地方都市に「働く場」を取り戻せるか ― 容積率緩和が映す都市政策の転換点

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東京一極集中は、もはや「傾向」ではなく構造です。
総務省の住民基本台帳人口移動報告によれば、2025年も東京圏は転入超過が続いています。若い世代、とりわけ就労世代が地方から流出し続ける構図は簡単には変わりません。

そのなかで、国土交通省が打ち出した「地方都市の中心部にオフィスなどを誘致するための容積率緩和」は、都市政策の大きな転換点になり得る制度です。

本稿では、この制度改正の中身と狙い、そして地方都市の将来設計という観点から整理します。


容積率とは何か

容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合をいいます。
たとえば敷地100㎡で容積率200%なら、延べ床面積は最大200㎡まで建てられます。

用途地域ごとに上限が決められており、商業地域では200%〜1300%の範囲で都市計画に基づき設定されます。

本来の目的は、

  • 極端な建物の密集を防ぐ
  • 道路など公共空間とのバランスを保つ
  • 都市の安全性や快適性を守る

といった都市機能の維持にあります。


これまでの緩和制度は「大都市中心」だった

日本では1961年の「特定街区」制度以降、総合設計制度や都市再生特別地区など、容積率緩和の枠組みが整備されてきました。

しかし、実際の適用は東京を中心とする大都市が中心です。
都市再生特別地区の決定地区の多くは東京都内に集中しています。

緩和の目的は主に「国際競争力の強化」。
その結果、都心の再開発は進みましたが、地方都市の空洞化は止まりませんでした。


今回の改正のポイント ― 「特定業務施設」の追加

今回の法改正では、立地適正化計画の誘導対象に「特定業務施設」が追加されます。

対象となるのは、

  • オフィス
  • 地場産業関連施設
  • インキュベーション施設
  • ホテル
  • アリーナやスタジアム等の集客施設

これまで病院や商業施設など生活関連施設に限られていた容積率緩和の対象が、「働く場」へと広がる点が最大の特徴です。

つまり、地方都市の中心部に仕事を生み出す拠点をつくることが政策目的として明確化されたのです。


なぜ「職住近接」が重要なのか

地方から東京圏への移住理由として多いのは、

  • 希望の仕事が見つからない
  • 待遇の良い仕事がない

という「雇用」の問題です。

住宅を整備するだけでは人口は戻りません。
中心市街地に「働く場」が存在して初めて、職住近接が実現します。

職住近接が進めば、

  • 通勤時間の短縮
  • 地域内消費の増加
  • 地元企業との連携強化
  • 若年層の定着

といった波及効果が期待できます。


ソフト面評価という新しい発想

今回の改正では、再開発後のイベント実施などの継続的なにぎわい創出も容積率緩和の評価対象になります。

従来は公共施設整備などハード面が中心でした。
今後は、

  • 定期的なイベント開催
  • 継続的な地域活動
  • 民間主導の活用計画

といったソフト施策も評価対象になります。

これは「建てて終わり」から「使い続ける都市」への発想転換です。


制度があっても、成否を分けるのは「中身」

制度だけで企業が移転するわけではありません。

企業が地方拠点を選ぶかどうかは、

  • 人材確保の可能性
  • 教育機関との連携
  • 交通インフラ
  • 生活環境
  • 税制や補助制度

といった複合要因で決まります。

単に容積率を緩和して高層ビルを建てても、テナントが入らなければ意味がありません。

重要なのは、
「その都市にどんな産業を根づかせたいのか」という戦略設計です。


人口減少社会の都市政策は「縮小前提」で考える

立地適正化計画は、人口減少と高齢化を前提とした「コンパクトシティ政策」から始まりました。

現在、600を超える自治体が計画を公表しています。

今後は、

  • すべての都市が成長する
    のではなく、
  • どの都市が「核」として機能するか

という選択の時代になります。

容積率緩和はあくまで「手段」です。
地方都市が自律的な経済循環をつくれるかどうかが本質です。


結論

今回の制度改正は、単なる建築規制の緩和ではありません。

それは、

  • 東京一極集中の是正
  • 働く場の地方分散
  • 職住近接の再設計
  • ハードからソフトへという都市政策の転換

を象徴する動きです。

ただし、制度は環境を整えるだけです。
企業、自治体、大学、金融機関、地域住民がどう連携するかが問われます。

地方都市の再生は「建物の高さ」ではなく、「働く人の数」で決まります。
今回の改正が、単なる再開発競争に終わるのか、それとも地方の持続可能性を高める起点になるのか。今後の運用次第といえるでしょう。


参考

・日本経済新聞 2026年2月14日朝刊
「地方都市の『職住近接』促す」

・日本経済新聞 2026年2月14日朝刊
「容積率 建物の極端な密集避ける」

・総務省 住民基本台帳人口移動報告(2025年公表)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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