二次局面の想定です。

仮に夫が先に亡くなった場合、

・世帯収入は減少
・生活費は一定程度減少
・相続が発生

という変化が生じます。

一次相続後の配偶者の生活設計を優先することが重要です。


一次相続を意識した取り崩し

配偶者がいる場合、相続は二段階で発生します。

一次相続で配偶者が多くを相続すると、二次相続時の税負担が重くなる可能性があります。

しかし、取り崩し設計の基本は、税額最小化ではなく生活安定です。

配偶者の生活資金を確保し、そのうえで二次相続まで視野に入れた資産配分を検討します。


資産の名義と流動性

夫婦間での資産名義は、取り崩し戦略に影響します。

・どの資産が誰の名義か
・流動性は十分か
・共有財産の整理はできているか

流動性の低い資産に偏ると、配偶者が資金不足に陥る可能性があります。

現預金や取り崩しやすい資産を一定程度確保することが重要です。


取り崩し順序の設計

夫婦世帯の場合、取り崩しは次の順序で考えます。

  1. 共通生活費の不足分を世帯資産で補填
  2. 高齢側の寿命リスクを重視
  3. 一次相続後の生活費を再試算

単純に二人の平均寿命で設計するのではなく、長生きする可能性が高い方を基準に設計します。


心理的側面

配偶者がいる場合、心理的安心感も重要です。

資産を減らすことへの不安は、二人で共有されます。

取り崩し計画を可視化し、将来の資産残高をシミュレーションすることで、不安を軽減できます。

透明性が安心につながります。


典型的な誤り

よくある誤りは、

・一次相続の税額だけを重視する
・生活費減少を過大評価する
・遺族年金を過小評価する

といった点です。

税額よりも生活保障を優先することが基本です。


結論

配偶者がいる場合の取り崩し設計は、「二人で生きる期間」と「一人で生きる期間」の両方を想定することが重要です。

生活費、年金、資産、相続を一体で設計します。

取り崩しは、減らすことではなく守ることです。

守る対象は、資産そのものではなく、生活の安定です。

夫婦世帯における取り崩し設計は、世代間承継よりもまず配偶者の安心を優先することが基本となります。


参考

・自由民主党・日本維新の会 令和8年度税制改正大綱
・財産評価基本通達
・最高裁令和4年4月19日判決 解説資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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