相続税は富裕層課税強化へ向かうのか――資産格差時代の政策論

税理士
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貸付用不動産評価の見直しは、評価制度の調整にとどまらず、「相続税は今後どの方向へ向かうのか」という問いを投げかけています。

近年、資産格差の拡大が指摘されるなかで、富裕層課税の強化を求める声は国内外で強まっています。

では、日本の相続税は、富裕層課税強化へと進むのでしょうか。

本稿では、制度の構造と政策環境を踏まえ、今後の方向性を考えます。


すでに強い累進構造を持つ税目

日本の相続税は、もともと強い累進構造を持つ税目です。

基礎控除を超える一定規模以上の資産にのみ課税され、税率は段階的に上昇します。

最高税率も国際的に見て高い水準に位置付けられます。

その意味で、日本の相続税はすでに富裕層に集中する設計となっています。

単純な税率引上げが政策の中心となる可能性は必ずしも高くありません。


強化が議論される背景

それでも富裕層課税強化が議論される背景には、いくつかの要因があります。

第一に、資産格差の拡大です。金融資産や株式資産の価格上昇により、保有資産規模の差が拡大しています。

第二に、世代間格差の問題です。高齢世代への資産集中と若年世代の所得停滞が対比されます。

第三に、財政需要の増大です。社会保障費の増加により、財源確保の議論が続いています。

これらが、富裕層課税強化の議論を支えています。


評価見直しの意味

貸付用不動産評価見直しは、税率引上げではありません。

それは課税ベースの適正化です。

市場価格との著しい乖離を是正することで、実質的な課税強化につながる側面はあります。

しかし、その趣旨は「新たな負担創設」ではなく、「本来の課税ベースへの回帰」です。

評価の整合性を確保することは、制度の正当性維持のための措置ともいえます。


今後想定される方向性

富裕層課税強化が進むとすれば、次のような方向が考えられます。

・評価制度のさらなる透明化
・国際的資産情報の把握強化
・過度な租税回避スキームへの規制

一方で、単純な税率引上げや課税範囲の急拡大は、資本移動や経済活動への影響を慎重に考慮する必要があります。

政策は常に経済活力との均衡を求められます。


国際環境の影響

資産課税は国際環境と無関係ではありません。

グローバルな資本移動が可能な時代において、過度な負担は国外移転を誘発する可能性があります。

一方で、国際的な情報交換体制の強化により、海外資産の把握は進んでいます。

国内政策だけでなく、国際的枠組みとの整合性が重要になります。


再分配と経済活力の均衡

富裕層課税強化の議論は、再分配の理念に基づきます。

しかし、再分配は経済活力と両立しなければ持続可能ではありません。

中小企業や家族経営の承継、投資意欲への影響なども考慮する必要があります。

相続税は単なる富裕層課税ではなく、資産承継制度の一部です。

過度な強化は、別の歪みを生む可能性があります。


社会的合意の行方

最終的に、相続税の方向性は社会的合意に依存します。

資産格差の問題意識が強まれば、強化論が優勢になる可能性があります。

一方で、家族財産承継の尊重が重視されれば、負担緩和の議論も生じます。

評価見直しは、その両者の間で制度の正当性を保つための調整と見ることもできます。


結論

日本の相続税は、すでに富裕層に集中する構造を持っています。

今後の方向性は、税率の単純な引上げというよりも、課税ベースの適正化と制度整合性の強化に向かう可能性が高いと考えられます。

貸付用不動産評価見直しは、その流れの一環です。

富裕層課税強化という単純な図式ではなく、公平性・実効性・経済活力の均衡をどう保つかが本質的な論点です。

相続税の将来像は、その均衡点をどこに置くかによって決まります。

制度の動向を冷静に見極めることが重要です。


参考

・自由民主党・日本維新の会 令和8年度税制改正大綱
・財産評価基本通達
・最高裁令和4年4月19日判決 解説資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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