足元の為替市場では、円が急速に買い戻される場面が見られています。衆院選後の政策見通しの変化や、米景気減速観測によるドル安が背景にあります。
しかし、円高が一方向に進むかというと、そう単純ではありません。日本時間の昼間、すなわち東京市場ではむしろ円売り・ドル買い圧力が根強いという特徴があります。いわゆる「東京円安」です。
本稿では、為替相場の時間帯別の動きに注目しながら、円高が定着しにくい構造的な要因を整理します。
東京時間と海外時間で逆方向に動く相場
為替市場は24時間動いていますが、時間帯によって参加者の顔ぶれが異なります。
- 日本時間(東京時間):午前9時~午後5時
- 海外時間:それ以外(主に欧州・米国時間)
最近の特徴は、
- 海外時間では円高・ドル安方向に動きやすい
- 東京時間では円安・ドル高方向に押し戻されやすい
という「逆流構造」です。
海外時間では、米景気減速観測や投機筋の持ち高解消などを背景に円買いが進みやすい一方、東京時間になると実需のドル買いが入って円安方向へ押し戻される構図が見られます。
なぜ東京時間は円安になりやすいのか
1. 輸入企業のドル需要
最大の要因は、輸入企業の存在です。
日本はエネルギーや原材料を海外に依存しており、支払いはドル建てが中心です。円高になれば、
「いまのうちにドルを確保しておこう」
という動きが必ず出ます。
これは投機ではなく、事業継続に不可欠な実需です。
円が急落した局面でドルを買い損ねた企業は、円が戻ったタイミングで一斉にドル買いを入れます。その結果、東京時間では円安圧力が発生しやすくなります。
2. 海外M&Aと対外投資の増加
近年、日本企業による海外企業の買収(M&A)は高水準で推移しています。買収資金はドル建てで用意する必要があります。
さらに、新NISAの普及により、海外資産への投資信託への資金流入も拡大しています。これも構造的なドル需要を生みます。
つまり、
- 企業の海外展開
- 個人の海外投資
この二つが、日本からのドル流出を恒常的に生み出しているのです。
150円の壁はなぜ厚いのか
為替市場では心理的節目が意識されます。150円近辺は、200日移動平均線などのテクニカル水準も重なりやすく、相場の攻防ラインとなっています。
短期的には150円を割り込む(円高方向に進む)場面もあり得ますが、
- 国内企業のドル需要
- 月末・年度末の決済需要
- 海外投資の継続
これらが下支えとなり、一方向の円高が続きにくい状況です。
利上げ期待だけでは円高は持続しない
一部では、日本銀行の利上げ観測が円買い材料になるとの見方もあります。しかし、市場では一定程度織り込みが進んでおり、
「それだけで本格的な円高トレンドに転換するか」
というと、慎重な見方が多いのが現状です。
為替は金利差だけで動くわけではありません。実需フローの継続性がある限り、円高は戻り売りにあいやすいのです。
為替をどう読むべきか
今回の動きは、
「政策期待で動く相場」と
「実需で押し戻される相場」
のせめぎ合いです。
短期的な円高に過度に反応するよりも、
- 日本企業のドル需要は続くのか
- 個人の海外投資は拡大するのか
- 貿易構造は変わるのか
といった中長期の構造に目を向ける必要があります。
結論
足元で円高局面が見られても、それが直ちに「円高転換」を意味するとは限りません。
東京時間に円安圧力が出やすい背景には、
- 輸入企業のドル買い
- 海外M&A資金
- 個人の海外投資
という構造的なドル需要があります。
為替は、政策や投機だけでなく、経済活動そのものを映す鏡です。短期の値動きに振り回されず、フローの本質を見る視点が重要です。
参考
日本経済新聞「〈ポジション〉『東京円安』根強い圧力」2026年2月13日朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

